Girl Meets Girl
数日後、なごみは学校近くの喫茶店でフレーバーティーを嗜んでいた。待ち合わせの最中、カバンの中から参考書とノートを開く。少し悩みながらもスラスラと問題を解いていく。
「んー……!」
なごみは第一章の問題を解き終えて背伸びをする。すると心寧の姿が見えた。手を振って合図をすると、心寧も返して彼女の元へ向かった。
「ごめんなさい、遅くなって」
「いいえー」
心寧もアイスラテを手にして、同じ席に着く。コスメやブランド、芸能人などいろいろ話に花を咲かせる二人。年齢相応の女子高生の日常そのものであった。
「お待たせいたしました」
初老の男性店員がケーキを十個ほど持ってきた。仰天するなごみをよそに、心寧は手を合わせる。
「いただきます」
「心寧ちゃん? これ全部……」
「平気よ? 一ついる?」
「じゃあ一つだけ」
そしてケーキの甘美な装いに目を奪われながら、それらを口にしていく二人。
「美味しい!」
「結構な有名店って聞いたの」
笑いながら話に花を咲かせる二人。そして、なごみが思い出したかのように話を切り出した。
「最近科学部に遊びに行ってるけどさ」
「ええ」
「変なことしか起きてないよね? 最近はコスプレして戦った記憶しかないような」
「コスプレ……? ああ……」
なごみの言葉に少々気を引きながらも、心寧は言葉を返していく。
「心寧ちゃんはかっこいいよ。九尾の狐だっけ? お札とか使って壮大な感じっていうの? 実際敵をやっつけられるじゃん? でもうちはなあ……」
「尻尾三つの猫って、実は相当高尚だって聞いたことあるわ」
へえ、となごみは少し照れながら言葉を返す。
「味方を回復させるというか、癒す力を持ってるのは凄いことなんじゃないかしら?」
「そっか。私ってすごかったんだ……」
なごみは勢いよくフレーバーティーを飲む。心寧は微笑みながらアイスラテを口にしていた。
「でもさ男子はもう少しかっこよくてもいいよね。和服着るだけならまだしも……」
「まあ、あれはーー」
「……変身ヒーローみたいなものなんでしょ? コスプレ感否めないけどさ。他の人に見られてないかな?」
なごみは少し恥ずかしそうに、小声で心寧に尋ねる。
「それは大丈夫よ。ちゃんと結界張って一般人からは見えなくなってるし」
心寧の言葉に、なごみは胸を撫で下ろす。
「そういえば生地くんとは仲良いの?」
「翔平……? あいつはただの幼馴染ってか……、なんていうか……」
なごみは顔を少し赤く染めながら、フレーバーティーをまた飲んでいく。そして落ち着いてきたのか、ゆっくりと話しだした。
「昔はすごく泣き虫だったんだよなあ。守ってあげなきゃって感じだったんだけど。いつの間にか強くなっちゃったっていうか……うん」
神妙な面持ちで話を続けるなごみ。心寧は淡々と話を聞いているだけに留める。
「ちなみにかいちょーは、たぶん駒井のこと大好きだと思う。駒井と」
「BL同人誌とかにしたらダメよ? 山井くんたちで一回やろうとして怒られたでしょ?」
なごみは思わずコップに伸ばそうとしたその手を止めた。心寧は何も気に留めることなく、アイスラテを飲み干す。
「どうしたの?」
「心寧ちゃんってさ……。いや、なんでもない」
そしてなごみはフレーバーティーを飲み干す。そして、ふーっと溜息をつくと窓をチラッと覗きこんだ。同じ中央高校の生徒の姿だった。数人が並んで歩くその姿に少し胸が焼き付く感じがした。
「でも、なんだかんだ高校が無くなっちゃうのは寂しいな」
「……そうね」
心寧もそう答えるしかなかった。冷たい風が二人の間を駆け抜けたような気がした。すると二人のスマホが一気に鳴り始める。グループチャットの通知だった。心寧はそれを読むと、チラッとなごみと顔を見合わせる。
「どうする?」
「……行くしかないか」
二人は会計を済ませて店の外に出ると、瞬時に結界を発動させて突入する。一気に変身を済ませた二人。
「やっぱ、心寧ちゃん。いいなあ」
「なごみさん、頼みましたよ」
そして二人は手を取り合いながら、怪異が現れた場所へと向かっていった。




