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第87話 話し合い3

【ファルスーノルン現代:新星歴5023年4月30日】



長く話したせいか、ずいぶんしんみりしてしまった。


俺も過去に思いを馳せたことでいろいろ明確になっている。

頭の中のノイズがどんどんクリアになっていくのを感じていた。


「まあ、結果的にすべては俺のわがままから始まっていたんだがな。ほとんどの原因は意図的ではなくとも俺と俺の存在が引き起こしたんだ」


皆じっと俺の言葉の続きを待っている。

心配そうにしている皆を俺はゆっくりと順番に見つめた。


「あれからも俺の欠片が原因で様々な事件が起こったんだ。みんなで必死に止めようとした…ウッドモノルードの時は本当にびっくりしたんだよ。完全な精神干渉だった。――あと少し気付くのが遅れていたら……」


思い出したのだろう。

ネルが体を震わせ、思わず自らを抱きしめる。


目から涙が零れ落ちる。


…あの時。

あり得ないような膨大な悪意にさらされたのはネルだった。


俺はそっと抱き寄せ、落ち着くまでそうしていた。

皆が優しい瞳で俺たちを包んでいてくれた。



※※※※※



魔刻計の時を刻む音が執務室に響き渡る。

俺は大きく息を吐き、改めて皆に視線を向けた。


「そのあとはまあ、先刻話した通りだ。そしてあいつが現れた。もう一人の俺、悪意の結晶とも取れる、あまりにも静かなぞっとする悪意が」


静まり返る執務室。

思わずネルが口を開き俺に問いかけた。


「…もう一人の…ノアーナ様?…スライム事件ではなく?」

「ああ、だが今はいい。先に皆に伝えなければならないことがある。一番重要で、一番皆を傷つけたことだ」


俺は冷めてしまった紅茶を飲んで大きく息を吸い、そして大きく吐いた。


「多分この世界に生きる皆は200年前光神ルースミールが勇者シルビーと組んで、魔王ノアーナをだまし討ちにしたことになっているのだろう?」


思わず全員が立ち上がる。

わなわな震え、皆に殺気が執務室を満たしていく。


ネルの表情が消えていく…


「はい。あ奴らは勇者が降臨したことをお披露目する式典で、あの忌まわしい聖剣もどきであなた様を貫き――存在が弱ったタイミングで、あなた様を!」


ネルから怒りの想いが噴き出す。


俺はネルを抱き寄せそっと優しく頭を撫でた。

少し落ち着き、ネルが続きを静かに語りだした。


「大切なあなた様を我々が見ている前で、存在をバラバラにして滅ぼしたのです」


カリンとミュールスが体を震わせ涙を流している。

他の皆もこらえきれずに、ポロポロと涙がこぼれる。


あの式典に参加していたのは俺とネルとムク、ナハムザート、カンジーロウの5人だ。

あれしか方法がなかったとはいえ。


――酷い事をしてしまった。


「真実を話したい」


怒りと悲しみの波動に包まれていたグースワースの皆に緊張が走った。


「あの儀式は俺が新たな力を得るためにもとの世界に帰るために行った儀式だ」




「「「「「「っ!!!?????」」」」」」



「「「っ!えっ!!???」」」





ネルはあまりのショックに茫然と俺を見た。


「いや違うな。すべてをさらけ出さなければならないよな。あの時、あまりに強大な敵に対し術をなくした俺は、確率の低い賭けに出るしかなかったんだ…」


手が震える。

呼吸も忘れてしまったかのように胸が痛む。


「逃げたんだ。皆をだまして…傷つけて…」


「そ、そんな…あれが…ヒック…ああ……そんな…ぐすっ」


根源魔法を手に入れもう何も怖いものはない。

そう確信していたネル。


光喜の告白は己の想いを根底から否定する言葉だった。


崩れ落ちて泣きだすネル。

皆もへなへなとその場に崩れ落ちた


信じていた。

何を言われても受け入れるつもりだった。


でも、これはあまりに…


200年という長い時を…皆…信じて……

強い、強すぎた想いの反動。


皆も心は砕ける寸前だった。


――立ち上がることができないほどに。



※※※※※



俺はそんな様子を悲しい気持ちに包まれながら見ていた。


俺には皆に信じてもらう資格はないんだと……


(ああ、やっぱりな……流石に酷すぎる)


…仕方ないこと。


俺は諦めかけた。

その時。


――皆を温かい光が包み込む



懐かしい声が聞こえた気がした。



『まったく、うちの弟は不器用だね。ほら、力貸してやるよ』

「……え……ねえ…ちゃん…??」



不思議な光景だった。

まばゆい光に包まれて――


懐かしい「夏樹」姉ちゃんが笑っているんだ



時間の経過が分からなくなって。

感情も何もかもぐちゃぐちゃで。


だけど。



沸き上がる温かい光――


それは心を溶かしていったんだ。


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