男子の集い
豪太がふと目が覚めると、隣の里太郎に覆い被さっていた。内心驚いてはいるが、ゆっくりと優しく彼を剥がす。目覚まし時計を確認すると、七時三十分を差していた。
「おはよ」
「おはよ」
泊まりに来ていた幼馴染を起こして身支度を済ませると、二人は朝食を食べた。目玉焼き、納豆、サラダ。簡単なものではあったが、二人は家を出ていく。他の家族は旅行中で誰もいない。
「なんか夫婦みたいだね」
「やめろ」
「ごうちゃんは、素直に認めないとこがあるからね」
豪太は目を細めながら呆れ顔で里太郎を見る。里太郎はおかしかったのか笑ってしまう。
「なんでもないよ。よーしよしよし」
「俺は犬じゃねぇったら」
「あれ?」
彼らの後ろでは、里太郎の妖獣である黒狸と豪太の妖獣である白の大型犬が戯れあっていた。
「……」
「飼い主によく似るって言うよね。ごうちゃんの気持ちがよくわかるよ」
豪太は無言で大型犬の頭に触れると、そいつをカバンのストラップに化けさせる。里太郎は黒狸を肩に乗せて先を急いだ。
電車に乗った二人だが、見渡すと学生の姿がほぼいなかった。首を傾げる二人だったが、里太郎がスマホを見て思い出す。
「今日受験の日だから休みだ……」
「お前、弟受験だろ……」
「そうそう、港央受けるんだってさ」
電車はやがてトンネルに入り次の駅に着く。二人の会話はすぐになくなってしまった。発車、停車、発車、停車。お互いに繋ぐ言葉が出てこず、豪太はなぜか焦ってしまう。
「そういや……弟は元気か?」
「紋次郎? 元気だよ。なんかいきなりジムとか行き出して、すごく痩せちゃったけどね」
「へえ、良いことじゃん」
豪太の反応に少し寂しそうに里太郎。
「お兄ちゃんとしては寂しいよ……。あのもふもふってした感じの」
「はいはい、お前も体重絞らんとな」
「……豪太も人のこと言えないでしょ」
あと三駅で学校の最寄駅に着いてしまう。このまま通り過ぎても厄介なだけだった。豪太はどうしようかと考えていたが、ふとチャットの通知を見て少し救われた。
「……山井の家、行くか?」
「大丈夫なの?」
「大丈夫だって」
「……じゃ、お言葉に甘えて」
*
「いらっしゃいまし」
「どうもです」
「おじゃまします」
豪太と里太郎は、健に部屋に案内される。後から直がお菓子とジュースを持ってくる。両親に急かされて持たされたのか、階下が少し騒がしかった。
「大丈夫だって! 一人でできるから! ……お待たせ」
「いただきー」
そして四人は菓子をつまんで、レースゲームをし始める。最初の二、三試合は盛り上がっていたものの、段々と直の独壇場となっていく……。健がアイテムを投げても、豪太が妨害しても、里太郎がいくら頑張っても、直はかわして一位でゴールした。
「……別のゲームやろ?」
健の言葉に賛同する豪太と里太郎、直は別のゲームを起動させる。
「生地は?」
「もうすぐ……、あっ来たみたい」
インターホンが鳴り、健は翔平を家にあげた。
「あっ、お前ら良いなあ」
そして翔平はそう言いながら、コントローラーを直から取り上げる。
「何すんだよ……」
「お前は変に強いから交代だ」
「むっ……」
直は訝しげに翔平を見た。
「ダメだぞ不機嫌になったら、怪異が来ちゃうだろ」
「呼ばねえよ」
直は諦めて四人のゲームの様子を見ていた。次第に盛り上がっていく中、翔平が尋ねる。
「そういえば、七不思議って何があったっけ?」
「七不思議、知ってる?」
健に促された里太郎が思い出すように答えていく。
「トイレの花子さん、動く人体模型、それから……」
「さすが生徒会長。なんでも知ってるな」
豪太が関心する。その時、直が言った。
「……いっそマップにしねえ?」




