赤と緑
「とりゃあ!」
「させるか!」
健はパチンコ玉を直に向けて発射し続ける。直はなんとか彼の攻撃をかわし続けるものの、それが精一杯だ。彼を足止めしよう技をかけようとするも、姿をを捉えることができない。
「くっ……」
「これだから温室育ちの都会っ子は!」
健の言葉に、直は苦虫を噛み潰したような顔をする。「図星ですか? 直くん。逃げてばかりじゃ、何も変わらないですよ?」
さらに言葉で追い討ちをかける健。それは身体的なダメージとなって直に襲いかかる。
「ぐはっ……!」
衝撃とともに直は彼方へ吹き飛ばされる。健は駄目押しの如くパチンコ玉を直に向けて数発発射する。
バンッ、バンッ、バンッ!
「……」
動けない直に全弾命中。魔方陣で防御策を立てようとするも間に合わなかった。健はゆっくりと倒れ込んだ直に近づく。
「そっちが仕掛けてきたのに……、もう終わり?」
武器をパチンコからハンマーに変える。
「いつの間に、そんな能力を……」
緑狸は健の行為にただただ言葉を失ってしまう。健は気にする素振りも見せず、直の目の前に立つ。
「じゃ、終わりだよ」
健は、直を目掛けてハンマーを大きく振りかぶった。
「あれ?」
すんでのところで健は身動きが取れなくなる。足元を見ると、直が健の足を掴みながら、手持ちの筆で足首に線を一周書いた。
「なんで、下ろせない!」
健は慌てて身体を動かそうとするも、パニックに陥っていた。ゆっくりと彼の横を通るついでに、直は耳元で呟く。
「なんでお前なんかにボコボコにされなきゃいけないんだよ……。お前のせいで……」
健の動きが止まる。直はゆっくりと対面へ歩く。
「お前なんて来なければ良かったのに……」
「……」
直の言葉で健の表情は一気に曇っていく。そして一筋の涙が流れていく。
「君も僕のこと、そう思ってたんだね……」
すると健の身体から禍々しい黒煙のようなものが放出され始めた。そいつは直が健の足首に書いた線を消しゴムの如く消していく。
「健を苦しめる奴は、許さない……」
健はそう言うと、直のほうに向き直った。
「……?」
「直!」
スケは瞬時に大きな緑狸に変化すると、直を軽く咥えて後方へと逃げていく。
「スケちゃん、そいつを寄越してよ」
「落ち着け、フミ」
「フミ?」
緑狸の背中に乗せられた直は、隠れるようにして彼らの様子を伺っていた。直はふと初めて会った時の健のことを思い出していた。
「もしかして……」
スケはフミの攻撃から直を守るべく、縦横無尽に駆け回る。スケから攻撃を仕掛けてみるものの、相手はひょいと避けていってしまう。
「まずは聞かんか! フミ! 元に戻るんじゃ!」
「嫌だ! 僕が健を守るんだ!」
するとフミは赤狸をぎゅっと抱きしめると、一体となった。その立ち姿からは、覚悟が決まったような気迫を感じられた。
「儂も直を守らなければならぬ存在! その要求には応じぬぞ」
「えっ、ちょっ……」
スケも元の姿に戻り、直に抱えさせる。彼らもまた同じように一体となり、健と対峙した。
「こうなったら……!」
直の内心もバクバクしていたが、腹を括るしかなさそうだった。




