最後の七不思議
時は流れて三学期。廃校が迫っている中央高校の中は、人が少なくなっている。
「三年生、もういないな」
「自由登校期間だしね。卒業式前日までは」
豪太と里太郎はそう言い合っては、ガランとした三年生の教室の様子を眺めていた。ガラスに反射する二人の顔からは、どこか寂しさを感じるものだった。
「ひどい顔だな。生徒会長」
「……いつも通りの顔だね、科学部長犬」
「誰が大型犬だよ」
隣の頭をポカリと一発叩く豪太。
「誰もそんなこと言ってないよ」
里太郎はその場を離れていく。豪太もその後をついていき、生徒会室へと向かっていく。その入り口には小さな箱みたいなものが置いてあった。里太郎はそれを手に取ると部屋の中へ入っていく。
「なにそれ」
「閉校式で使うの。思い出とか投書してもらうんだ」
そう言いながら、里太郎は投書箱の蓋を開ける。結果は予想通りだった。
「何も入ってないじゃん」
「そんなもんでしょ。……でもおかしいなあ」
里太郎はその箱を大きく上下に振る。
「あれ?」
カラコロと音を立てて一枚の紙が出てくる。里太郎はゆっくりとその紙を開く。
「どゆこと?」
「……⁈」
そして次の日の放課後、科学室には例のメンバーが集まっていた。
「どしたんだよ? くだらない実験手伝わせる気じゃないだろうな」
翔平が少し気だるげに豪太に問い正す。
「いや、そんなんじゃないって。というよりかは、里太郎が呼んだんだわ」
「生徒会室じゃダメなの?」
なごみは首を少し傾げながらも聞いてみる。里太郎は一瞥したあと、ゆっくりとかの紙を取り出す。
「……これを見てほしいんだ」
そして、かの紙を開いた。それに書かれた文面を一同が覗き込む。
「タ・ス・ケ・テ」
一気に血の気が引いた。全員が黙り込む。ただでさえ冷えている空気がさらに冷たくなる気がした。途端に口が重くなる。
「……ちょっといい……かな?」
意外なことに話を切り出したのは健だった。みんなが彼に視線を向ける。
「これってイタズラとかじゃないん……だよね」
「人間のイタズラではないと思うわ」
心寧がすぐに答える。健は少し驚いたように見えたが、質問を続ける。
「なんでそう思うの?」
「手を翳してみて、気配を感じたの」
「……胸騒ぎがするね」
二人は顔を見合わせた後、また例の紙に視線を戻した。一方で直は、ため息をつく。
「迷信だよ。気のせい気のせい」
「科学技術が発達してる現代だしね!」
翔平と豪太は少し青ざめながらも、何とか声を張り上げていた。少し無茶をしているように見えるも、誰も乗っかろうとはしなかった。
「……今までのこと、科学的に証明できるの?」
「うぐっ……」
心寧の言葉に豪太はたじろいでしまう。そんな中、直は何か思い出したかのように声を上げた。
「今まで変なことがある時って、突然謎の報せが届いたときからスタートするんだよな」
「どういうこと?」
直は今まであった怪異との戦いを話した。他の全員はその話を聞きながら心臓を抑える。翔平からの手紙。突然の六科島の噴火の報道。廃校の通知。そして、生徒会への投書箱。聞けば聞くほど、心臓の鼓動が聞こえてた。
「学校の七不思議の仕業かもしれない……」
里太郎が納得したかのように溜息をついた。
「廃校までに怪異を倒さないと、僕たちは……」
「皆まで言うな!」
翔平の怒号にみんなが怯える。全員が視線を合わせなくなってしまう。そして俯きながら黙り込んでしまう。
「みんな死なないよね?」
「……死なないわよ。きっと」
声を強張らせるなごみを、心寧はしっかりとした口調で励ましながら抱き寄せていた。
「倒せばいいんだろ。浄化させてやればいいんだろ。だったらやってやろうぜ。ちゃんと綺麗にして、新校舎に行こうぜ」
翔平は勢いよく檄を飛ばす。全員が頷いていた。
「それじゃ、決まりだね」
里太郎の言葉に全員がもう一度頷いた。




