第51話 告白
あれからも思愛による地獄の模擬戦を続け、ついにライブの前日となった。
そのため英気を養うために今日1日は模擬戦を休めることになった俺はなんとなく学校に来ていた。
「あ~……学校のベンチって思ったより寝心地いいな......」
そんな独り言を漏らしつつ、学校の中庭的な場所に設置されていたベンチで空を見上げていると、俺に近づいてくる2つの気配があった。
「あ、宇佐戯く……ん?……???」
「……あなたそんなにかわいい顔だったかしら?」
「……あ~……まぁマナの副作用だよ」
「……それにしても変わりすぎじゃないかしら……?」
姿勢を戻し、ベンチから立ちあがりながらそう答えた。
……模擬戦の影響でマナゼリーを使いまくったとはいえ、ここまで変わるとは俺も思ってなかったんだよなぁ……
現在の俺の身長はちょうど160cm、それに伴って俺の顔立ちは言われないと男に見えないぐらい女の子よりのものになってしまっている。
そのためあさみや委員長からこう言われてしまうのもしょうがないだろう。
「ほわ~、宇佐戯君がこんなにかわいく……、頭撫でていい?」
「だめ」
「そっか……」
撫でるのを断られて、あさみがしょんぼりとした顔をしているが、こればかりは許可する気はない。
というのも俺がこの見た目になってからすでに何度も恵夢に撫でられている。
これ以上撫でられるのはなんとなく嫌だった。
「それで今日はなんで学校に来たの?」
「ん~、今日に関してはなんとなくかな」
「そう、珍しいこともあるのね?」
「あはは……、あさみ、こっそり近づいて撫でようとするのやめろ」
「うっ、バレちゃったか……」
こっそり後ろに回って撫でようとしてくるあさみから背後を取られないように体の向きを変える。
まったく、俺が気付かないわけが……
その瞬間、俺の頭になんだか暖かく柔らかいものが触れる感触がした。
その心地よい感覚に思わず声が出る。
「ふぇ……!?」
「……なんか私より髪がさらさらでむかつくわね」
「あっ!ずるいよ清華ちゃん!」
「や、やめいや!」
頭をなでる委員長の手をはねのけながらそう言った。
ま、まさか委員長まで頭を撫でようとするとは思っていなかった……
これからは誰が相手でも背後を取られないようにしないとな。
「清華ちゃんは撫でたんだから私も……!」
「駄目に決まってんだろ!というか明日ライブがあるのにずいぶんと余裕あるなお前ら!」
「そんなの……!?そうだった!?ライブ明日なんだった!?」
「忘れてたのかよ……」
「……まぁ、あさみはこういうタイプよね」
なんというか緊張感がないんだよなぁ……
初ライブをドームでするとかいうとんでもないことをしようとしてるのに。
「その調子だとライブは余裕そうだな」
「う~ん……、余裕があるわけではないよ?あ、でもみんなを楽しませる自信はあるかな!」
「おぉ……、なんというかすごいな……」
「あさみのそういうところは素直に尊敬するわ」
「えへへ……」
委員長の言葉になぜかあさみが照れている。
褒めてるかといえば微妙なラインだと思うぞ今の言葉……
そんなことを話していると学校のチャイムが鳴った。
「っと、そろそろ授業が始まるわね、あさみ、早く教室行くわよ」
「あ、うん!」
ん、もうそんな時間か。
じゃあ俺も教室に……?
「あれ?」
ふと頭に違和感を感じ教室に向かおうとしていた足を止める。
俺はその違和感の正体を知ろうと自分の髪に触れる。
「……ん?なんだこれ、ヘアピン?」
するとなんだか硬いものが刺さっており、引き抜いてみるとどうやらヘアピンのようだった。
六花があしらわれたヘアピン、その根元には小さく折りたたまれた紙が挟まれている。
「……読んでみるか」
おそらくこのヘアピンは委員長が俺の頭を撫でるときにどさくさに紛れて刺したものだろう。
ということはおそらくこの紙はひそかに委員長が俺に何かを伝えるための手紙だ。
俺は何が書かれているのかドキドキしつつ折りたたまれた紙を開いた。
「放課後に学校の屋上……?」
そこに書かれていたことに俺は疑問で頭がいっぱいになった。
え……何……告白?
いや、あの委員長がそんなことするわけないよな??
じゃあこれはいったい何???
「?……???……?????」
そうして俺は1時間目が始まるチャイムが鳴るまでの間ずっと固まっていた。
* * *
放課後にて、紙に書かれていた通り屋上に来ていた。
空は朝とは違い少し曇っており、なんだか不穏な雰囲気の中委員長がそこに立っていた。
「来てくれたのね宇佐戯君」
「……やっぱりこの手紙は委員長だったのか」
「えぇ、あ、一緒に付けたヘアピンはあなたに上げるわね」
「……まぁ、一応もらっておくよ」
六花があしらわれたヘアピン、なんかきれいだし欲しいなと思っていたのでちょっとうれしい。
「っと、そんなことよりこんなところに呼び出してどうかしたの?」
「……実はあなたに……その……話したいことがあって」
「……うん」
「なんというか……少し話すのが恥ずかしいのだけど……」
「……」
委員長が頬を赤らめ少しもじもじしながら言葉を紡いでいく。
いや、いやいや、いやいやいや。
まさかそんな、告白なわけ……ないよね?
「その……、じ、じつは私が今後魔法少女として活動することについて決めたことがあって、それを宇佐戯君に聞いてほしいの!」
「……ほっ」
その言葉を聞いて真っ先に出たのはそんな安堵の声だった。
なんかあまりにも告白の前振りすぎて本当にどうなるかと思った。
しかしそれにしてもあの委員長が俺に聞いてほしいことか……
一体どんな内容なんだ?
「聞いてほしい事って?」
「……実は今の私はあさみの足手まといになってるんじゃないかって思ってるの……」
「え?」
委員長があさみの足手まとい?
なんでそんなこと……
「シントリエの襲撃以降あさみはどんどん強くなっていってるわ、雷の魔法を皮切りに、変身せずに魔法を使えたり、3時間ぐらい変身を維持できるようになったりね」
「……」
「それに比べて私はあれから何も成長できてない、むしろ1か月も入院したりあさみに戦闘で庇ってもらったりで足を引っ張ってばかり……」
委員長の顔がだんだんと哀愁を漂わせるものに変わっていく。
ふと委員長の手を見ると強く握られており、今にも爪が食い込んで血が出るのではないかと思うほどだった。
「だからね、実はライブが終わったら引退しようと思ってるのよ」
「……え?」
「アクアや伊達さんにももうこのことは話してあるわ、あとはあさみと楓にも伝えるだけだったんだけどふとあなたの顔が浮かんでね、それでもし学校に来ていたらこのことを話すことにしたの」
「……なるほどね」
なんというか思っていたよりも深刻な話だったようだ。
あさみの足を引っ張っているから引退する……か。
う~ん……、なんというかこの話を聞いていると……
「なんか委員長って周りのことばっかで自分のこと見れてなくない?」
「……え?」
「いやだって、さっきの話だけ聞くとまるで委員長があさみの足を引っ張るだけど何も貢献できてないみたいじゃんか」
「実際その通りで……」
「いや、違うでしょ」
委員長が自己否定ばっかするので言い切る前のその発言をつぶす。
「あさみから聞いたんだけどさ、シントリエの襲撃の時身を挺してアクアを守ったんでしょ?」
「そ、それはそうだけどそのせいで私は……」
「その後も肺が貫通して死にかけの状態なのに起き上がってあさみを守ったらいいじゃんか」
なんというか足手まといっていうほど足を引っ張ってない、というかむしろ貢献してばっかだよな?
正直ここまでやってるのに足手まといって言うと庇われたせいで委員長の肺を貫通させてしまったアクアとかどうなんだって思ってしまう。
「それにさ、委員長が入院してるときあさみが言ってたことがあるんだよね」
「あさみが……言ってたこと……?」
「あぁ、『魔物と戦ってみてわかったんだ、清華ちゃんってサポートがとっても上手で、うまく私が魔物に攻撃するための道を作ってくれてたんだなって』とのことらしい、これでどこが足を引っ張ってるんだよ」
なんなら普通に有能すぎて何なら俺たちの仲間になってほしいぐらいだわ。
これでなんでそんなに自信がないんだか……
「さ、サポートなんてなくてもあさみと楓なら!」
「それは違うだろ、いなくてもできるといないほうができるは別物だ、たとえあさみと楓だけで魔物を倒せるとしてもそれは委員長が不要になる理由にはならない」
「うぅ……」
委員長の言葉が詰まる。
どうやら委員長はもうこれ以上反論が思い浮かばないらしい。
ならここで根本的な質問をするか。
「そもそもなんでそこまでして魔法少女をやめたいんだ?」
「それは私が足手まといだから……」
「嘘だな、いや、正確にはまるっきり嘘ではないけどもっと大きい別の理由があるんだろ、ただ足手まといが嫌なだけならさっきまでの問答でやめる理由はなくなったはずだ」
「……っ」
委員長の顔があからさまに歪む。
どうやら俺の予想は当たっていたらしい。
7割ぐらい勘だったのだが言って正解だった。
「……えぇ、そうよ、確かに足を引っ張りたくないっていうだけじゃないもっと別の理由がある……」
「それはどんな理由だ?」
「……もうあさみのあんな顔を……見たくないのよ、あんな誰かのために命を投げ出そうとする顔を……」
「……あぁ、そうか、友達に死んでほしくなんかないもんな」
考えてみれば当たり前だ。
命がけといえば聞こえはいいが、友達が死ぬかもしれない状況に自ら足を踏み入れるところなんて見たいわけがない。
「肺が貫かれて薄れる意識の中見えたの、あさみが命がけで私とアクアを守るために戦う姿を」
「……」
「私はそれを見てかっこいいとも思ったわ、けどそれ以上に怖かった……、今にも命を燃やし尽くしてしまいそうな、あの顔が……」
「あさみにもうあんな顔をしてほしくない!……けど魔法少女として活動する以上必ず命を懸ける場面は来てしまう……」
「……だから魔法少女をやめてその顔を見れないようにすると?」
「……えぇ、そうよ」
……まぁ、確かにあさみの命がけの顔を見ない方法としては正解だろうな。
でもそれは根本的な解決にはなっていない。
本当にただその顔を見ないためだけの答えだ。
「あさみが命を燃やし尽くそうとするならさ、清華、お前があさみの命を燃やす炎を消してやれ」
「……え?」
俺は清華から背を向けつつ言葉を続ける。
「清華があさみの命がけの顔が見たくないのはそもそもあさみに死んでほしくないからなんだろ?」
「え、えぇ、そうよ」
「ならさ、あさみが命を懸ける必要がないほど清華が強くなればいい」
「そんな簡単に……!」
「清華って最近はライブの練習ばっかで訓練とかろくにしてないだろ?」
「え……?」
「幸いここは放課後の屋上、人はいないし監視カメラもない」
俺は飲み切ったマナゼリーを清華に見えないようにしまいつつ、手にアクアスピアを生成する。
「……!ちょっと、本気!?」
「もちろんだ!模擬戦しようぜ清華!」
そう言って清華に向かって俺は走り出した。
「あぁもう!変身!」
『Are you ready? Change→Viora!!!』
その言葉とともに清華の体が光に包まれていく。
俺はすかさずその状態の清華にアクアスピアを振るが、突如として現れた氷でできたハンマーによって止められてしまった。
「手加減とかできないわよ!」
「上等!というかこの模擬戦はビオラが強くなるためのものなんだから手加減なんかしたら意味ないだろ!」
アクアスピアと氷のハンマーのぶつかり合う音が屋上に何度も響き渡る。
その音はあたりがすっかり暗くなるまで止むことはなかった。
こうして俺は結局今日も模擬戦をすることになった。
小話
実は宇佐戯は無意識に親密度ごとに相手の呼び方が変わっており、名前呼び>適当なあだ名>名字呼びの順で親しい相手になる。
もう1話投稿したのでポイント乞食します。ポイントください。




