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第113話 後始末と不穏な影

取り敢えず俺はダリルを連れてギルガンギルの塔へ飛んだ。

メレルナを浄化できた今、俺でもダリルの浄化はできそうだが。


茜にも試してもらいたかったからだ。



※※※※※



茜は会議室でアルテミリスと一緒にいた。


「茜、今良いか?」

「っ!?…ネルいない?…光喜さん、なに?」


茜は俺が抱えているダリルを見て訝しそうに口を開く。


「実はお前に浄化を試してもらいたいんだ」

「浄化?えっ、その人………っ!?――どうしたのそれ?真核が……」


流石に茜は大したものだ。

見ただけで状況を判断していた。


「ああ、ドルグ帝国の第二皇子だが、訳あって俺が預かることにした。見ての通り真核が汚染されている」


「ドルグ帝国……うん、わかった。その人、取り敢えず……この椅子でいいかな」


茜はアグたちが遊ぶときに使うリクライニング機能付きの椅子を持ってきてくれた。

俺は仮死状態になっているダリルを椅子におろした。


一応第二皇子だが…

まあ、いいか。


「それじゃあ浄化しちゃうね………はい。オッケーだよ」


は?

まさかの瞬殺!?


やばい、俺何も言えねえ。


「あ、ありがとう茜。こいつ取り敢えず一日は目を覚まさないから、客間へ連れていく。アルテ悪いが面倒を見てもらいたい」


「分かりました。ノアーナ様はまだお仕事ですか?」

「ああ、後始末だ。かなり危ない事になっていた」


茜とアルテミリスの顔に、不安そうな表情が浮かぶ。


「……茜、今日は時間あるか?もし良かったらおまえにも着いて来て貰いたいんだが」

「うん、いいよ。いつも言ってるじゃん。頼って下さいな?光喜さん」


「ああ、そうだな。ありがとう。アルテ、茜を借りていくぞ」

「はい。行ってらっしゃいませ」


俺はダリルをアルテミリスに任せ。


そのまま茜と迎賓館へ転移した。

煌めく残滓――それはまさに。


希望が生まれる祝福だったんだ。



※※※※※



――ミユルの街:迎賓館執務室――



「あの、ネル様。その……先ほどは…大変申し訳ありませんでした」


ノアーナが転移した後の部屋では。

メレルナが床にめり込むのでは?というほど頭を低くしてネルに土下座をしていた。


真核が侵されていたとはいえ、あまりに酷い対応だった。

素に戻った今、居た堪れなくなってしまったのだ。


当然だが他の皆には謝罪済みだ。


「もういいです。ノアーナ様がお許しになられたのですから。それよりも、どういう形であれ共に過ごすのです。まずはその見た目を改善いたしましょう。――厳しく行きますよ」


ネルの目が光る。


メレルナは背筋に冷たいものが走る。


ここ数週間のわがままな生活。

だいぶ体型がやばい事になっている自覚があるメレルナは。


ネルの物言いに、そこはかとない恐怖を募らせていた。


改めてネルを見る。


(…はあ…なんてお美しい…)


顔は整いすぎていて、スタイルも抜群だ。


同姓なのに顔に熱が集まるのを感じてしまう。

ドキドキと鼓動が早くなっていく。


「………はい。………ネルお姉さま♡」


思わず零れる禁断のワード。


「っ!?………お姉さま?!」


初めての呼び名に戸惑うネルだった。



※※※※※



そんな様子をほほえましく感じながらも。

現状余り悠長なことを言っていられない男性陣はこれまでの事を共有していた。


「ルードロッド辺境伯様、あれだけの呪いです。おそらく少しでも接触のあったものに影響があると思われます……『琥珀石』はどのくらい所持されていますか?」


ムクが奇麗な姿勢でカイトへ問いかける。

ため息交じりにカイトは口を開いた。


「…一つだけだ。おそらく対応できまい。マイラは先ほど浄化させてもらった。そこのガイウスもだが。――だが町を見るとなると…いくつか融通していただきたいものだが」


名を呼ばれた騎士が軽く会釈をする。

ナハムザートは腕を組む。


「……あれは大変なお宝なんだ。土の神であらせられるアースノート様謹製の品だと聞いているからなあ。皇帝に25個ほど渡したのを確認しているが……まあ、ノアーナ様が戻られたら聞いてみるしかないんじゃねえかな」


3人して立ち尽くし、沈黙してしまう。


突然空間が軋む。

かつてない膨大な魔力が溢れだしてきた。


ノアーナを超える凄まじい魔力に、思わず皆固まってしまう。


「「「「っ!?」」」」


現れる魔王と美しい少女

勇者、茜だ。


「すまない、待たせた。……ん?ああ、ネル以外は初めて会うもんな。茜だ。家で一番強い勇者様だ」


茜はぺこりと頭を下げる。

にっこり笑って元気に挨拶をする。


「こんにちは。初めまして、茜です。よろしくお願いします」


可愛い素直そうな20歳の女の子。

裏腹にあふれ出す恐ろしいまでに濃密な魔力に、皆思考が追い付かなくなってしまった。


ノアーナは恐れ多くも優しい魔王様。

その力は想像を絶する。


しかし。

今現れた女性は――それを凌駕するほどの圧を纏っていた。


「……お初にお目にかかります。辺境伯を仰せつかっておりますカイト・ルードロッドと申します。以後お見知りおきを………勇者、茜様」


何とか再起動したカイトは冷や汗をかきながらも恭しく跪き、深い礼をとった。


慌てて追随するムクとナハムザート。

少し離れていたメレルナも思わずひれ伏した。


「あー、そっか。ええと、そういうのは苦手なんだよね。はは、普通にしてください。あと私の方が皆さんより年下なので、茜って呼んでくれると……嬉しいかな」


照れながら居心地悪そうにはにかむ茜。

俺は茜の頭に手を置いて皆に語り掛けた。


「まあコイツが最強なのは事実だ。でも茜は普通の可愛い女の子だぞ?そういう対応で頼む。それにそんなんじゃ話もできないだろ?」


俺の言葉。


どうやら多少は効果があったようで。


肩で息をし、皆が深呼吸。

何とか会話ができる状況にはなったんだ。


まあ。

常に神々といる茜だ。


すでに隔絶してしまっていた。


「コホン。それより宮殿へ行こうと思う。カイト」

「はっ」

「今から茜に広範囲を浄化させる。そうすれば今回の問題は解決できるだろう。すまないが戻るまでメレルナを頼みたい。メレルナ問題ないな?」


「っ!…はい。大丈夫です。行ってらっしゃいませ」


思わず顔を赤くしてしまうが何とか返事をしたメレルナ。

そんな自分に優しい眼差しを向けるノアーナに、胸が高鳴るのを感じてしまう。


やっぱり人たらしなノアーナであった。


「えっ?こ、ノアーナ様?……まさか……」

「ああ、アースノートに聞いた。魔導兵器でも広範囲の浄化はできるそうだ。お前がいいなら『変身』見たいがな?」


俺はいたずらっぽい表情を浮かべる。


「もう、いじわる……分かった。じゃあ……『神器開放』」


茜に鮮烈な緑がほとばしる。

琥珀の魔力に包まれ――『勇者茜』が顕現。


『スライムのような俺』を倒した茜の存在値は80000を超えた。

装備が整い今は10万オーバーだ。


そこにいる俺とネル以外が、腰を抜かしへなへなと座り込んでしまった。


「あ、あり得ない………」


誰かが口にしたのを気にせずに茜に問いかける。


「で、どうやるんだ?外の方が良いのか?」

「ううん。ここで大丈夫。魔力は浸透するってアースノートさんが言ってた。むしろその方が効果上がるって。壁とかにも付着するみたいだから。――早速やるね」


茜からさらに魔力が(ほとばし)る。


背中の後ろの四本の魔導兵器が浮上し、筒先が四方の方向へ展開。

同時に緑の鮮烈な光が瞬き始めた。


「……チャージ完了………あまねく悪意の残滓…ここに浄化の光を………」


『オールディスペル!!』


魔導兵器から緑を纏った琥珀が、まるで次元を覆いつくすかのように展開。

部屋がまぶしい光に包まれた。


――優しい思いやる感情が皆を包み込む。


瞬間、町のあちらこちらで。

突然泣き始め懺悔を行う住民が多発したらしいが。


それはまた別のお話。



ミユルの町は救われた。



「じゃあ宮殿へ行くか。茜、ネル、ムク、ナハムザート。行くぞ」


煌めく残滓を残して。

魔王一行は転移していった。



※※※※※



どこだかわからない暗闇。

怪しい黒い靄が呟く。


「クソッ……邪魔された……まあいい。次の手は打った」


ふよふよと周りを飛び回る。


「くくっ、あいつ。…どういう感情を俺にくれるんだろうなあ……楽しみだ」


そして闇に紛れ――



その姿はまるで幻のように。


『見ようとすると見えなくなる』


そんな魔力を噴き上げ。



――姿を消していったんだ。


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