第2話:「定時退社を阻む、極大魔術」
▲ 始まりの町・冒険者ギルド(中)
賑やかなギルドの片隅。ヤメタロウ(伊間柄 八女太郎)が、前世の「新規プロジェクトのチーム編成」のような真剣な目で、2枚の加入申請書を見つめている。
その足元には、1話でデバッグされた金髪初期NPC・ココが、ヤメタロウの影を健気に踏みながら「ありがとう、勇者様!」とご機嫌に待機している。
ヤメタロウ:
「よし、ココの強制ストーカーフラグは俺の『影』に転送処理したから実害はゼロ。次は、新しく配属されてくる部下の面接だな。……よし、入ってくれ」
バタン!と勢いよくドアが開き、ピンク髪の魔導士メルと、青髪の女騎士セナが入ってくる。
セナ:
「ヤメタロウ様! 私は貴方の『絶対の盾』! 24時間365日、ピッタリと張り付き警護します!」(キキィィィンと剣を抜いて目がバキバキの忠誠心暴走AI)
ヤメタロウ:
「おいおい、目が完全にブラック企業の社訓を暗唱させられてる時のそれだぞ。……まぁいい、お前たちの『バグった行動AI』は、ギルドの裏帳簿をハッキングしてすでに把握してる。セナ、お前は戦闘中、俺の半径10メートル以内を高速周回するバグ持ちだな?」
セナ:
「はっ! 仕様通りに全力で周回ガードいたします!」
ヤメタロウ:
「よし、ならその仕様を逆利用する。……で、問題はメル、お前だ」
メル:
「メルです。一番威力の高い魔法で、ヤメタロウ様をお助けします」(真顔・棒読み)
ヤメタロウ:
「そう、お前のAIは『ザコ敵相手でも、一発でMPが枯渇する極大魔術を優先して放つ』という、前世の新人プログラマーが書いたようなクソコードで動いてる。……面白い、その仕様、俺が現場で培った『リスクマネジメント』でデバッグしてやるよ。初陣だ、外に出るぞ!」▲ 始まりの町の外・のどかな平原
草原にぽよんと現れた、最弱のモンスター「スライム」1匹。
セナ:
「ヤメタロウ様、敵です! 周回ガード開始!」(ガチャガチャと猛スピードでヤメタロウの周りをルンバのように走り回る)
メル:
「スライムを確認。極大魔術――『ダマンテ』」
メルの杖から、世界を滅ぼしかねない禍々しい光と大嵐が巻き起こる。
ヤメタロウ:
「よし、来たなクソ仕様! 普通の勇者ならここでパニックになるところだが……前世で『納期当日に仕様変更をぶっ込んできた取引先』に比べたら、お前の暴走魔法なんて可愛いもんだ!!」
ヤメタロウは全く慌てず、空中にチート画面を展開。メルの『ダマンテ』の魔法構成コードを高速で書き換え始める!
【 警告:過剰火力によるシステム負荷を検知 】
【 確率1/2:ランダムなパーティーメンバーの防具耐久値が全損(衣服崩壊)します 】
ヤメタロウ:
「知ってるよ! ダマンテをそのまま撃てば、1/2の確率でセナの鎧が弾け飛んでコンプライアンス的に大惨事(衣服崩壊)になるんだろ! だから――この魔法の出力ベクトルを、セナの鎧ではなく、目の前の『クレーターの地面』にアース(逃がす)処理する!!」
ヤメタロウが空中のエンターキーを「ッターン!」と叩く!
メル:
「――ダマンテ」
ドゴォォォォォォォォォン!!!(草原が大爆発)
スライムがいた場所に、直径50メートルの大穴が空く。
しかし、いつもなら爆風で全損するはずのセナの鎧は……ピカピカのままで無傷!
セナ:
「ハッ……!? ダマンテの直撃を受けたはずの私の鎧が、なぜか全く壊れていない……!? ヤメタロウ様、これは一体……!」
ヤメタロウ:
「ふぅ、バグの負荷を地面のオブジェクトに肩代わりさせたのさ。これぞ社畜の『責任転嫁のノウハウ』だ。これで衣服崩壊バグは完全に防げ――」
?:
「え、マジ待って? 今のウチの服を身代わりに壊す処理、ヤメタロウが手元でマジ一瞬でデバッグした感じ? 尊み秀吉すぎて草超えて大森林なんだけど〜☆」
煙が晴れると、クレーターの底から、なぜか巻き添えを食らって服の一部が綺麗に弾け飛んだ町娘Bのギャル・リカちんが、うちわを振りながら登場する。
ヤメタロウ:
「えええええ!? セナを庇ったら、なんで関係ない一般ギャルの服が身代わりで破れてんだよ!! どんなクソコードの回りくどいバグの伝播だよこれ!!」
リカちん:
「ウケる! 露出高めでマジ映え〜☆ ヤメタロウ、ウチ今日から推し活でパーティー居座るわ☆」
ヤメタロウ:
「居座るな! 頼むからコンプライアンス(服)を守ってくれーーー!!」




