↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
尋ねた手紙〜妖獣と人間を繋ぐ力〜  作者: すごろくひろ
高校編 ③さよならの前に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
35/40

さよなら

やがて、その赤い大狸は、山の麓にある小さな洞穴にに身を潜めた。そこは直が六科島に来た際に最初に迷い込んだ、かの洞窟やった。

 赤狸は、健の体をゆっくりと下ろした。彼がすやすやと眠っている様子に胸を撫で下ろす。

「健もムチャするなぁ。だめだよ?」

 そう言って、彼を近くの柱に寄り掛からせた。その様子を装束姿の直たちが見守っている。

「ほんとに、お前覚えてないの?」

「うん……」

 そうしてるうちに外が騒がしくなる。健を呼ぶ声が、幾度となく聞こえてきた。赤狸は怪訝そうな顔をする。

「じゃまだなあ……」

 そいつは尻尾を大きく左右に揺らす。すると洞窟の穴を全て閉じてしまう。そして上下に揺らすと、洞窟の側からがけ崩れが始まった。

「まずいぞ!」

「一旦、逃げましょう」

 洞窟の外では、思いもよらぬ事態に阿鼻叫喚する。落石や土砂崩れに巻き込まれる者、足を踏み外し転落する者、健を探しに来た人たちは皆、災いに見舞われていた。ついには、洞窟から誰一人いなくなった。

「……」

「フミ……ちゃん?」

 健はうなされたかのごとく、目の前の大きな赤狸・フミの名を呼んだ。

「そうだよ。もう大丈夫。今度は僕が健を守る番だからね」

 その大狸は健の胸に軽く手を当てた。すると、それぞれの胸から綺麗な光の球が浮かび上がる。そして他方の胸に吸い寄せられる。

 赤狸はだんだんと身体が小さくなっていき、元の姿に戻る。健はゆっくりと起き上がると、掌を見つめていた。

「僕が守らなきゃ……」

 健もといフミは、赤狸を抱えながら本堂に踏み入れるといつもの装束姿に変身した。そしてパチンコを的に向けて何遍も発射した。

「もうこの島なんか……消えちゃえ。健を苦しめる民は死んじゃえ!」

 怨念と共にパチンコ玉は全て真ん中に命中した。


 ゴゴゴゴゴ……


 洞窟内に轟音が響く。島中にサイレンがけたたましく鳴る。噴火の合図だった。

「……」

 フミは健を抱き抱えたまま黙って合掌をすると、その姿を瞬時に消した。直は同じ世界線から来た健を隣で見た。彼もまた同じように黙って合唱していた。

「さよなら……」


 *


 目を覚ますと、直と健は薄暗い小屋のような場所にいた。隙間から外を覗くと、見覚えのある景色だった。

「伏見……神社……?」

「起きましたの?」

 伏見神社の巫女、心寧が入ってきた。呆然とする直と健。彼女は空中に文字を書いて、二人に指をさすと一気に視界が開けた。

「……ほんと、大変だったのよ。うちの境内で結界も張らずにいきなり決闘し始めるんだから……。このバカダヌキたちは……」

「狛犬黒狸よりマシだろ」

 直の反論に心寧は黙ってその場を去る。そしてすぐに心寧はお粥を二杯持って戻ってきた。顔を引き攣らせる直と、釈然とせず首を傾げる健。彼らの前にドンと置いた。

「お清めの時間よ」

 口に無理矢理入れられる二人。叫び声が悲しく聞こえたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。