第22話 親友
「おら!」
「ぐっ」
アクアスピアによる猛攻をこっちもアクアスピアを使うことにより防いでいく。
アクアスピアを武器として使う……
前のシントリエ戦の後に念のため覚えた技術だが、やっておいて正解だった。
「確かに前よりは強くなってる、だがまだまだ私のほうが強い!」
「まぁそうだよな!」
でも所詮それは付け焼刃に過ぎず、シントリエに勝てるかといえば当然そんなわけはなかった。
というかそもそも今の段階でシントリエと戦うなんて想定はしていない。
戦う予定はあったがそれはあの装置ができてからのつもりだった。
「ぐぅ……」
「ほら、さっさと諦めなよ」
今何とか均衡を保てているのはシントリエが手加減しているからだ。
俺にマナゼリーの作成方法を聞く必要があるから俺を殺すわけにはいかない、だから何とかこの状態になっている。
けどその均衡が説かれるのも時間の問題だ。
だからその前に俺は何とか勝利する必要がある。
「まだやる気かよ、いい加減飽きてきたぞ」
「だったら見逃してほしいんだけどねぇ……」
「そりゃ無理な相談だな」
俺の勝利条件はおっさんを連れてここから逃げきること。
というかそれ以外の方法でか勝つことは不可能だろう。
だがおっさんがシントリエの後ろにいることがそれを困難にしている。
シントリエの横を通り過ぎておっさんの元まで行くのがとんでもなく難しいのだ。
「エアバレット!」
「そんな見え見えの攻撃が通じるわけねぇだろ!」
「ですよね~」
俺の攻撃はすべてたやすく弾かれる。
だがグミ撃ちを仕掛けることはできない。
なぜならおっさんに流れ弾が当たる可能性が高いし、今回はシントリエもグミ撃ちを被弾覚悟で特攻する可能性が高いからだ。
「こうなるなら無理やりにでもあさみを連れてくるんだったな……」
「あさみ?あぁ、あいつか、確かにあいつと今戦うのは危険すぎるからな」
あさみはシントリエに対して、今なら単身で勝つことも不可能ではないだろう。
ここにシントリエがいることを思いついていれば無理やり連れてきていたんだが……
「そらよ!」
「!?くそ!」
「私がアクアスピアしか使わないとでも思ってたか?」
シントリエの放ったエアバレットによって皮膚が軽く引き裂かれる。
くそ、このままだと間違いなく押し負ける。
どうする、どうすればこの状況から打破できる?
俺はアクアスピアを何とか弾き、エアバレットに何度も被弾しながら頭を回し続けた。
その時一つの案が思いつく。
……そうだ、あれをすれば何とかなるんじゃないか?
倫理的にちょっとあれな作戦かもしれないが、シントリエには有効な気がする。
そうと決まればまずは……
「ファイアボール!」
「はぁ?なんで今それを......!?」
俺はファイアボールを地面に向けて放ち、ファイアボールが爆発したことによって中にはの土が舞い、一瞬の間だが俺の姿をシントリエから見えなくする。
「ちっ、面倒な、だがこの程度で私に勝てるとでも!」
シントリエは見失った俺の攻撃を警戒する、だが攻撃が来ることはない。
「……は?」
土煙が消え、周りが見えるようになったがそこに俺の姿はなかった。
「……まさか逃げたのか?」
今中庭にいるのは立ち尽くすシントリエと放置されたおっさんだけだった。
* * *
「ふぅ、何とか逃げられたな……」
土煙によって姿を隠した俺は、中庭から離れ、資料室の奥へと隠れていた。
「ここまでは作戦通り、あとはこれがうまくいくかどうかだな......」
俺はスマホを取り出しながらそう言った。
* * *
あの白い魔法少女が消えてから20分が経過した。
しかし、あいつが戻ってくる様子はない。
「本当に逃げたのか?」
そうだとしたらこれ以上マナを無駄遣いする必要はない。
他の魔法少女よりもマナの量は圧倒的に多いとはいえ、変身を解除して後のために温存すべきだろう。
だが私の勘が告げているのだ。
あいつは仲間を見捨てて逃げるようなタイプではないと。
だからあいつは再びこの中庭に来る……はずだ。
「……ようやくか」
そのときついにあいつが姿を再び現した。
しかし真正面から堂々と来るとはどういうつもりだ?
「待たせたかな?」
「あぁ、だいぶ待ったぞ、一体どういうつもりだ?」
私はアクアスピアを構えながらそう言った。
だが、あいつはどうも構えるようなそぶりが見えない。
私が怪訝げな顔をしているとあいつが口を開く。
「ちょっと待ってくれ、戦う前に聞かせたいものがあってね」
「はぁ?聞かせたいもの?」
本当に何を言っているのだろうこいつは……
「マジでなんなんだお前は……」
思わずそう言ってしまうが、今回はしょうがないと思う。
いきなり敵からこんなことを言われれば誰だってこんな反応をするだろう。
「何、ちょっと聞いてくれれば問題ないからさ、聞いてくれたらすぐに再開するよ」
「はぁ……、じゃあちょっとだけ聞いてやるから早くしろ」
そういって早くするように急かした。
にしても一体何を聞かせるつもりなんだろうか……
「じゃあ聞かせるぞ、ちゃんと準備しろよ?」
「準備?聞くのに準備なんて必要......」
『もしもし、思愛ちゃん?』
「……!?」
その時私の頭の中はあまりの衝撃によって真っ白になった。
だってそのスマホから聞こえた声は、少し大人びていたが間違いなくかつて私の大切な親友だった千里ちゃんのこえだったのだから。
「しまった!?……?」
私の意識が千尋ちゃんの声に行っている間に気が付けばあいつが私の前にいた。
私は攻撃が来ると思い、反射的にバリアを張る。
しかしあいつは私に攻撃することなく横を通り過ぎていった。
「そういうことか!?」
これなでの行動はすべて罠だ!
私の意識をそらすための囮!
私が千尋ちゃんの声に油断した隙の攻撃をするというふりをすることで、私からあのおっさんを取り返す隙を生み出すためのトラップ!
完全にやられてしまった!
気が付けばあいつはおっさんを背負い、出口へと走っている。
完全に出遅れた。
今から追っても追いつくことは不可能だろう。
「くそ!」
完全に敗北した。
私が過去を振り切れていなかったばっかりに……
千里ちゃんという存在に私の心にまだ引っかかっていたせいで負けてしまった。
「次はこうはいかないぞ......!」
千里ちゃんに......、過去によって負けることはもうない!
私はもう過去を捨てたのだから……!
* * *
「ありがとうございました御影さん」
『いえ、大丈夫ですよ』
俺はおっさんを抱えて森の中を走りながら、協力してくれた御影さんに礼を言った。
『でも驚いたわ、いきなり宇佐戯君からこの番号に電話してほしいってメールが来たから電話したら、いきなり女の子の声で助けてほしいって言われるんですもの』
「あはは……」
御影さんが電話してくれた時、俺は慌てていたせいで変身を解除していなかったのだ。
冷静になってみるとあれはまずかっただろう。
「でも俺が宇佐戯だってことを信じてくれて助かりました、よく信じられましたよね?」
『なんというか宇佐戯君なら魔法少女になってても不思議じゃないなって、あの時は思ったのよ。』
「あはは、なんですかそれ」
俺なら魔法少女になってても不思議じゃないって、いくらなんでもそれはおかしいだろう。
「でもまぁ本当に感謝してますよ、御影さんの協力がなかったら間違いなく負けてましたから」
『感謝してるのは私もよ、思愛ちゃんが魔法少女と敵対した理由を知れたんですもの』
「じゃあお互い様ですね!」
『えぇ、そうね!』
御影さんには協力してもらうときに、シントリエが言っていた魔法少女と敵対する理由の話を教えていた。
そのこともあって今回協力してくれたのだろう。
『でもこれからあなたは大丈夫なの?思愛ちゃんはあなたを狙う気満々だと思うわよ?』
「それについては考えがあるんです、あの研究資料のおかげでなんとかできるかもしれません」
『そうなの?ならよかったわ』
あの研究資料さえあればおそらくあの装置が作れるはずだ。
それさえあればシントリエに勝つことも不可能じゃない。
そんなことを話していると、森の出口が見えてきた。
「あ、そろそろ森から出ることができそうです」
『よかったわ、それじゃあ私もそろそろ研究したいこともあるし切るわね?』
「はい、協力してくれてありがとうございました」
『いいのよ、また何かあったら電話して頂戴ね、必ず力になるから』
その言葉を最後に電話が切れた。
次に電話するのは、おそらくシントリエを倒すことができた後だろう。
「さて、俺も変身解除っと......」
おなかに力を入れ消化を早める。
すると体が光だし、元の姿へと戻った。
「さて......、起きろおっさん!」
「ふげ!?」
おっさんの頭を思いっきり殴り、無理やり起こす。
するとおっさんは頭をさすりながら立ち上がった。
「あ、あぁ?どこだここ、というかなにがあったんだ?」
「いいからスマホでタクシー呼んでくれ、さっさと帰るぞ」
「えぇ?」
おっさんは困惑顔をしながらタクシーを呼ぶ。
おっさんが正気になり、慌てだすのはその数分後だった。
小話
御影さんが協力してくれたのは思愛ちゃんがが間違った正義のほうに行っていると思ったから、正しい正義だと思っていたら協力してくれなかった。
宇佐戯が身バレしまくってるのでポイント乞食します。ポイントください。




