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尋ねた手紙〜妖獣と人間を繋ぐ力〜  作者: すごろくひろ
高校編 ③さよならの前に

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やまのいたつる

伏見神社の一角、直と健はある部屋で大の字になって横になっていた。お清めと称して、心寧が作った特製のお粥を三杯も食わされ、お腹がキツくて動けなくなっていた。子狸たちも彼らに連動するように満腹状態で動けない。

「この感覚がいいのよなあ……」

「うへへ、しあわせー」

 恍惚な表情を浮かべる子狸とは対照的に、二人は少し苦しそうだった。

「また喰らうとは思わなかった……」

「……」

 スヤスヤと眠りにつく二匹とは裏腹に、虚な目で天井を見上げる直と健。ふと直のスマホが鳴動する。速報ニュースの通知だった。

『六科島、噴火により消滅確認』

 直は、その見出しから目を離すことができなかった。横にいる健も見ることができない。

「島、噴火で完全になくなっちゃったってさ」

 健の狸耳がピクッと反応する。しかし表情に変化は一切なかった。

「これで良かったのか?」

「……」

 健はゴロンと横を向く。直から目を背ける。しばらく黙っていたが、やがてゆっくりと静かに言った。

「これで良かったんです。きっと」

 健はゆっくりと目を閉じる。少し肩を震えさせながらギュッと目をつぶって、身体を少し丸くしていた。

「そうか」

「……何も言わないんですか?」

直は口を噤んで、健と背中合わせになるように反対側に倒れた。子狸の寝息が静かに室内を響かせる。

「……お前が邪魔だった」

健は狸耳をピクピクとさせたまま、振り向かない。

「お前に全部吸い取られてるような感じがした。俺の存在が意味ないように感じた。俺は……」

直は突然口を止める。少し考えながら続けた。

「いやなんでもない」

「……悪者になりきれないって、こういうことを言うんですね」

「うるさいな」

健はクスッと笑う。背中合わせなので互いの顔は見えていないものの、互いにその表情がわかるようだった。

「あと、ガチガチな敬語。固っ苦しいからやめろ」

「それは……」

健が顔をこわばらせながら答える。

「直さんは……」

「『さん』をつけない!」

直の恐ろしい剣幕に、健はタジタジになる。そしてゆっくりと、言葉を選びながら話し始める。

「直は、誤解してるよ。みんな最近の直が変だって。直のこと心配してるよ」

「……」

思わず直は立ち上がると健の方を見下ろす。それに追従するが如く、健も立ち上がる。

「直は気づいてねって、自分のこと。みんな直のこと見とってんだよ」

「……」

訛り混じりの健の言葉が、なぜか直に突き刺さる。

「生地くん、伏見さん、三沢さん、駒井くん、里太郎くん。みんな直の話をするだ。スケちゃんもフミちゃんも心配しただ」

「お前になんか俺の気持ちは」

その瞬間、健が直に飛びついた。突然のことに直は自身の体を支えることで精一杯だった。

「僕は直が味方だと思ってるし、僕も直の味方でありたい」

健は耳と尻尾を窄めながら、涙混じりに必死に叫んだ。

「僕も味方を失いたくない……」

「ごめん……」

直は健を優しく抱き寄せた。

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