第44話 日記
この話は日記の内容から始まります。
そして話のほとんどが日記です。
2018年5月7日
日記をつけようと思い立ったので定期的にここに書いていこうと思う。
書くことを決めたのは今日から有瀬零番研究所の所長となったからだ。
この研究所は有瀬不動産のいくつかある研究所の中でも表立って行うことはできないものを研究ための施設で、そんな場所を任されたことを私は誇りに思う。
もっとも任命された理由を考えると素直に喜べないのだが。
2018年5月8日
昨日任命された理由を詳しく書いていなかったので書いておこうと思う。
私はもともと有瀬不動産でもなかなかの立場にいる人間だった。
有瀬社長からもかなり信用してもらえていたという自信もある。
そんな私だからこの最も重要な時期にこの地位に就かせてもらえたのだろう。
2018年5月9日
そういえばこの研究所の今の目的について書いていなかった。
書き忘れが多すぎるかもしれないが、どうせこんな日記自分しか読まないだろうし別にいいだろう。
この研究所は魔法少女についての研究をしている。
4か月前に突如として現れた魔法少女は特定手段による攻撃以外では一切負傷せず、また魔法という非科学的な現象を引き起こす能力を持っている。
この仕組みを解明できれば大きな力を得られるのは間違いないだろう。
もっともそんな理由で研究しているわけではないが。
2018年5月10日
研究だがまるでうまくいっていない。
そもそも研究対象である魔法少女が研究所の中にいないのに解明できるわけがなかったのかもしれない。
くそ、このまま終わるわけにはいかないのに。
2018年5月11日
研究者の一人である氷雨君が魔法少女の被検体を得られるかもしれないと言ってきた。
詳しく説明を聞くとどうやら娘が魔法少女になってしまったらしい。
氷雨君は娘を被検体にする気のようだ。
勿論私は止めたが、どうやら氷雨君は本気のようだ。
社長のために娘を差し出せる忠誠心は尊敬できるものだが、私はそれに対して恐怖を感じてしまった。
いや、怖いのは氷雨君ではなく、それほどまでに忠誠心のある研究者を持つ社長に対してだろうか。
2018年5月12日
被検体を得られたことによりいくつかの発見をすることができた。
まず魔法少女は魔法をいくらでも使える訳ではなく何らかのリソースを使用しているようだ。
以降このリソースをMPと呼ぶことにする。
また魔法もなんでも使えるというわけではなく、基本魔法というどんな魔法少女でも使うことのできるもの4つと固有魔法というその魔法少女にしか使えないもの1つの計5つしか使うことができないらしい。
2018年5月13日
被検体の固有魔法を見せてもらった際に不慮の事故により被検体が負傷してしまった。
しかし、その負傷はすぐに治ってしまった。
このことから魔法少女には強力な自己治癒力があると思われる。
2018年5月14日
自己治癒力に関して調べたのだが、どうやら魔法少女に変身している間のみこの強力な自己治癒力が得られるようだ。
変身前の状態では通常の人間と同程度しか自己治癒力はなかった。
2018年5月15日
MPについて調べてみて分かった事がある。
まず魔法少女には通常の人間には存在しない器官が存在するようだ。
その器官は非常に小さいのだが、その器官によってMPの製造及び貯蓄が行われているらしい。
また逆にその器官以外のはMPが一切存在しないということが分かった。
2018年5月16日
妖精を名乗る謎生物が我々に接触してきた。
どうやら研究を手伝ってくれるらしい
心底怪しいが、どうやら魔法少女同様魔法が使えるらしく、下手に刺激すればこの研究所は容易に滅ぼされてしまうだろう。
しぶしぶ私は研究の手伝いという提案を飲むことにした。
2018年6月20日
妖精の手伝いによって魔法少女の研究が大きく進んだ。
その影響でしばらくの間日記を書けなかったがそれは些事だろう。
このまま研究が進めばこの研究所の元の目的を達成できる日も近いかもしれない。
2018年6月29日
駄目だ。
研究が進まなくなってしまった。
2018年7月15日
研究についてだがあれから進展は一切ない。
妖精もなぜか訪れなくなった。
少しずつ社長も精神に異常が発生してきている。
研究の成果が出なくなってしまったせいだろう。
このままではだめだ。
なんとかしなくては。
2018年9月19日
何をしても駄目だった。
研究は進まない。
社長の精神も限界に達し始めている。
何のために魔法少女の研究をしていたのかをすっかり忘れてしまっていた。
もうこの会社はだめなのかもしれない。
2018年10月20日
もう何もかも駄目になってしまった。
何を思ったのか氷雨君が被検体に大量の薬物を飲ませて、その結果被検体が死んでしまった。
被検体は自らの娘なのにもかかわらずだ。
もともと少しずつ氷雨君の様子はおかしくなっていたが、これがとどめとなり完全におかしくなってしまった。
もうこれ以上の研究は不可能だろう。
2018年10月28日
これ以上の研究は無理だと何度も説明したが聞き入れてはもらえなかった。
それどころか被検体がいないのなら誘拐や人身売買で手に入れろと言ってきた。
魔法少女相手に誘拐などできるわけがない。
人身売買……不可能だと思うがやらないわけにもいかないだろう。
2018年10月28日
氷雨君が魔法少女を連れてきてしまった。
どうやったのかを聞けば魔法少女の両親を誘拐し、親が殺されたくなければ被検体になれと脅したらしい。
一体どこまで堕ちてしまったんだこの研究所は。
2018年10月30日
氷雨君が魔法少女を殺してしまった。
私にはもう氷雨君が何を考えているのかが分からなくなってしまった。
氷雨君は次の被検体を連れてくるといった。
このままいったい何人の魔法少女を殺すつもりなんだ。
2019年2月18日
何人もの魔法少女が死んだ。
まだ高校生にもなっていないような幼い少女を何人も殺してしまった。
直接やったのは氷雨君だがこれには私の責任も大いにあるだろう。
私はどうやって償えばいいんだ。
いったいどうすればこの悲痛な叫びが聞こえなくなるんだ。
2019年3月1日
魔法少女を売ってもいいという相手を見つけた。
それもなんと最初の魔法少女であるシントリエの両親だ。
気は進まないが見つけてしまった以上買うしかない。
せめてシントリエがこの施設内で充実して過ごせるよう環境を整えておこう。
それが私にできる唯一の贖罪だから。
2019年3月3日
今のところシントリエはおとなしくしてくれている。
そのためある程度体を調べることができたのだが驚くべきことが分かった。
どうやらシントリエは他の被検体とは違い、変身前でも全身にマナを保有しているらしい。
これが何を示しているのかはわからないが、調べてみる価値はあるだろう。
2019年3月5日
シントリエが暴走した。
それにより研究所はほとんど壊滅状態、死者こそ出ていないが、もう研究はできないだろう。
だが、こんな状況にもかかわらず私は喜びを感じていた。
あぁ、そうだ、私はこの研究をやめたかったのだろう。
いつからかはわからないが、こんな非人道的な研究に嫌気がさしていたのだろう。
研究所が壊滅した今私は間違いなくクビになる。
もしかしたら殺されるかもしれない。
私はその前に一足先に自由になることにした。
私の精神はこの研究で大きな過ちを犯しすぎた。
その贖罪をしようと思う。
なので罪を告白して捕まることを考えた。
だが、その前に暗殺者でも仕向けられて殺されてしまうだろうしそれはできないだろう。
だから私は医師になろうと思った。
幸い私には戸籍や医師免許を違法に入手することができる当てがある。
医師免許があったところでうまくできるかについては、それ相応の知識と経験はあると思う。
もう命を無駄にはしたくない、これからは命を守りたい、私はそう思った。
それが何人もの少女を殺してしまった私にできる償いだから。
一つ心当たりがあるとすれば、結局この研究所の目的を果たせなかったことだろう。
この研究所の目的、それは社長の娘、有瀬 恵夢を魔法少女から普通の少女に戻すことだった。
社長はどうやら魔法少女に何か思うことがあるらしく。
魔法少女は人間ではなく化け物なんじゃないかと考えているらしい。
それを魔法少女となってしまった恵夢に聞かれてしまったようだ。
それにより恵夢は家出し帰ってこなくなった。
それで社長は娘に帰ってきてもらうために、魔法少女をもとの普通の少女に戻す研究をすることにしたのだ。
まぁ、そんな目的今の社長はもう覚えてないのだろうが。
* * *
日記を読み終えた俺は椅子の背もたれに体重をかけながら上を見上げた。
その行動にこれといった意味はない。
だがそうしたくなったのだ。
「……まじか~」
重い、重すぎるよ話が。
なんなんだよこの日記、最後まで闇たっぷりだよ。
なんか気分が重たくなってきた……
「読み終わったのかしら?」
「うん、まぁ一応……」
「……なんかテンション低いわね、どんな内容だったの?」
「精神がおかしくなった人が何人も魔法少女を被検体にして殺す中唯一多少まともだった人の話」
「うわぁ……」
日記の内容を千里に聞かれたので端的に伝えると、あからさまに引いてしまった。
うん、まぁそうなるよね、俺も読んでてそうなったし。
「正直これ読んで気分が落ち込んだからもう帰って寝たいんだけど、そっちの方はなんか成果あった?」
「特になかったわ、どの資料もすでに分かってることばっかだった。」
「そっか、じゃあもうさっさと帰ろう」
「そうね」
今日はもう帰ることを決めた俺は、資料を顔にかぶせて寝ていた思愛を起こしてそのこと伝え、資料室を出た。
「うわぁ!?あ、なんだ宇佐戯君か」
「……びっくりしすぎだろ」
ずっと資料室の前でびくびくしていたのか、変身しているあさみが資料室のドアが開いたことに驚いて大声を上げた。
「今日はもう帰るぞ」
「え。うん、分かった!」
そうして俺たちは研究所を出た後再び森の中を進み、千里の車に乗って家へと帰っていった。
小話
日記で途中からMPがマナになってるのは妖精がマナのことを説明したため。
狂気の日記を読んでSANチェック1/1D3になったのでポイント乞食します。ポイントください。




