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尋ねた手紙〜妖獣と人間を繋ぐ力〜  作者: すごろくひろ
高校編 ④ さよなら中央生

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合宿棟

「はわああ」

 口に手を添えながら、直は合宿棟の中に入る。スマホを機械にかざして二階に上がる。指定された宿泊室213号室に入った。合宿棟に入るのは1年の勉強合宿の時以来だった。

「机とコンセントと……ベッドだけっと……」

 そう言って直は荷物を取り出す。ゆっくりと一冊のノートを開いた。

「……」

 そこには校内の地図が描かれていた。なぜ彼がそのノートを持っているのか。少し前に遡る。


 *


「七不思議を退治する?」

「僕たちがこういうことになったってことは、つまり、……目には目を、歯には歯をだよ」

 里太郎がたどたどしくも持論を語っていくが、そんな彼に翔平は呆れ顔になる。

「そんなんで怖がってんじゃ、人選を改めた方が良さそうだな」

「お化けなんてデタラメだよ。科学で何でもわかる時代なのに」

「お前が犬みたいになったのは、解明できるのか? その科学とやらで」

 翔平の言葉に豪太は固まってしまう。

「……遺伝子操作とか心理学が絡んでるんだよきっと。催眠術と同じ」

「……」

 豪太をジト目で見つめる翔平だったが、すぐに視線を外した。心寧が少し胸を抑えて息を荒くしながら、その場でうずくまっていた。

「……」

「伏見?」

「……大丈夫。ちょっと頭が痛いだけだから」

 心寧はなんとか立ち上がるも、そこから一歩も動けそうになかった。

「横になってもいいかしら?」

「大丈夫?」

 なごみが心寧を支えながら、部室内にあったベッドに横になる。直たち男子は不思議そうにその風景を眺めていた。

「ちょっと……」

 なごみに気圧された男子たちは視線を外すと、少し離れたところで固まった。直は思わず豪太を問い正す。

「なんでベッドがあるんだよ」

「俺専用のやつ。寝泊まりして実験するから」

 呆れながらため息をつく、男子一同。豪太は納得がいかないのか、大声で抗議していた。

「私物化しすぎだろ、だからいつまでも部員が一人なんだよ」

「これも立派な実験なの! どのくらいの割合でスプリング入れると気持ち良いとかさ」

 女子二人をよそに、騒ぎ始める男子五人。心寧は額に手を当てながら傾れるように座り込んでいた。

「……ちょっとうるさいし、やっぱ保健室行こう」

「ごめんなさい、私のせいで」

「気にしないで」

 なごみは怪訝そうな顔を彼らに向けながら、心寧に付き添い、科学室から出て行こうとする。翔平は仕方がなさそうに、近寄るとドアを開けてやった。

「お前じゃ無理だろ。保健室連れて行くの。だから俺が護衛として」

「……来なくて良いから」

「……変態」

 なごみと心寧は翔平にそう言い放つと、ゆっくりと保健室へ向かっていった。ただ呆然とする翔平。

「俺、もう一回六科島に行って、島諸共消滅しようかな」

「それは禁句だ。やめとけ」

 そう言いながら直は健の方を見つめる。

「……もう手遅れだと思う」

 健の言葉がトドメを刺す。翔平はその場で崩れ落ちてしまった。彼のことを気にせず、里太郎はそのまま話を続けた。

「来週、金曜日合宿棟に泊まってみる?」

「このために……?」

 健の問いに、里太郎はゆっくりと頷く。

「最後だしさ、夜の学校も回ってみようよ。うまくやっとくからさ」


 *


 深夜十二時を回った頃、直は仕方なくあの緑狸を呼び寄せる。カバンの中から勢いよく飛び出した彼は、直の顔に抱きつく。

「ぷはー、苦しかったわい」

「はいはい」

 そして直は狸を引き剥がすと、いつもの如くあの装束姿に変身したのだった。ノック音がしたので、扉を開けると健がいた。そして合宿棟から学習棟の生徒会室へ向かった。

 道中、コツコツと二人の歩く音が校舎内に響き渡る。それが二人の肝を少しずつ冷やしていく。健は直の顔を見るが、彼の顔色は何一つ変わっていない。

「この時の僕たちって、一体なんなんだろうね。人間なのか、それとも化け物なのか……」

「……」

 無言を貫く直。健のことを見る素振りはない。健はおそるおそる直に聞いてみる。

「怖いの?」

「……」

 直は相変わらず、真顔のまま口を開こうとしなかった。

「こういう時にちゃんと話せないと、乗っ取られるらしいよ」

「俺は怖いわけじゃ……ひえっ!」

 スマホが鳴り、直は思わず飛び上がってしまう。慌ててスマホを落としてしまい、その音に思わず健に抱きついてしまう。

「……」

「……嘘つき」

 おそるおそる拾い上げようとする直だったが、健は臆せずひょいと拾って持ち主に返す。直は画面を確認すると、冷めた顔で通話に出た。

「……はい」

「黒狸より妖怪退治の依頼を受けた、緑狸の直さんはこちらですかー!」

「ビジネスモデルみたいに言うな」

 翔平の笑い声が、スマホ越しに聞こえてくる。健も両手で耳を抑える。

「電話、耳どっちにつけてる?」

「横に決まってんだろ」

「横って……横って……!」

 またもや爆笑しはじめる翔平。直は静かに終話ボタンをタップする。

「何しに来たんだ、こいつ……」

「……」

 二人は顔を顰めながらも顔を見合わせると、ゆっくり生徒会室へ向かう。ホワイトボードに目を向けると、ほぼ全てに攻略済みの印が付けられていた。

「残りは……保健室だっけ?」

「確か『歳を取らない美魔女な養護教諭』だったか」

「直くんって、不純な動機で選んだよね」

「……お前が子どもなんだよ」

 そして、後を追うように保健室に向かった。


 保健室の前には、他の面々も集まっていた。

「や……山井くん? 腕組んでるけどどうしたの?」

「えっ?」

 なごみに言われて、直は自身の腕を目で辿る。

「……!」

 直は赤面すると勢いよく健から離れた。健は苦笑いしながら話す。

「来る途中、すごく怖がって」

「わーわー!」

 健の言葉をかき消さんと、直は思い切り大声を出す。しかし、直たちに少し冷たい視線を浴びせていた。戸惑う彼らに、心寧はゆっくりと告げる。

「二時間も遅れてくるなんて……。情けないですわ」

 首を傾げる健。

「十二時集合でしょ?」

「二十二時、午後十時の集合だよ。あまりにも来ないから、ほとんど攻略しちゃったよ」

 なごみの言葉に視線を逸らす二人。そして豪太が追い討ちをかけるように畳み掛ける。

「大変ですなあ。こんな従兄殿に手を煩わされて。ちゃんと聞いてないと命取りですぞ」

 苦し紛れに直は翔平に話を振り始める。

「生地ー、お前変な電話すんなよな」

「は……?」

 翔平は要領を得ないように不思議そうな顔をした。

「さっき変な電話しただろ?」

「いや、俺……、電話してないけど……」

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