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ゼノマギア  作者: ささみ
第2章 なぜ彼は魔法少女であれるのか
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第46話 克服

 翌日、病院の前まで来た俺は、その中へと入っていく。

 そしてあたりを見回すと恵夢の姿を見つけた。

 同時に恵夢もこちらに気が付いたらしく俺のほうへと向かってきた。


「宇佐戯さん!2日ぶりですね!」

「うん、とりあえず今ここ受付だから移動しようか」


 病院の受付としては大きすぎる声量に俺はそう言った。

 ここで話すのは他の患者の迷惑になるだろうし、恵夢の病室へと移動する。

 恵夢の病室は特別室なので他の患者はいない。

 話すにはもってこいの環境だろう。


「それで今日は何をしにここまで来てくれたんですか?」

「それはな、前に恵夢は俺に自分が魔法少女だってこと教えてくれただろ?」

「え、まぁそうですけどそれがどうかしたんですか?」

「恵夢の秘密を一方的に知ってる状態なのはあれだし、俺も自分の秘密を話そうと思ってな」

「え、もしかして実は女の子だったり!?」

「ちがうけど!?」


 思いもよらない言葉に俺は思わずツッコんでしまった。

 恵夢ってまだ俺の性別を疑ってるのか!?


「そうじゃないなら一体どんな話なんですか?」

「……はぁ、その説明のためにこれを見てくれ」


 俺は恵夢の切り替えに少しため息をつきつつ、とあるカードを恵夢に見せる。


「なんですかこれ?」

「魔法少女機関の職員証、俺実は魔法少女機関の研究者なんだよね」

「……えぇ!?!?!?」


 これまでにないぐらい大げさに恵夢が驚いた。

 まぁそんな反応をするのも無理ないだろう。

 だって恵夢は魔法少女機関に所属してない魔法少女だし、その友達が実は魔法少女機関の研究者でしたとかビビるに決まってる。


「えと、じゃあまだ未登録の私を捕まえに!?」

「そんなわけないだろ、俺は公私混合したうえで私を優先するタイプだ、友達を売ったりしない。」

「それ一番駄目な奴ですよね……?」


 ぶっちゃけ魔法少女機関からマナゼリーを大量に持ち出して私的利用しまくってるし、シントリエを家にかくまってるし、今更未登録の魔法少女を見逃すぐらいしたところで何の問題もない。


「まぁそんなわけで魔法少女機関の職員だけど恵夢を捕まえるとかはする気ないから、なんなら特に問題ないと思う情報なら教えてあげる」

「え~と……それは……ありがとうございます?」


 堂々とした汚職宣言に恵夢が困惑しているようだ。

 さて、それじゃあそろそろ本命の話に行くか。


「というわけで早速魔法少女機関で見つかった恵夢が知っていた方がよさそうな情報があるからそれを教えるね」

「え~と、それは本当に聞いていい情報なんですか?」

「俺はそう判断した、ということでこれを読んでみてくれ」


 そういって、俺はあの日記を恵夢に渡した。

 正直あの内容を読むと恵夢の場合正気が削れそうな気もするが、それでも直接恵夢が読んだ方がいいだろうと思ったからだ。


「ノートですか?」

「あぁ、とある研究所跡で見つかったものだ、中身はとある研究者の日記だな」

「それが私が知ったほうがいい情報なんですか?一体何が書いてあるんです?」

「それは自分の目で確かめてくれ」


 俺がそう言うと恐る恐る恵夢が日記を開き、読み始める。

 すると恵夢の目が見開き、冷や汗をかいているが、文字を読む目とべーじをめくる手が止まることはない。

 そしてようやく動きが止まったかと思うと日記と目を閉じ、しばらくして目と口を開いた。


「……どうしてこれを私に読ませたんですか?」

「必要だと思った、ただそれだけだ」

「……そうですか」


 なんというか空気が重い、日記を読ませるべきではなかったのだろうか。

 でももう読ませてしまった以上あとは野となれ山となれだ。


「……最初から分かってたんです」

「え?」

「私のせいでたくさんの魔法少女が犠牲になっていることなんて、最初から……!」

「……!」


 恵夢が涙目になりながら右手で強くこぶしを握っている。

 今にも泣きだしそうな表情だ。

 だが俺はその涙目の奥に、なにか強い意志のようなものを感じた。


「聞いてもらえますか宇佐戯さん、これまでの私の話を」

「……恵夢にその覚悟があるならいくらでも聞くよ」

「ありがとうございます」


 おそらく本来は誰かに話すようなことじゃないのだろう。

 だが、恵夢はそれを俺に話そうとしてくれている。

 なら俺はその話を聞かなくてはいけない。

 それがどんなものであろうと。


 *  *  *


 およそ8年前のことです。

 その時の私はまだ小学3年生で、悪いことは許せない正義感だけはある子供でした。

 そのせいでしょうか、私は社長令嬢だったこともあって、会社で行われるグレーゾーンな行いが許せず、こっそり証拠を集めたりしていました。

 まぁ今考えてみればバレバレだったと思いますし、社長令嬢だからそんな行いも見過ごされていたんだと思います。


 そんなある日です。

 その当時魔法少女が現れたことで私はその存在にあこがれを抱いていました。

 だから私も魔法少女になれないかと考えながら自室のベッドで座っていると、目の前に妖精が現れたんです。

 そして妖精は言いました。

『僕と契約して魔法少女になってよ!』

 今考えてみるとあからさまに怪しい誘い文句でした。

 でも当時の私は迷うことなく契約をしました。


 妖精曰く、魔法少女の扱える魔法は誰でも使える基本魔法とその魔法少女にしか使えない固有魔法の2種類あり、固有魔法は魔法少女になる契約をしたときに強く願ったものがもらえることが多いそうです。

 なので私は願いました。

 どんな悪事も見逃さない魔法が欲しいと。

 だからでしょうか、どんな場所にも忍び込み不正を見つけることができる魔法、怪盗七つ道具が得られたのは。


 そうして魔法少女になった私は、すぐにお父さんにそのことを伝えに行きました。

 まぁ、魔法少女に慣れてはしゃいでいたんだと思います。

 そしてお父さんの部屋ドアを開いて中に入ろうとしたとき聞こえてしまったんです。

『魔法少女は化け物だ』

 私は耳を疑いました。

 でもそれは間違いなくお父さんの声でした。

 そして私は思わず言ってしまったんです。

『わたし、化け物になっちゃったんだ』

 部屋のドアはもう開いていたので、お父さんにも聞こえていたと思います。

 そして私はそのあと逃げちゃいました。

 お父さんの制止する声が聞こえた気もしましたが、気にする余裕はなくて、それから何があったのかはいまいち覚えていません。

 必死すぎて何をしたのかがあやふやなんです。

 ただ最終的に私とよく話してくれていた社員さんの家にしばらくの間泊めてもらうことになったのは確かです。


 その社員さんは野田真司と言う方で、ショックでしばらく引きこもっていた私を必死に励ましてくれました。

 その言葉のおかげで私は少しずつ調子を取り戻すことができたんです。

 まぁもともとただ化け物だといわれただけなので、それも当然ですが。

 でも私はお父さんのところに戻る気にはなれなくて、真司さんに無理言ってそのまま泊めてもらうことになったんです。


 そしてそんな生活が続いていたある日、真司さんは言いました。

『すまない恵夢、もう戻れない場所まで行ってしまった』

 いきなりだと思いましたか?

 私も思いました。

 何か月もの間泊めてもらっていたこともあり、すっかり真司さんに懐いていた私は何があったのかを聞きました。

 ですがそれ以上何も教えてくれませんでした。


 その日から少しずつ真司さんは疲弊していきました。

 まるでただ動いているだけの死体、ゾンビみたいに。

 私は心配してましたが、それ以上にできることはありませんでした。


 そしてその日が来ました。

 慌てた様子で真司さんが家に帰ってきて、私にこう言いました。

『すぐに準備してくれ!ここから逃げるぞ!』

 私は混乱しつつも言われた通りに準備をしました。

 そしてそのまま車に乗って、その中でようやく真司さんに何があったのかを少しだけ教えてくれたんです。


『私は恵夢を泊めてすぐに有瀬零番研究所の所長に任命された、そしてその中で取り返しのつかない過ちを犯してしまった』

 ここまで話せば宇佐戯さんもわかりますよね。

 そう、真司さんはこの日記を書いた人のことです。

 この日記に私のことが書かれていないのは万が一他の人に見られても大丈夫なようにだと思います。

 魔法少女を何人も殺してしまったことは教えてくれませんでしたが、なんとなくそうだろうとは思っていました。


 話を戻しますね。

 あの後逃げた私と真司さんは、新しい家を用意して、真司さんは医者になりました。

 いろいろと非合法な手段を使ったのだろうとは思いますが、この状況では仕方ないとも思います。

 そして真司さん会社として働いてくれている中、私は償いをしたいと思いました。


 もともとあの研究所が魔法少女を研究することになったのは私が逃げてしまったから。

 私は幼いながらもそれがなんとなくわかっていたんです。

 だから私にできる償い、有瀬不動産が行ってきた悪事を暴くことにしたんです。

 私には怪盗七つ道具という魔法があったので、それも不可能じゃありませんでしたから。


 そうして私は何年もの間少しずつ調査をしていきました。

 変身時間という時間制限のせいであまりうまくは進みませんでしたが、それでも着実に進んでいたんです。

 そしてつい先月のことです。

 私はとある重要な資料を見つけることができました。

 魔法少女機関の襲撃……そう書かれていました。

 魔物の軍勢による襲撃、そしてその隙に魔法少女機関にある情報を抜き出すというものでした。

 その瞬間です。

 私は何か嫌な予感がしてとっさに横に飛んだと同時に、土でできた剣のようなものが飛んできました。

 慌てて飛んできた方向を見ると、謎の女性が立っていて、私にこう言いました。

『こんなところにもネズミは湧くのね。すぐに駆除してあげるからそこでおとなしくしてなさい』

 私はこのまま戦っても勝てる可能性は低いと判断して、すぐに逃げることにしました。

 その途中で右手や左足を斬り落とされて、全身がぼろぼろになりつつもなんとか逃げ切れたんです。


 その状態で帰った私は真司さんに盛大に泣かれたり心配されたろ怒られたりしつつ病院に入院しました。

 魔法少女になった影響か、数週間で右手も左足も再生して完治しましたが、それでも私の心には深い傷ができました。

 私は怖くなってしまったんです。

 私は私のせいで死んでしまった魔法少女や、有瀬不動産のグレーな行いによる被害者のために戦ってきたと思っていました。

 ですが、私はそんな理由のために重傷を負ってまで戦えるほど強くありませんでした。

 私が守ろうと思っていたもの、具体的には唯一信頼できた真司さんのような年上の女性以外の人を少しでも感じると強い恐怖を抱くようになってしまったんです。

 男性のにおいを感じたり、幼い女の子を見たり、それだけでもう駄目になったんです。

 そしてさらに変身までその恐怖のせいでできなくなってしまいました。

 私はその状態を何とか克服しようと、なんども震える体を抑えながら病室から出て、結局何もできずに戻ることを繰り返していました。


 そんな時に出会ったのが宇佐戯さんでした。

 最初宇佐戯さんに触れられたとき、私は年上の女性だと思っていました。

 だって、私は男性に見たり触れるだけじゃなく、匂いをかぐだけでもダメな状態でしたから。

 でも宇佐戯さんは驚くべきことに男性でした。

 その瞬間思ったんです。

 この人といればこの恐怖を乗り越えられるかもしれないと。

 気づいてましたか?あの時は男性恐怖症かを聞かれてうなずきましたけど、本当は年上の女性以外はだめだったんです。


 そうして宇佐戯さんに恐怖の克服を手伝ってもらって、ついに成功したのが魔物と出会ってしまった時です。

 あのとき宇佐戯さんが私に言ってくれたあの言葉。

『誰かを助けるためではなく、助けたいと思った自分のために覚悟を決める。』

 それのおかげで私は恐怖を乗り越えて再び変身できるようになったんです。


 *  *  *


「これが私の話です」

「……」


 その話は想定の何倍も重かった。

 というか俺と会ったときそんな状態だったの!?

 普通に男性恐怖症だと思ってたんだけど!?


「ごめんなさい、こんな重い話をしちゃって」

「いや、むしろ聞けて良かったよ、ありがとう話してくれて」

「そんな!なんで宇佐戯さんが感謝するんですか!感謝してるのはむしろ私の方です!」


 ……正直罪悪感がすごい。

 デパートのあのシリアルな状態の裏でこんなことになってたとは思っていなかった。

 もうちょっとちゃんとシリアスな場面でやるべきだっただろ絶対……

 そんなことを思いつつも、俺はもともとの目的だった協力のお願いをすることにした。


「なんかこの状況だとすごく言いずらいんだが、実は恵夢にお願いがあるんだ」

「ッ!私にできることなら何でもしますよ!」


 やばい、すごくお願いしずらい。

 なんだこの言語化しずらい感覚は。

 まるで無垢な子供に残酷なことさせようとしているみたいなすごくやな感じがする……


「あ~、実はな、今魔法少女機関はとあるイベントを開催しようとしてるんだけど、その開催場所がセーヌドーム、つまり有瀬不動産の支配下ともいえる場所なんだ」

「え!?そんなの明らかに怪しくないですか!?」

「あぁ、だからセーヌドームで一体何をする気なのか調査をしたいんだが、セーヌドームは当然警備が厳しい」

「……!つまりお願いって!」

「あぁ、セーヌドームに潜入して調査をしてほしいんだ」

「ッ!?」


 恵夢は俺のお願いに驚いているようだ。

 まぁ当然の反応だろう。


「あぁ、一応言うけどもちろん断ってくれていいよ、無理強いがしたいわけじゃな……」

「もちろんします!」

「!?……おぉ」


 食い気味に返答が来て俺は思わず驚いてしまった。

 もうちょっと考えてから返事をしたほうがいいと思うんだけど……


「私はもともと有瀬不動産の悪事を見逃す気はありません!その情報を教えてもらった以上お願いされてなくても私は勝手に調べます!」

「圧がすごいなぁ……」


 まぁこの圧の強さが恵夢の良さだ。

 さっきの重い話の中では発揮されていなかったが、ようやく調子が戻ってきたような感じがする。


「それじゃあお願いして大丈夫なんだな?」

「はい!」


 その言葉には確固たる意志を感じた。

 もう恐怖には屈しないという強い意志が。

小話

真司という名前のせいでわかりずらいが女性である。


書いててこの設定ちょっと無理あったかとは思わなくもないのでポイント乞食します。ポイントください。

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