保健室突入
「えっ?」
「いや、確かに……」
直はスマホの着信履歴を呼び出す。しかし直が確認しても、翔平の履歴は残っていなかった。
「いない……」
「あの時、聞こえてたよね。生地くんの声……」
「お前らなあ……」
翔平はため息混じりに、肩の力を抜いた。猫耳と尻尾にもその影響は見えた。そして里太郎の方をじっと見つめる一同。里太郎は袴から紙を取り出すと、首を傾げながらも、表を指でなぞっていく。
「いや、電話に絡んだ七不思議は、流石に聞いたことないかな……」
「ふっふっふ……」
豪太が某ドラマの科学者の如く、額に手を当てる。そして少しカッコつけたような感じで言い放っていく。
「やっぱり勘違いなんだよ。思い込みだよ。そう、心霊現象なんてないのだよ。科学的には……」
「とりあえず、保健室入りましょう」
「そうだね」
そんな彼の言葉をスルーして、心寧となごみは保健室のドアに手をかける。すると三毛猫野郎が彼女たちの手を叩いた。思わず引っ込める彼女たち。
「お前らだけだと危ないから、俺が先に行く」
「相手が女性なら、私たちが先に入ったほうがいいでしょ?」
「女が何言ってんだよ」
翔平の無神経な言葉に、なごみが罵詈雑言を言い放つ。翔平も負けじと言い返していく。呆然とする直たちだったが、次第に声もだんだん大きくなっていた。
「女だから入るって言ってんのよ! このスケベ猫野郎!」
「なんだよ、攻撃もできない役立たずが!」
「あんたは当てずっぽうに振り回してんでしょ!」
流石にまずいと思ったのか、心寧はなごみを、直は翔平を引き剥がす。健と里太郎は、間に入って抑えていた。
「いい? 私たちが入るから! それまで待ってなさい!」
なごみはそう言って男子たちを屈服させると、心寧と一緒に保健室に入って行った。
「……失礼します」
「しつれいしまーす……」
女子二人があたりを見渡すも、暗くて何も見えなかった。心寧が懐から札を出し、指で弾くと炎が上がる。それを手で浮かせると、なごみの持っていた杖の先にくっつける。
「あっ、燃えない」
「心配しないで」
なごみは室内を軽く照らしながら、改めて保健室を見渡す。
「大丈夫、おいで」
なごみの声を頼りに、里太郎、健、翔平の順に保健室に入っていく。すると翔平が入った途端、ふと振り向く。
「……」
そこには、ドアの柱に捕まっている直と豪太の姿があった。少し怪訝そうな顔をする翔平だった。
「なんで入んないんだよ」
「なっ、なんだよ」
「俺のことはなんでもいいだろ」
翔平は二人を少し鼻で笑った。直と豪太は彼の様子に気づかぬまま、顔を引き攣らせたまま、互いに譲り合っていた。
「このメンツって、女子が圧倒的に強いよなあ……」
翔平がそう感じた時、いきなり里太郎が大きく声を上げた。
「……よく考えたらさ。保健室の美魔女の先生ってさ、港山の齋藤先生のことじゃない?」
「あっ……」
「確かに……」
里太郎の言葉に静止する一同であったが、彼と一緒に港山の文化祭に行った健と翔平は、すぐに頷いた。その言葉を聞き、ホッと胸を撫で下ろした直と豪太は、ゆっくりと保健室の中に入っていく。
ーーバンッ‼︎
「ひゃあ……!」
「ひぃ……!」
突然、勢いよく保健室の扉が閉まり、直と豪太が変な声を上げながら、その場に倒れ込む。
「ちょっと、心臓に悪いじゃない!」
なごみが文句を言うも、その先の明かりもすぐに消えてしまった。
「どうして……⁈ 心寧ちゃんの簡単には」
「……あちらから強い妖力を感じます」
心寧が指し示した方を見ると、青白い光が一つ、また一つと集まっていく。それが複数も数多も集まっていき、次第に形作っていく。
「子どもの霊……?」
「ひええ‼︎」
直と豪太は相変わらず叫びながらお互いの体を掴んでいることを除いて、目の前で起きていることをただ見ることだけしかできなかった。
やがて、それは少し恰幅のいい一人の少年となって現れた。彼は平然と半身に佇みながら、こちらを見つめていた。なごみは彼と目が合うと、思わず口を手で覆った。そして翔平が彼に向かって、こう呼びかけた。
「しゅう……へい?」




