第40話 奇術の魔法少女
恵夢の電話から1週間が経ち、俺は約束通り札幌駅に来ていた。
「あ!宇佐戯さんこっちです!」
「もう来てたのか……」
念のため約束の時間よりも30分早い9時半に来たのだが、もう恵夢は来ていたようだ。
病院生活で基本的に外に出ていないだろうし、楽しみなのはわかるがいくら何でも早すぎるだろう。
「ほら、早くいきますよ!」
「ちょ、引っ張るのはやめろ!?」
俺は恵夢に腕を引っ張られ、そのままデパートに到着するまでそのまま走らされてしまった。
この子ほんとに男性恐怖症なんだよな?
「おぉ、ここがデパートなんですね!」
「前の電話越しからそんな気はしてたけど、デパートに来るのは初めてなのか?」
「はい!なので来てみたかったんです!」
う~ん、恵夢が何歳なのかは知らないけど13歳ぐらいは行ってるだろうし、それまでデパートに行ったことないなんてあるのか?
健康体なのに病院で暮らしていることといい、何があったらこんなことになるんだ?
「あ!見てくださいあの服!宇佐戯さんに似合いそうじゃないですか?」
「……俺の目が腐ってなければ思いっきり女性服なんだけど、俺が男ってこと忘れてない?」
「え?あっ、い、いや、まさか忘れてるわけないじゃないですか!冗談ですよ冗談!」
忘れてたやつだこれ……
仮にも男性恐怖症の克服という名目で一緒に来てるのにそれはどうなんだ?
そんな疑問を抱きつつも、俺と恵夢はデパートでウィンドウショッピングをして周り、なぜか何着か俺用の女性服を買うことになりつつも楽しんだ。
「ふぅ、ありがとうございました宇佐戯さん!おかげで楽しかったです!」
「別にいいよ、俺も楽しんだしな」
俺と恵夢はデパートの休憩区ペースにあったベンチに座りながら、そんなことを話す。
もう夕日が出ているし、帰るにはもういい時間だろう。
「さて、じゃあそろそろ帰ると……ん?」
俺が帰ろうとベンチから立つと、十数人の人がどこかへ走っていくのが見えた。
その中には店員の服装をしている人もおり、なんだか嫌な予感がしてきた。
『GYAAAA!!!』
「マジかよ、こんな時に!?」
魔物の叫び声が建物中に響いて俺に聞こえてくる。
その方向を見ると人型で剣のようなものを振り回す魔物がいた。
もう見える範囲にいる。
こっちに襲い掛かってくるのも時間の問題だろう。
「恵夢!俺はいいからさっさとここから逃げろ!」
「え、で、でも!」
「いいから早く!」
もう魔物は俺のすぐ目の前まで来ている。
でも恵夢の前で変身するわけにはいかない。
銃で戦うのも控えるべきだろう。
だから先に恵夢を逃がしてからじゃないといけない。
「そ、そんなことできません!宇佐戯さん置いていくなんて!」
「いいから!」
「無理です!」
魔物による剣での攻撃を何とか避け、恵夢と話す。
も~!
なんでこんな時にこんな強情なんだよ!
もうこうなったらバレるの覚悟で変身するしかないのか?
「なんで宇佐戯さんがここに残る必要があるんですか!」
「は?ぐっ!?」
恵夢との会話に夢中になりすぎて魔物の攻撃を受けてしまった。
幸い剣の側面部分での攻撃だったから軽く吹き飛ばされるだけで済んだが、これ以上攻撃を受けるわけにもいかないだろう。
早く恵夢を逃がさないと。
「そんなの!目の前で恵夢が死んでほしくないからに決まってるだろ!」
「え……、そ、そんな他人のためだけで覚悟を決めてるんですか!?」
「ちげぇよ!他人じゃない!自分のためだ!」
吹き飛んだ俺に魔物が近づいてくる。
変身するのも視野に入れなくてはいけない。
「俺は恵夢に目の前で死んでほしくないと思った!だから戦うんだ!」
「だから……自分のため……?」
「そうだ!」
魔物の攻撃を横に飛んで避ける。
いい加減そろそろ逃げてほしいんだが……
「私……決めました!」
「ほんとか!?」
「他人のために戦う覚悟はできなくても!自分のためなら私だって覚悟を決められます!」
「ん?え?」
「目の前で死んでほしくないのは私だってそうなんです!」
「え、いや、そんな覚悟しなくても……」
なんか違くね?
俺を置いて逃げげられないというより、俺がここに残って戦うなら私もここで戦う的な雰囲気だぞこれ??
なんかもう覚悟が決まった目をしてるんだけど!?
「だから見ていて下さい!私の!『変身!』」
『Are you ready? Change→Luna!!!』
「!?!?!?」
恵夢の体が光に包まれ、気が付くとそこには小さいシルクハットのようなものを頭に付けた、紫髪の紫をベースにしたゴスロリを着た魔法少女の姿があった。
「魔法少女ルナ!行きます!」
ルナが右手にナイフを生成し、そのまま魔物へ突撃する。
魔物は近づくルナに大振りで剣を叩きつけようとしたが、ルナはナイフでそれを横に流し、そのまま剣を持つ腕を切り落とす。
「はぁ!」
『GYA!』
ルナはそのままの勢いで魔物に斬りかかるが、魔物は身を反らせて回避し、そのまま片手を地面に手を付け、バク転のすることでルナに蹴りを放つ。
「これぐらい避けれます!」
「GYA!?」
ルナは左手からワイヤーを天井に向けて放ち、そのワイヤーに引っ張られることで上昇し、魔物の蹴りを回避。
そのまま右手のナイフを捨てて銃のようなものを生成し、魔物に向けて撃った。
「……トランプ?」
ルナが発射したものをよく見ると、カードのような見た目で模様もあるためおそらくトランプだ。
トランプ銃、そしてあの服装……
もしかしなくてもこれって怪盗ですよね?
「さぁ、ここからがフィナーレです!」
『GI!?』
ルナがワイヤーを使って魔物の周りを飛び回り、四方八方からトランプ銃を打ち込む。
そしてその攻撃で魔物が怯んだ瞬間に魔物の後ろから飛び掛かり、そのまま生成したナイフで斬り裂いた。
『GYA……』
真っ二つになった魔物はどろどろと溶けて消えていく。
どうやら倒せたようだ。
それを確認したルナは再び光に包まれ、元の恵夢の姿へと戻った。
「ふぅ、な、何とか倒せました……」
「え、恵夢……」
「あっ、う、宇佐戯さん!これは何て言うかその……」
「すごいな恵夢!」
「え……?」
恵夢が魔法少女に変身して魔物を倒す姿を見て、俺が思ったのは感動だった。
これまで見てきた魔法少女は全員すでに覚悟ガンギマリ状態のやつばっかだったせいか、この状況下で覚悟を決めて魔物に立ち向かう姿を見て感動してしまったのだ。
「あ、あの、気持ち悪かったりしないんですか?」
「え?なんで?」
「い、いやだって魔法少女なんて気持ち悪い化け物だってお父さんが……」
「は?」
なんだそのくそ野郎、自分の娘に向かって気持ち悪い化け物って言ったのか?
やばい、今すぐそいつの顔面を悪趣味になるまでぼこぼこに変形させたくなってきた。
というか恵夢が病院で暮らしてるのってそのくそ父親のせいなんじゃないか?
ぐ、今すぐ殴りに行きたいけど今は抑えて恵夢に俺の思いを伝えないとな……
「安心して恵夢、気持ち悪くなんてないし、化け物でもない」
「……!」
「恵夢はかわいらしい人間だよ」
「……そんなこと言われたの、初めてです……」
そう言って、恵夢は泣き出してしまった。
俺はポケットに入れてあったハンカチを取り出して、恵夢へと渡す。
「いろいろ言いたいことがあるんです、でもまず最初に、ありがとうございます、宇佐戯さん!」
その表情は涙で濡れていたが、とてもいい笑顔だった。
今回の使用魔法紹介
魔法名
怪盗七つ道具
攻撃力C
スピードB
使いやすさA
射程距離C
汎用性A
魔力消費 0
概要
ルナの固有魔法で、不可能魔法の1つ。
七つ道具と言っているが実際は7つ以上あるし、道具を生成しない魔法もある。
マナを体中に纏うことで身のこなしを極限まで軽やかにする魔法が常時発動するほか、ナイフの生成やワイヤー、カモフラージュ、ピッキングなど様々な怪盗らしいことをできるが、意外と攻撃性能が低いことが欠点。
小話
宇佐戯と恵夢では今回の状況への認識がだいぶが違う、宇佐戯からすると周りに人がいなければこの程度余裕で解決できるが、恵夢からすると間違いなく死ぬだろう魔物に強い覚悟で挑んでいるように見える。そのせいでこんな状況になった。
主人公チームのカラバリにかなり困ってるのでポイント乞食します。ポイントください




