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第91話 再会と逆転の百合ちゃん

【ファルスーノルン過去:新星歴4817年5月25日】



俺の『爆弾発言』から8か月が経過した。


『欠片の脅威』も神々と茜の力でほとんど問題のないレベルで落ち着いていた。


アースノートと今までのデータを検証した結果。

やはり俺の魔力は吸収されるため、今は茜から取り込んだ『琥珀に緑』の力をコントロールすることを主題に、ネルの成長もかね最近は3人で冒険を続けていた。


茜を経由した漆黒は、吸収されにくいことも判明している。

理由は定かではないが、俺を想う茜の強い意志がそうさせているのだろう。


今日はネルと茜が二人で『金級の依頼』の為、ウッドモノルードの近くにあるハイエルフの集落に向かっていた。



※※※※※



俺は『用事』があるので留守番だ。


「ノアーナ様?今日はお休みですか?」


ギルガンギルの塔にある隠れ家で一人魔力のコントロール訓練をしていたら、アルテミリスが訪れてきた。


もうロックを解除してある。

今では皆、いつでも自由に来られる。


「アルテ、珍しいな………相変わらず綺麗だ」


俺は自然にアルテミリスの髪を撫でて彼女を抱き寄せる。

そして美しい唇にキスを落とした。


「んん…、んう…んんん♡……はあ…」


美しすぎるかんばせに朱が染まる。


………めちゃめちゃかわいい。


「もう、強引です………その……嬉しいですが……」


照れるアルテミリスは、普段とのギャップで大変可愛らしい。

俺は彼女を強く抱きしめた。


彼女の柔らかい体の感触と心をくすぐるいい匂いが俺を包む。


「もう………我慢できなくなります………」


そして二人。

いちゃいちゃと楽しい時間を過ごす。


俺の大事な『用事』だ。



※※※※※



「やっ!!」


力のこもった声と一緒に振るった茜の剣が、大岩ドラゴンに大きな傷を与え、動きを止めた。


「ネル!いいよ!」

「はい………ロックバレットっ!!!」


ネルの周りで形成された30個以上の石の礫が、きりもみ回転しながら大岩ドラゴンに突き刺さる。


「グギャアアアアアアアアアア――――――!??」


断末魔の叫びをあげ、崩れ落ちる大岩ドラゴン。



最近の冒険ではネルの修行の為。

直接目的地には飛ばずに少し離れた所へ転移し戦闘を行いつつ進むことにしていた。


今は鬱蒼とした森を向け、岩石がむき出しになっている荒野地帯を進んでいるところだ。

良く晴れた青い空の奥には白く雪化粧した山々の姿が目に入る。


ちょうど水の都『ヲールニアミード』と『不帰の森』の中間くらいの場所まで進んできていた。


見通しの良い所に来たので、二人は戦闘を振り返る。


「ネル、だいぶ良くなったね。さすがノアーナ様直伝だね」

「茜のサポートのおかげです。いつもありがとうございます」


薄っすら額に汗が滲み、顔を上気させネルは茜ににっこり微笑みかけた。


「っ!!?………可愛いなあ……ずるい」


思わず本音が出てしまう茜。


「何を言うのですか?無敵の勇者様が………茜の方がずるいです」


そして二人で笑い合う。



あのノアーナ様の「全員愛しぬく」発言。

女性陣は色々あったものの今では同志の様な連帯感が生まれ、お互いの関係は驚くほど良くなっていった。


「…!?……もう、ノアーナ様……また?」


そして連帯が強くなったため、ノアーナの知らない特殊能力のようなものが5柱の神々と茜とネルの間で形成。


つまり誰かが『愛し合えば』何となく伝わってしまう。


「むう」

「むう」


二人は同時にふくれっ面をする。


「まあ、しょうがないけどね。こ、ノアーナ様エッチだし。わたしだって……結構頻繁に可愛がってもらってるし?……まあネルが一番だけどね?」


思わず顔を染めるネル。

その様子に思わず茜も赤面してしまう。


「くっ、可愛すぎか?………わたし負けないからね」

「わたくしはいつだって茜に嫉妬しています………茜はノアーナ様の隣だと、とても可愛いですから…………心配です」


二人ともノアーナにはベタ惚れだ。

美女二人が顔を染めながら見つめ合う光景は、変な妄想を掻き立ててしまう………


「コホン。とにかく進もうよ。不帰の森の東部に位置するサルスノットの町までは後1刻くらいだよね。暗くなる前には着けそう」


「はい。以前ウッドモノルードにいるときに何度か訪れたことがあります…」


ネルの顔色が目に見えて悪くなっていく。

茜は慌ててネルを抱きしめた。


「……無理してない?いくら依頼でもこれを届けるだけだから、きついなら私一人で行くよ――その、あそこは…」


「ごめんなさい。もう大丈夫です……行くのはサルスノットですし。…それに会いたい人もいますので」


「………男?」

「ふふっ、想像にお任せします」


幾分ネルの表情がいつものそれに戻ってきた。

茜はうなずいて、ネルの手をそっと握り歩きだした。


握られた手から茜のネルを思いやる気持ちが伝わってくる。


(………本当に素敵な方ですね……茜は……)


呟く。


「ん?どうしたの?」

「何でもありませんよ。さあ、向かいましょう」



※※※※※



荒野を抜けた静かな泉の奥。

サルスノットの町はある。


町と名はついているが、ごく少数のハイエルフと雑多な種族が暮らす人口500人程度の小さな集落だ。


長であるハイエルフのラミンデ・エルスイナの意向で、排除はしないがよそ者の受け入れに難色を示しているのが大きな要因となっていた。


自然にあふれ精霊の子どもたちが舞う静かな町。

確かにハイエルフが治めるにふさわしいのだろう。



※※※※※



「っ!!………見つけた!やった!これがあると良い出汁が出るのよね。お師匠様に絶対旨いって言わせてやる」


集落のはずれの森で、リナーリアは見るからに怪しいキノコを握りしめ、感動と決意に震えていた。


リナーリアはこの町に住む、エルフと魔族のハーフだ。


輝くような金髪を後ろで一つにまとめ、作業服のようなやぼったい格好をしている。

背中には大きな籠を背負い、タオルのような物を顔に巻き付けて。


パッと見おばさんだが、そのスタイルには思わず目が行ってしまう美貌の持ち主だ。


驚くほどの回復術にたけ、師匠ことラミンデ・エルスイナの診療所で働いて……いや『こき使われている』女性だ。


料理に恐ろしいほどの情熱を持っている事はこの町では有名だ。


「早く戻ろう。最近魔物が出るもんね。私上手く戦えないからなあ」


そう言って見上げる空は、茜色に染まりつつあった。


「っ!?」


唐突に、凄まじい強者の魔力が近づいてきたことを感じ、思わず立ち尽くしてしまう。


「……何?……この感じ…2人?………えっ?!……ネル?!」


ちょうど森を抜けてきた二人の女性の姿が目に入った。

そこには昨年の『武幻の儀式』から消息を絶っていた親友の姿があった。



※※※※※



ハイエルフでこの町の長老であるラミンデは目の前の茜に意識を集中させた。


「………………」


木造2階建ての質素な屋敷の応接室。


茜とネルがソファーに座り、依頼の品である『黄金のサークレット』を受け取ったところだ。


家庭的な雰囲気の、手作りであろう壁を飾っている可愛いミニチュアの色とりどりの服が、部屋に安心感を与えていた。

多くの鉢植えが、競うように咲き誇っている。


生活感のある動きやすい動線の確保された家具の配置は、応接室というよりは茶の間のようだ。


(恐ろしい……)


一目見て、目の前の少女が化け物であることを見抜いていた。

彼女が暴れたらこの町など地図から消滅するだろう。


「依頼の件、確認した。助かる………今日はもう遅い。泊っていかれるがいい」

「ありがとうございます。ネル、どうする?泊る?」


そしてこちらにも驚いた。

あの「ネリファルース」がさらに強くなり、化け物と一緒にいるのだ。


「ツワッド嬢、久しいな………息災か?」

「お久しぶりでございます。おかげさまで現在は茜たちと暮らしております」


「そうか……ああ、リナーリアが興奮していたぞ。久しぶりだ。ゆっくり話でもするのだな。泊っていきなさい」


「はい」


突然ドアが開け放たれ、リナーリアがネルに抱き着いて来た。


「ネル――――!!心配したよ――会えてうれしい!!!」


ネルの美しい胸に顔をうずめ強い力で抱き着くリナーリア。


「っ!ちょっ、ちょっとリア?!こっ、こらっ……離れろー」


さらにネルの胸をわし掴むリナーリア。

手つきがいやらしい。


まるでおっさんだ。


「ああ、久しぶりのネルのおっぱい。グヘヘいいおっぱいでんなあ…」


さらに揉みまくるリナーリア。

思わず色っぽい声が漏れるネル。


「…んっ♡……こっ、こら―――――!!」


警戒したのが馬鹿らしい。

ほのぼのとした空気が部屋を包んだ。



※※※※※



ラミンデから拳骨を落とされ、ネルからジト目をされ。

茜の呆れた目を向けられ、リナーリアはやっと落ち着いた。


今はリナーリアの家で3人仲良く夕食を摂っているところだ。


「おいしい……」


余りのおいしさに、思わず固まる茜。

目の前にはむかつくほどのどや顔のリナーリアがふんぞり返っていた。


「んふふ――ん。美味しいでしょ?今日は良いキノコが手に入ったんだよねーも~最高!!」

「ほんとにおいしい………懐かしい」


ネルはしみじみと口を開き、美味しいスープをゆっくりと味わう。


3人ともラフな格好。

食事を楽しんでいた。

同性同士のこの空間。


――何故かリナーリアの視線がいやらしく感じるのは気のせいだと思いたい。


「茜ちゃんももっと食べてね!いっぱい作ったから。ネルもたくさん食べて、おっぱいもっと大きくしな!!」


ネルの形の良い美しい胸をガン見する変態がそこにいた。

そして鼻息を荒くして手をワキワキと動かす。


「でも、なんか感触が変わったんだよね……もしや、男か?んん?私以外に体を許すとか?あり得ないんだけど!?……私がネルの旦那になるんだからね?」


とんでもないこと言うリナーリア。


「………相変わらずですね。リアは……なんか安心しました。でも、愛する人に出会えたのです。あなたには嫁げません」


顔を赤らめてネルは可愛く話す。

リナーリアは涙があふれてくることを隠しもせずにネルを抱きしめささやいた。


「よかったねネル。いつも言っていた『夢』の人?」

「……うん…」


「そっか……うん。良かった。心配していたから……今度紹介してよね。見定めてあげるから」


食事を済ませ3人一緒に話をしながら湯あみをしてから床に就くことになった。

仲の良い二人を見て、茜が少し羨ましかったのは内緒だ。


一緒に湯あみをしたときの強烈な体験はきっと茜の心に刻まれたことだろう。


(まさか同性の女の子に、とんでもない快感を教えられることになるなんて……)


――百合?!



※※※※※



「茜ちゃんはネルのカレシ知っているの?」


3人仲良く川の字になりながら、唐突に興味津々の顔でリナーリアが問いかけてきた。

何故か真ん中に陣取ったリナーリアの手がいやらしくネルの胸をまさぐっているが。


「あー、うん………知ってるよ…‥あー、ちょっと私たち特殊かも、だけど…」


そんな光景を見ながら遠い目をする茜。

顔を赤くしながら悶えているネルが目に入る


「えっ!なになに?ねえ、詳しく!!それでそれで?」

「う、ん……えっと……私も……かっ、彼女……なの……その人の」


刹那リナーリアの目から光が消える。

恐ろしい声色で絞り出すように言葉を吐く。


「はっ?!なにそれ?!………まさか二股?………ぶん殴ってやる!!」


「ハハハ………普通そうだよね」

「私の可愛い彼女たちをもてあそびやがって!!」


リナーリアの手を払いのけてネルがさらに爆弾を投下する。


「正確には………7股……ですね」


固まるリナーリア。

何故か顔を赤くするネルと茜。


「信じられない!」


こうして久しぶりの再会の夜は更けていったのだった。


逆転のカギを握るちょっと百合な回復術士。


この世界の歴史に認識された瞬間だった。


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