第23話 覚悟
おっさんに呼ばせたタクシーの中にて
「え、俺の車置いてきたの?」
「俺に運転しろと?」
「悪い、そりゃ無理だわな」
俺は運転免許なんてまだ持っていない。
おっさんが気絶していた以上置いていくしかなかった。
まぁ、気絶してたやつが悪いだろと俺は思っている。
「しかしまさかあそこにシントリエがいたとはな……」
「おっさんを連れて何とか逃げ切った俺をほめてくださいね」
「おぉ、よくやってくれたな宇佐戯」
「できれば金でお願いします」
「いきなりがめついな!?」
そんなことを話しながら、タクシーは町中を進んでいった。
* * *
タクシーで家まで送り届けてもらった俺は、風呂の中で考えに耽っていた。
「シントリエのあの独善は何とかしたいよなぁ......」
正直言ってあの思想がかなうことはまずないだろう。
マナゼリーはそんなに便利なものじゃないのだから。
でも放置していいものでもない。
あのままだといつか壊れてしまう気がするから。
「理想がかなわないと知った人間がどんな行動を起こすのか、俺は知らないからな......」
人は先の見えない道を走って、先が崖であることを知っても、道を引き返すことはできない。
できるのはそのままそこで立ち止まるか、先に道があることを信じて崖から飛ぶことだけ。
「だから俺はシントリエに翼を生やしたい」
落ちてしまわぬように、崖の先にある道に着地できるように。
俺はシントリエを助けたいと思った。
「となればどうやって助ければいい?」
彼女の行動原理は魔法少女が苦しまないようにすることだ。
そのために魔法少女を生み出す妖精を殺してそもそも魔法少女が生まれないようにしている。
つまり魔法少女が生まれる根源をつぶそうとしているのだろう。
「……だったら俺は魔法少女が生まれなくてはいけない原因をつぶせばいいのか」
魔法少女が生まれなくてはいけない原因、つまりは魔物の根絶だ。
それをできれば彼女の魔法少女が苦しまないようにっするという願いもかなえられる。
「となれば後は彼女に信じさせるだけか」
俺なら魔物の根絶ができるとシントリエに思わせる、それだけの力を彼女に見せればいい。
それができれば彼女を助けられる。
となると必要になるのはあの装置の完成と......
「俺の覚悟だけだ」
そう覚悟だ。
これまで俺が魔法少女として活動していたのは知的好奇心によるものだった。
つまり魔法少女として魔物と戦う覚悟は全くしていなかった。
けどこれからはそうはいかない。
魔物の根絶を目指す以上、そんな生半可な意思ではだめだ。
魔法少女としての覚悟、それが俺には必要だ。
「だから俺は改めて魔法少女になる覚悟をしないといけない」
これまでの俺は魔法少女になれただけ、これからは魔法少女になる必要がある。
俺にそれができる覚悟があるかを考え、そして風呂から上がった。
* * *
風呂から上がった俺はそばにあったMinゼリーを飲んだ後、研究室に入りとある装置を頭に付け、口を開いた。
「変身」
『Are you ready? ザザッ、ザーーー』
いつも通り体が光だし、真っ白な魔法少女の姿へと変わる。
「……変身するたびに思うんだけどなんでこんなに白いんだ?」
あさみはピンク色のかわいらしい感じの見た目で、委員長は青色でなんかかっこよさも感じる見た目だ。
それに対し俺の魔法少女姿は全身白一色、服も白ければ肌も白く、髪も白い、唯一目だけはグレーっぽい色だが、ここも白かったら、白すぎて怖い見た目になる気がする。
「まぁ今は関係ないか......」
気にはなるが気にしないことにし、俺は頭の装置を外し、結果を見る。
俺が頭につけていた装置は脳波を測ることができるもので、それを使って御影さんの資料にあった脳波のようなものを測定したのだ。
「う~ん?資料にあった変身の波長と若干違うような?」
大部分は同じだ、ただ一部の波長が変わっている。
この資料に載っているのはシントリエの変身の波長だ。
となると俺の変身とシントリエの変身で異なる部分、おそらく見た目にかかわる部分が違うのだろう。
「……一応もう一回変身するときの波長を測るか」
俺は一度変身解除し、マナゼリーを飲む、そしてもう一度装置をかぶり変身した。
「……え?」
俺は測りなおした結果を見て驚いてしまった。
なぜなら波長が若干違っていたからだ。
御影さんの資料によれば波長は毎回同じものになるはずだ。
だが俺の場合は変身するごとに波長が変わっている。
「俺の場合は何かが違う……?」
俺の変身はマナゼリーを使うことによるものだ。
だから何かが違うのかもしれない。
「……いや待てよ?」
ここで注目するべきなのは、なぜ波長が違うのかじゃなくて、波長が違うのに何で同じ結果が得られているのかじゃないか?
波長が違うなら結果も変わるに決まっている。
なのに俺は毎回同じ姿に変身している。
「……まさかエラー対策がされているのか?」
魔法少女に変身するには何かシステムのようなものを使っているのかもしれない。
そしてそのシステムがエラーを検出した場合に、今の俺の姿になるようにプログラムされているんじゃないか?
「うへぇ……もう意味わかんないなこれ」
大量のサンプルがあるのならまだしも今の状態で変身の魔法を完全に解析するのは無理そうだ。
委員長とあさみに協力を得ても圧倒的にサンプルが足りない。
「まぁ、あの装置には変身の魔法はそこまで関係ないしいいんだけどさ……」
俺は若干気を落としながら、あの装置の作成を始めていった。
小話
宇佐戯が魔法少女になる覚悟が必要だと思ったのは、委員長が肺を貫通してでも妖精を守ったというところも大きい。
変身の謎が現れたのでポイント乞食します。ポイントください。




