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ゼノマギア  作者: ささみ
第2章 なぜ彼は魔法少女であれるのか
39/50

第38話 提案

 セキュリティの強化を終え、一仕事終えたし帰ろうかなと考えていると、研究室にあさみと委員長、あと知らない緑髪の女の子が入ってきた。


「あ、宇佐戯君だ!」

「メールは来てたけど、ほんとにもう退院していたのね」

「おぉ、この人が噂の宇佐戯さんなんですね!」


 そう話しかけられた俺はこの初対面の緑髪が気になっていた。

 この緑髪のやつどっかで見覚えがあるような気が……

 そう頭の中で記憶を遡っていると、最初の魔物の軍勢の時にあさみたちと一緒に来たあの魔法少女のことを思い出した。


 ……あぁ、こいつあのマッハのやつか。

 確か魔法少女アネモネだっただろうか。

 さて、思い出せてすっきりしたし帰るか。

 そう思い、俺は研究室を出ようとした。


「ちょいちょいちょいちょ~い!なに帰ろうとしてるんですかあなた!」

「えぇ……」


 しかし研究室の扉の前にアネモネが来て、通れなくなってしまった。


「せっかく世にも珍しい魔法少女が話しかけてるのにもったいないとか思わないんですか!」

「いや全く」

「美少女が話しかけてるんですよ!?」

「自分で美少女とか言って恥ずかしくないの?」

「うが~!!」


 アネモネが俺の発言に苛立ったようで、両手で頭を掻きまわしている。

 ふむ、どうやらアネモネはボケとツッコみをどちらもいい感じにこなす、おちゃらけタイプなようだ。


「わかったかしら楓、宇佐戯君はこういうタイプよ」

「えぇ、心底理解しました、モテないタイプだってね!」


 しれっとひどいこと言うなこいつ……


「それでこいつは誰なんだ?」

「こいつ言うな!私には風見(かざみ) (かえで)っていう立派な名前があるんだから!」

「あっそう、それで二人とも何しに来たんだ?」

「聞いたくせに私のことは無視!?」


 あさみと委員長にわざわざ魔法少女機関に何しに来たのかを聞いた。

 するとあさみが苦笑いをしながら俺の質問に答える。


「あはは……、私たちは井出さんにお願いがあって来たの」

「おっさんに?」


 あさみがお願いか……

 なんとなく面白い気配を感じ、俺はどんな内容かを聞くことにした。


「どんなお願いなんだ?」

「う~ん……、まぁ宇佐戯君なら言っても大丈夫かな?」

「私は大丈夫だと思うわよ、むしろここで話して手伝ってもらいましょう」

「わたしは話さなくてもいいと思いま~す」


 なんか巻き込まれることになりそうだが、まぁ興味があるのでそのまま聞く。


「実は私たちでライブを開こうと思ってるの」

「……?」

「よくわかってなさそうな顔をしてるわね……、まぁ当たり前だけれど」


 ライブ?

 それってつまり音楽活動がしたいってことか?


「えっとね、私たち魔法少女ってみんなからの募金で成り立ってるでしょ?」

「まぁ……、そうだな」


 魔法少女機関は国立機関ではあるが、活動資金として税金だけでなく国民からの募金などからも使っている。

 魔法少女の戦闘後の後始末やらで、税金だけでは資金がぜんぜん足りないのがその理由なのだが、それとこれがどうつながるんだ?


「それでね、私たちからも募金のお返しができないかな~と思って」

「……あぁ、それでライブか」


 どうやらあさみたちは募金の礼としてライブを見せようとしているらしい。

 正直そのライブができる金があるなら、もっとほかのところに使えよと思わないでもないが、案外ありかもしれない。

 今の日本において魔法少女というものは、一種の娯楽コンテンツとして扱われている節がある。

 アニメのような魔法少女の戦闘が現実で起きているのだから無理もないと思うが、動画投稿サイトでは魔法少女を無断で撮った動画が人気コンテンツになっているらしい。

 俺はそういうのは見ないようにしているのであまり詳しくないが、それを踏まえて考えると確かに魔法少女のライブとなればそれなりの需要があるだろう。


「けどそれって難しくないか?魔法少女は20分ぐらいしか変身できないんだろ?ライブってどれくらい時間かかるんだよ」

「うぐっ」


 俺があさみのライブという案の問題点を指摘するとあさみは大げさに痛いところを突かれた的なリアクションをした。

 魔法少女機関への寄付のお返しという名目でライブをする以上、魔法少女に変身した状態でライブをする必要がある。

 なので変身化の時間という問題は避けては通れないのだが特に神田得てないらしい。


「実はそれを何とか解決できないかなと思って、ここにきて井出さんにお願いしに来たんだよね……」

「それと井出さんは無理でも宇佐戯君ならワンチャンどうにかできるんじゃないかな、という狙いもあったわ」

「いやいや、こんな人が私たちのこの壮大な悩みを解決できるわけないじゃないですか」


 ……いや、ぶっちゃけなんとかできるんだよな。

 変身時間の問題はマナゼリーを飲めば何とでもなるから、ある程度の量を魔法少女機関で作っておけば普通に解決できる。

 けどいいのかなぁ……

 魔法少女に変身中ならマナゼリーを飲んでも大丈夫だっていう理由づけをすれば、マナゼリーに毒があって普通は飲んだら死ぬっていうことに矛盾は生じないと思うけど……

 けど今はマナゼリーの存在が盗まれたっていう、一大事が起きている最中だしなぁ……

 俺は考えた末、結論を出した。


「……条件を飲んでくれるなら何とかしてあげてもいいよ」

「え!ほんとに!」

「まさかとは思ってたけれど本当に何とかなるの?」

「いやいや、まさかそんなわけ……」

「何ならもうそれを解決できるアイテム自体はもう手元にある」

「おぉ、さすが宇佐戯君!」


 こいつはともかくあさみと委員長は信頼できる。

 条件を飲んでくれるなら多分大丈夫だろう。

 俺はそう結論を出し、二人に話をつづけた。


「それで条件なんだが二つある」

「もちろん大丈夫だよ!」

「ちょっと、まだ内容を聞いてないんだからそんなすぐ了承しないでよ」

「そうですよ!こんなあやしい人の条件なんてきっといかがわしいものに決まってます!」


 ……さっきからこいつは俺のことを何だと思っているのだろうか。

 そんなことを思いつつも、俺はこいつを無視して話を続ける。


「まず1つ、これから見せるものの事はここにいる人と、研究室のメンバー以外に話さないこと」

「それなら大丈夫!」

「流石に周りに言いふらすようなことはしないわよ」


 うん、まぁこの条件は二人なら守ってくれるだろう。

 あさみは若干不安な気もするが、まぁここまで言って他人に話すような奴じゃないし大丈夫だ。


「それともう一つ、これはあさみには関係ないことだけど、俺の研究に委員長とそいつにも手伝ってもらう」

「え、私はいいの?」

「あさみのデータは前に取ったからな」

「……あぁ!あの時のやつか!」

「……まぁ、あさみがもうやっていることなら大丈夫かしら」

「え~、私は怪しいし嫌なんですけど……」


 研究というのは魔法の波長を計測ことだ、これを計測することで固有魔法のコピーができるようになる。

 あさみの波長はすでに変身ガジェットを作っているときに計測させてもらったので、今回は委員長とこいつの波長を取りたい。

 ……なぜかあさみの固有魔法は完璧に計測したはずなのにコピーができなかったのだが、さすがに毎回そんなことは起きないだろう。


「それで、この条件が飲めるなら協力するけどどうするんだ?」

「私は問題ないよ!」

「私もまぁ大丈夫よ」

「う~……、まぁお二人が大丈夫だっていうなら、私も条件を飲みますけど……」

「よし、じゃあ決まりだな」


 若干1名中途半端な返事だったような気もするが、まぁいいだろう。

 俺はマナゼリーを使えば変身時間を延長できることを伝えた。


「え、それ本当に大丈夫なのかしら、どう思うアクア?」

『……おそらく本当だと思うぞ』

「そうなの?」

『あぁ、魔法少女の間はマナを体に含んでも大丈夫なようになっている、魔法少女になってから服用することと、マナゼリーを完全に消化してから変身解除することを、忘れなければ問題ないはずだ。』

「へぇ、まぁアクアもそういうなら大丈夫なんでしょうね」


 ……ん?

 いまなんかアクアのセリフに違和感があったような……


「キリンはどう思う?」

『問題ないと思うよ!』

「ウィンディ、本当に大丈夫だと思う?」

『そうね、私は詳しくないけれど、アクアさんが大丈夫だというのなら大丈夫なんじゃないかしら?』

「うわなんか出てきた……」


 金と黒が混ざった馬っぽいような竜っぽいような微妙な見た目のやつと、白い体に一部黒が混ざった虎っぽい見た目の謎生物、おそらくあさみと風見の妖精だろう。

 俺はさっきまで考えていたことをさっぱり忘れて、いきなり出てきた妖精のことが気になっていた。


「アクア以外の妖精を見るのは初めてだな……」

「あれ、そうだっけ?」

『あさみが毎回僕を置いていくからまだ会ったことないんだよ!』

「あ……、ごめんねキリン……」


 あさみとは何度もあっているのに今回が初対面ということは、かなりの頻度であさみに忘れられてるな……


「っと、今は妖精のことはいいか、それでマナゼリーを使うのか?」

「うん!」

「今から試してみたいから、そのマナゼリーを渡してくれないかしら?」

「わかった、これがそのマナゼリーだよ」


 俺は委員長に言われて3つマナゼリーを渡す。

 すると委員長はなんだかいぶかしげな顔をした。


「これMinゼリーのパックよね……」

「うん、その中にマナゼリーが入ってるよ」

「なんでそんな間違えて飲みそうなものの中に入れてるのよ……」


 そんな文句を言いつつ委員長はマナゼリーをそれぞれに渡し、早速使ってみるようだ。


「「「変身!」」」

『Are you ready? Change→Himetsubaki!!!』

『Are you ready? Change→Viora!!!』

『Are you ready? Change→Anemone!!!』


 体が光だし、姿が魔法少女のものへと変わる。

 ピンクと青と緑の魔法少女、なんというかアニメでよく見るカラーリングだ。


「さて、それじゃあさっそく飲むよ!」

「えぇ」

「うぅ、ほんとに大丈夫なんだよね?」


 3人が一斉にマナゼリーを勢いよく飲む。


「あ、桃味がする!」

「案外おいしいわね」

「よく味わう余裕あるよね二人とも……」


 3人がマナゼリーの味の感想について話し合っている。

 これで俺がマナゼリーを使うとき同様にマナが増えていれば一安心だけど……


「どうアクア?マナは増えてるかしら?」

『うむ、どうやら宇佐戯の言う通りのようだ、マナゼリーのマナは扱えないだろうが、消化された分については自分のマナとして扱えると思うぞ』

「やった!じゃあこれでライブもできるね!」

「えぇ、そうみたいね」

「ぐ、こいつを褒めるのは嫌だけど褒めざる負えない……」


 どうやらちゃんとマナが増えているようだ。

 ならこれで一安心だな。


「じゃあ後はライブを開催して大丈夫か井出さんに聞かないとね!」

「そうね、井出さんは今どこにいるのかしら?」

「あぁ、おっさんなら今確かトイレに行ってるぞ」

「トイレだね!じゃぁさっそく行ってくる!」

「「「え?」」」


 あさみが全速力で研究室を出ていった。

 おそらくトイレのほうへ向かっているのだろう。


「ちょ!?待ちなさいあさみ!」

「それはだめでしょあさみ!?」


 そういって、委員長と風見があさみの後を追いかけて研究室を出ていった。

 そしてその数秒後、おっさんの悲鳴が聞こえてきたのは言うまでもない。

小話

この後あさみたちはライブの許可を得たが、その先に厳しいダンスレッスンやボイストレーニングが待っているということに委員長しか気が付いていない。


魔法少女に取るライブが決まったのでポイント乞食します。ポイントください。

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