第4話:「コストカットの代償(格ゲー化)」
▲ 始まりの町・宿屋の一室(朝)
ヤメタロウ(伊間柄 八女太郎)が、前世の「事業部予算見直し会議」のような厳しい顔で、テーブルの上に大量の「小瓶(MP回復薬)」を整然と並べている。
その目の前には、無表情のまま正座しているピンク髪の魔導士・メル。
部屋の隅の影には、ヤメタロウの半径2メートル強制固定バグにより、床と一体化するようにじっと見つめている初期NPC・ココ。
ヤメタロウ:
「いいかメル。前回の『バカンスエリア・全裸デスゲーム』の原因を我がパーティーで徹底的に監査(ログ解析)した結果、すべての根本原因はお前が『ダマンテ』を撃ちまくることにあると判明した」
メル:
「私は魔導士です。敵が出たらダマンテ。それが私のデフォルトのAIルーチンです」(真顔・淡々)
ヤメタロウ:
「そのクソコードのせいで、2分の1の衣服崩壊バグがセナやノア、ひいては関係ないギャルのリカちんにまで伝播してコンプライアンスが崩壊してんだよ! というわけで、前世の中間管理職としてのリスクヘッジのノウハウをフル活用し、本日より我がパーティーは『コストカット(経費削減)』を断行する」
ヤメタロウは、テーブルの上のMP回復薬をすべて自分のバッグにガシャガシャと回収していく。
ヤメタロウ:
「本日より、お前へのMP回復薬の『リソース分配』をすべて凍結(凍結)する。これでMPが枯渇すれば、お前はダマンテを撃てない。つまり、確率1/2の衣服崩壊バグも根源から絶たれる。完璧なリスクマネジメントだ!」
メル:
「……MPの供給ストップを確認。これより、メルは『代替リソース』による戦闘モードへと移行します」
ヤメタロウ:
「代替? まぁ、MP消費の少ない『ファイアボール』とかなら業務の範囲内(許可)だよ。よし、出発だ!」
▲ 始まりの町の外・薄暗い洞窟エリア(中)
今日のノルマは、洞窟に住み着いた「ゴブリン」の討伐。
ヤメタロウたちの前に、ニヤニヤと下卑た笑いを浮かべたゴブリンが3匹現れる。
セナ:
「ヤメタロウ様、敵です! 私が盾に――あ、いえ、10メートルの距離を保ちつつ、周囲を高速周回ガードします!」(ガチャガチャと猛スピードでヤメタロウの周りをルンバのように爆走する青髪女騎士)
リカちん:
「ウケる、セナちゃんマジでただの暴走ルンバじゃん☆ ヤメタロウ、今日も残業がんばろ〜☆」
ヤメタロウ:
「うるさい、走るな目が回る! よし、メル、前衛のゴブリンに低コストな魔法を……って、おい、何だその構えは」
ヤメタロウが隣を見ると、メルは呪文を唱えるどころか、愛用の「木の杖」を完全に野球のバットのように両手でガチ握りしめ、右肩に担いで低く身を構えていた。
その瞳には、魔法の輝きではなく、前世の修羅場のエンジニアのような暗い闘志が宿っている。
ヤメタロウ:
「メル……? なんで打席に立とうとしてるの? 魔法は?」
メル:
「MPが無い。よって、物理で解決します」
メルはバッと地面を蹴ると、魔導士とは思えない恐ろしい踏み込みで、先頭のゴブリンの懐へ突っ込んでいく。
メル:
「――極大物理・『杖ダマンテ』」
ドガァァァァァン!!!(鈍い、臨場感あふれる超打撃音)
メルがフルスイングした木の杖が、ゴブリンの脳天を直撃。ゴブリンは「ぎゃっ」と声を上げる暇もなく、まるで格闘ゲームでK.O.されたかのように、綺麗な放物線を描いて洞窟の壁に叩きつけられ、ポリゴンとなって消滅した。
ヤメタロウ:
「物理かよォォォォォ!!! しかもめちゃくちゃ強いしエグい!!」
メルは流れるようなモーションで残りの2匹のゴブリンの足を払い、空中に浮いたところへ杖の滅多打ち格ゲーコンボを叩き込んでいく。
「オラァ!」という掛け声すらない。無表情・棒読みのまま、ただ淡々と、肉体を物理的にデバッグ(破壊)していくピンク髪の魔導士。
メル:
「定時退社を阻むエラー(魔物)は、すべて殴打します」
ヤメタロウ:
「怖えよ!! 頼むから普通に『ダマンテ』って唱えてた頃の可愛いお前を戻してくれ!!」
血まみれ(の演出)になった杖を肩に担ぎ、冷たい目でヤメタロウを振り返るメル。
その瞬間、ヤメタロウの背後で、一切動けないバグのせいで岩のように佇んでいた白髪の聖女・ノアの頭上から、システムメッセージが鳴り響く。
【 警告:戦闘の余波(風圧)により、衣服崩壊バグの1/2が適用されました 】
【 対象:ノア 】
ノア:
「……あ……また、私だけ……服が……(インナーだけになって空中浮遊したままフリーズ)」
ヤメタロウ:
「魔法使ってないのに服が破れるってどういう判定だよこのクソゲーがァァァーーー!!」




