第29話 軍勢
アニメの鑑賞会兼会議から1か月以上が経過したが、あれからあの女が現れることはなかった。
あさみたちが遭遇したという話もなく。
しいて言えばなぜか魔物の発生頻度が前までの1日に1体程度に戻ったくらいしか起こらなかった。
そのせいもあり、俺が変身する機会も10回ほどで済み、下がった身長は1cmだけであった。
まさしく平穏な日常ともいうべきものだっただろう。
ただその平穏は急に終わった。
「おい宇佐戯!やべぇぞ!」
「んえ?なに、何が起きたの?」
俺がリビングのソファーでくつろいでいると、そう大声を出しながら思愛が入ってきた。
「外がパニック映画みたいになってる!」
「は?」
どゆこと?
そう思っていると、思愛が俺の手を無理やり引っ張って、外へと連れ出された。
『『『GYA!GYA!GYA!』』』
「えぇ……」
「な?パニック映画みたいになってるだろ?」
そこには数十体の魔物の姿があった。
魔物の軍勢が道路を歩いている。
その光景を見て、俺はこれが現実であるということに軽く引いた。
「これ現実だよね?なんでこんなことになってるの?」
「知らねぇよ!とりあえずあの魔物の大軍を何とかするぞ!」
「2人でできるの?いや、やるしかないんだけどさ?」
思愛が当然のように無茶なことを言ってきた。
いや、まぁあれを放置したらどれだけ被害が出るかわからんしやらなきゃなんだけどね?
あれ多分30体ぐらいいるよな?
……いけるか?
「ほら、さっさと変身するぞ!」
「マジか……」
俺はマナゼリーを飲んだ後、ヘッドホンを首にかけ、ディスクを入れる。
そして俺と思愛は声をそろえて叫ぶ。
「「変身!」」
『Are you ready? Change→XeA THE First Appearance!!!』
『Are you ready? Change→Sintrier!!!』
「生きて倒し切るぞ!」
「死んでも倒し切ってやる!」
俺とシントリエが正反対の前口上をしながら魔物へと走り出す。
「こんだけ魔物がいるなら雑に魔法を放ても当たるだろ!」
「よし!私もそれに乗った!」
俺とシントリエはファイアボールをグミ打ちする。
マナの消費は激しくなるが、こっちにはマナゼリーがあるし、シントリエはそもそもマナを大量に持っているので問題ないだろう。
『『『GYAA!?』』』
ファイアボールが命中した何体かがどろどろと消えていく。
しかし、それでも多くの魔物が無事だ。
「これ以上のグミ打ちは無駄になるだけだな」
「じゃあこっからは肉弾戦だな!」
シントリエが盛大に魔物の大軍へと飛び蹴りしていく。
俺もそれに続くように刀を生み出して魔物に斬りかかる。
「ぐ、やっぱりこれを捌き切るのはきついぞ!」
「無茶でもやるのが魔法少女だよ!」
「なんかめっちゃブラックなこと言ってない!?」
いたるところから魔物の攻撃が飛んできており、それの対処に文句を言うとシントリエがめちゃくちゃなことを言ってきた。
でも実際その無茶を通さないといけないんだよなぁ……
「これは……長期戦をするしかないか……」
「ほかの魔法少女もすぐ来るだろうし、私たちはそれまで何とか粘るぞ!」
「あぁ」
俺はシントリエの言う通りに、あさみたちが来るまで粘ることにした。
シントリエと委員長が会ってしまうことにはなるが、まぁしょうがないだろう。
俺とシントリエが魔物の攻撃を躱したり弾いたりしてしのぐ、そしてしばらくの時間が経ち、誰かが走ってくる音が聞こえた。
やっとあさみたちが来たのか、そう思って足音が下方向を見る。
すると……
「蔓延る魔物に熱血パンチ!魔法少女ヒメツバキ!」
「凍てつく氷でかっちこち!魔法少女ビオラ!」
「通り過ぎるはまさしくマッハ!魔法少女アネモネ!」
「「「さぁ私たち3人が相手に……?」」」
「「……」」
一体俺たちは何を見せられているのだろうか?
なんか変なポーズで登場するし、なんか知らない魔法少女が一人増えてるし、普通に意味が分からん?
俺たち二人が困惑していると、あの3人がしゃべりだした。
「ゼアちゃんたちがいるから、『3人が相手に』じゃなくて『5人が相手に』にしたほうがいいのかな?」
「いや、そもそもなんであの二人が仲良く戦ってるのよ、宇佐戯君が見たときは争ってたはずよね?」
「あ、また宇佐戯って人のことを話題にした!私の知らない人のことで会話しないでよ!」
……何しに来たんだろうかこの3人は?
「邪魔するなら帰ってくれよ」
「なっ!?帰るわけないでしょシントリエ!」
「そうよ、私たちは魔物を倒さないといけないんだから」
「だったら早く手伝ってくれよ」
「……そうね、行くわよ二人とも!」
「「うん!」」
そういってあさみたちが俺たちに加勢をしてくれた。
その結果、徐々にだが魔物を削れるようになり、かなりの時間はかかったものの、何とか魔物をすべて倒し切ることができた。
「やっと全部倒せたよ~」
「そうね、最近魔物は減ってたはずなのに、なんで急にこんなに表れたのかしら?」
「……私としてはあの二人のほうが気になるんだけど?今にも逃げ出しそうだし」
「「げっ」」
魔物を倒し切ったのであさみたちに気づかれる前にさっさと逃げる気だったのだがどうやら気が付かれてしまったらしい。
……しょうがない、こうなったら……!
「二手になって逃げるぞ!」
「よし!私は右だな!」
「おけ!」
「あっ!ちょ……、行っちゃった……」
「まぁゼアちゃんもシントリエも何もかも不明なミステリアス系魔法少女だし、しょうがないんじゃない?」
「ゼアはともかく、シントリエの素性はわかってるから、その表現は変なんじゃないかしら……?」
* * *
シントリエと別れて逃げた俺はしばらく飛行魔法で逃げまわった後、変身解除をした。
「ふぅ、ここまでくれば問題ないだろ」
思愛もちゃんと逃げられただろうか……
そんな心配をしつつ家への帰り道を歩いていく。
するとすぐ近くでさっき山ほど聞いた、聞きたくもないあの声が鳴った。
『GYAAAA!!!』
「マジで言ってる?」
俺はその音がしたほうへと走りつつ、あることを確認する。
「ぐ、そんな気はしてたけどマジか……」
ヘッドホンの右側面の円上部にはランプをつけており、そのランプが赤く点滅している。
要は充電切れだ。
「さっきの長時間の魔物との戦闘に、さらに飛行魔法での逃走でさすがに使いすぎたか……」
普段なら替えのバッテリーに交換すればいいのだが、今回は思愛から引っ張られて家を出たせいで持ってきていない。
となるとこの魔物相手にヘッドホンは使うことができない。
「はぁ、今回はゼアファーストじゃなくて、ゼアオリジンで戦わなきゃダメか……」
ゼアオリジンはあの服まで真っ白なゼアのことだ。
ヘッドホンが使えないのでこれに変身するしかない。
そんなことを考えていると魔物が見えてきた。
「あそこか......ん?」
あれは……赤ちゃん!?
なんであんなところに!?
いや、今はそんなことを考えてる暇はない!
早く助けないと!
こうして物語はプロローグへとつながった。
小話
ヘッドホン型変身ガジェットはフル稼働で2時間ほど持つが、今回はそれ以上の時間魔物と戦っていたため充電切れになった。
ここでプロローグにつながる都合上若干プロローグに修正が入りました。
思ったよりもマナカプセルの登場が遅くなっってしまったせいで……
プロローグに話がつながったのでポイント乞食します。ポイントください。




