いさかい
「おりゃあ!」
「……!」
健が懸命に直に攻撃を仕掛ける。連射されるパチンコ玉の軍団が、直に勢いよく襲いかかる。
「止まれ!」
直は大きく円を描くと、数多のパチンコ玉に向けて解き放っていく。それに触れたパチンコ玉は勢いを失い、力なく落下していく。
「いい加減にしろ! 殺す気か!」
「……」
それでも健はむすっとしたまま攻撃をやめない。手元のパチンコを縦に振ると、パチンコ玉が再び浮かび上げて、執拗に直を目掛けて襲いかかる。
「痛えっ……」
「こんなもんじゃないよ。僕の心の痛みは」
攻撃を受けて蹲る直に、健はゆっくり近づいていく。一歩。また一歩。健が直に近づいていく。パチンコ玉が、木の枝が、容赦なく直に向かって降り注ぐ。
「くっ……!」
直は魔方陣を発動させると、盾の代わりにして、なんとか健からの攻撃をなんとか受け止めて無効化する。睨み合う二人。しかし健の足が止まることはなかった。
「お前が来てから、みんな健、健って……。俺って一体なんなんだよ! なんで、みんながお前の周りに集まって……楽しそうに……!」
健は、吠える直を魔方陣ごと踏みつけた。執拗にだんだん強く激しく踏みつける。痛みに耐えながらも、直は健の表情を辛うじて見る。健の目は光がないように見えた。
「……」
余裕そうに見えたのか、健はさらに直へダメージを喰らわせる。
「ざけんなよ!」
直は思い切り健の足を掴むと、転がり込みながら健を押し倒していく。
『えっ……?』
一筋の涙が健の目から流れていた。
「なんで……」
突如として暴風がその場に巻き起こる。健は直立したまま何かを言っているが、聞き取ることができない。
『すまんな、身体をちと借りるぞ。直』
そして直の身体は、健の胸ぐらを掴むと勢いよく……。
バチンッ。
「……」
「……」
健の頬に痛みが走る。それは健の手のひらでも同じだった。いつの間にか直も涙を流していたことに気づく。自分の意思ではなくスケの心情からによるものだと、直が気づくまでそう時間はかからなかった。
「直……さん?」
「健……」
健は目に次第に光を取り戻していた。自分や相手の身なり、そして今の状況が掴めていない様子だった。
「なんで僕、変身して……。なんで直さんを……⁈」
ポツポツと雨が次第に降り始める。そして健は何かを思い出したような顔をした途端、堰を切ったように涙を浮かべていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
健は謝罪とともにその場に倒れ込む。しかし雨と風の音と共にその嗚咽はかき消されてしまう。
直はいつの間にか健をそっと抱き寄せていた。




