第3話:「進路妨害(オブジェクト・バグ)」
▲ 始まりの町・北の街道(のどかな大森林の入り口)
ヤメタロウ(伊間柄 八女太郎)が、前世のプロジェクト進行表(タスク管理)のような画面を空中に展開しながら歩いている。
そのすぐ真後ろには、ヤメタロウの影を健気に踏みながらご機嫌に付いてくる初期NPC・ココ。
さらにその横には、ヤメタロウの周囲10メートルを猛スピードで周回ガードしている青髪の女騎士・セナ。
そして、そのセナの周回軌道に巻き込まれない位置でスマホをいじるギャル・リカちん。
リカちん:
「ねぇヤメタロウ、セナちゃんマジでただの爆走ルンバじゃん☆ ウチ、動画撮ってSNSにあげていい?」
ヤメタロウ:
「やめろ、異世界のパケット通信がどうなってんのか怖いわ。……まぁいい。セナの10メートル周回バグも、メルのダマンテを地面にアースする処理も、すべて現状の『ワークアラウンド(代替回避策)』で制御できている。前世のデスマーチに比べれば、今のところ進捗は極めて順調だ」
ヤメタロウが振り返ると、ピンク髪の魔導士・メルが、MP回復薬を全没収されたせいで、魔導士の杖を野球のバットのように両手でガチ握りしめ、無表情で素振りをしていた。
「ブンッ……ブンッ……」と恐ろしい風切り音が響く。
ヤメタロウ:
「メル、お前その物死物騒な素振りをやめろ。魔法使えないからってフィジカルで解決しようとするな」
メル:
「……定時退社を阻むエラー(魔物)は、物理ダマンテ(杖)で撲殺します」(真顔・棒読み)
ヤメタロウ:
「思考ルーチンが脳筋のまま変わってねえな……。まぁ、次の『バグNPC』の座標はこの森の奥だ。サクッと回収してログアウト画面を開くぞ」
▲ 大森林の奥(木々が鬱蒼と生い茂るエリア)
ヤメタロウたちが森の奥へ進むと、前方にものすごい「砂煙」が舞い、地面が激しく揺れているのが見える。
そこには、銀色に光る美しい髪を持った聖女――ノアの姿があった。
しかし、彼女の様子が明らかにおかしい。
ノア:
「――我が祈りよ、迷える魂に癒やしを……!」(神聖なエフェクト)
ノアは見た目100点満点の超絶美少女なのだが、オブジェクトの当たり判定バグ(座標固定バグ)のせいで、目の前にある一本の巨大な大木に向かって、時速50キロの猛スピードで足だけを高速回転させ、壁走りのように走り続けている。
大木に足が引っかかって前に進めないため、その場で凄まじい砂煙が上がっている。
ヤメタロウ:
「おいおいおい!! なんだあの白髪の美少女! 完全に木に向かって無限に走り続けてるバグ(スタック)にハマってんじゃねえか!!」
リカちん:
「ウケる! あの白髪ちゃん、バグり散らかしてて草超えて大森林なんだけど〜!」
ノアはヤメタロウたちに気づき、大木に頭をボカボカとぶつけ、激しい砂煙を上げながら、大真面目な顔でこちらを振り返る。
ノア:
「……ハァ……ハァ……! 勇者様、私は神に仕える聖女、ノアです。……バグのせいで……この木から……1歩も離れられないのです……! ダメージは……一切受けない無敵モードなのですが……移動が……できません……!」(ドヤ顔・真顔・足は時速50キロで回転中)
ヤメタロウ:
「無敵だけど動けないって、ただの神聖なオブジェクトじゃねえか!!! メル、あの木を物理ダマンテで――いや待て、そんなゴリラみたいな手段は使わん。前世のSEとして、こういう『プログラムの無限ループ(スタックバグ)』の止め方は体に染み付いてるんだよ!!」
ヤメタロウは全く慌てず、空中にチート画面を展開。高速でキー(コマンド)を叩く!
ヤメタロウ:
「ノアの進行方向の判定コードを開く。……なるほど、木の『衝突判定』と、ノアの『移動命令』が干渉して無限ループを起こしてるな。だったら、ノアの足の回転速度(時速50キロ)の数値を一時的にゼロに上書き(タスクキル)し、彼女の『無敵判定の範囲』を一瞬だけ広げて木を透過させる!!」
ヤメタロウが空中のエンターキーを「ッターン!」と叩く!
パシィィィン、と世界に綺麗な電子音が響く。
ノアの足の爆速回転がピタッと止まり、完全無敵化のすり抜け効果によって、大木の向こう側へとフワッと綺麗にワープして着地した!
ノア:
「は、激しいスタックから解放されました……!? 勇者様、私のバグを力技ではなく、システム的に解消するなんて……素晴らしいデバッグ能力です!」(目を輝かせる)
ヤメタロウ:
「ふぅ、前世でフリーズしたExcelをタスクマネージャーで強制終了させてた経験が活きたな。よし、これでノアの救出は完了――」
【 警告:無敵判定の強制拡張により、衣服崩壊バグの1/2が適用されました 】
【 対象:ノア 】
ノア:
「……あ……また、私だけ服が……(インナーだけになって空中浮遊したままフリーズ)」
ヤメタロウ:
「なんで無敵化を広げたら服が破れんだよ!! どんなクソ仕様のトレードオフ(等価交換)だよこれ!!」
リカちん:
「白髪ちゃんのバカンス仕様マジ映え〜☆ ヤメタロウ、デバッグのセンス神だけどオチも神じゃん☆」
ヤメタロウ:
「うるさい!! 頼むからこの世界のデベロッパー(開発者)を連れてこいーーー!!」




