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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
112/157

112、つーと言えばかー

 夜――。

 日が暮れ、街道(かいどう)の脇へと馬車を寄せては火を(とも)す。

 サラス主体で水を調達し、ジーナとマリアに因る夕飯の準備が行われる。

 そうして食事を済ませては、一人、また一人と眠りについて行く。

 空を見上げれば、時刻は日付が変わった頃であろうか。

 静けさの中に、時折木の()ぜる音が混じっては闇夜にその明るさを示し続けている。


「……なに?」


 その第一声は、眠りについていた(はず)のサラスから上がったものだった。


「どうした?」


 他の三人に配慮しつつも何かしらの異常事態であることは馬車から降り立ってきたサラスからして一目瞭然(いちもくりょうぜん)

 簡素的ではあるものの、その意図を問う事に関して何ら疑問は無い。


「何か……何……? 分かんない。でも、何か、ううん。何だろ……おかしいのは分かるんだけど……何が起きてるのか分からないけど、何か起きてるのは分かるわ」


 何だそれはと思ったところで実際問題。

 森と言う特殊な環境上、サラスの言葉はある種の確認とも言えるもので。


「分かった」


 疑問を浮かべる前に対策を立てることが今しなければならない唯一のことであろう。


「サラス」


 一声かけては傍に転がるスコップを手に取る。


「はいはい」


 サラスはこちらから指示するまでもなく。

 馬車に手を掛けては素早くジーナとマリアの目を覚ます。

 それから眠ったままのアイギスを背に、火を消すか迷った挙句(あげく)、遅いと判断してはそのまま残して距離を取る。


「……私がアイギスでいいの?」


 サラスは不安を払拭(ふっしょく)するようにこちらへと問う。

 その言葉自体には何も問題はないのだが。

 どうにも自身の(あずか)り知らない現状に対して冷静ではいられないのか。

 節々(ふしぶし)から落ち着きを欠いているであろうことが見受けられる。


「大丈夫だ」


 こんな時に何と言った所で結局は本人次第であるが故に。

 いつも通りの言葉で()ってして、何ら(あわ)てるような事態ではないことをそれとなく体現する。


「……アンタは?」


 しかし、返って来たのは予想外のもので。


「病み上がりでしょ?」


 (みずか)らを置き去りに。

 こちらを心配するような声が上げられ。


「大丈夫だ」


 現状だけでなく。

 自身を前に、変わり()えしない解答を繰り返していく。


「……そう。ならいいのよ」


 サラスは満足したのかそれで納得してくれたようで。

 森で何が起こっているのかは分からないが、今は息を(ひそ)めるに限る。


「……」


 沈黙。

 何に対してそれを貫いているのかは(いま)だに理解に及ばないまでも。

 流石にこれだけ騒がれれば事の大きさぐらいは何となく掴めてくる。

 それから二度、三度と。

 森の奥で木が倒れては大地を揺らし、最早誰にでもその異常が捉えられるほど事態は顕著(けんちょ)なものとなり。

 同時に自身の耳が、何かしらの声と呼んでも差し支えないようなものを(かす)かに(とら)えては意識を集中させていく。

 しかし、その答えはこちらが出すまでも無く。


「悲鳴……逃げてるのね。何かしら……二本じゃない……獣の数でもないわね……」


 それは察するに足の本数で、尚且(なおか)つ足音を指し示していると思われる。


「こっちに来てるわね……」

「どっちだ」


 身体強化を施しては戦闘態勢に入る。


「必要?」

「いや――」


 最早その答えは聞くまでも無く。

 音で捉え、気配でもその位置を捉える。


「――」


 どうやら()き火を目指しているようで、こちらに気付いている様子は感じられない。

 であればこそ傍観(ぼうかん)を決め込むことも出来るわけだが。

 必ずしもそうであるという保証はどこにもないわけで。

 目線は既に固定化され、その瞬間を見逃すまいと息を止める。


「たすッ――!」


 一瞬の事だった。

 距離があるとはいえ、すれ違いざまにその者は確かにこちらへと助けを求めていた。

 その後ろを得体の知れない黒い塊が追い(すが)り、火の粉を散らしては去っていく。


「……方針は決まった。移動しながら策を()る」


 言いながら立ち上がってはアイギスをサラスから受け取り、後を追う。


「あんなのと一戦交える気?」


 サラスはこちらの横へと並んでは、正気を疑うように苦々しくも口角を()り上げる。


「あれだけか?」


 念のためにとサラスの問いに答えないことで答えとし、その先を構築していく。


「わっかんないわよっ!」


 サラスの声はでかい。

 だが最早逃げ隠れしているわけでもないからにして――。


「ちょっ! ちょちょちょっ――! こっちきてるわよっ!?」


 足を止めては折り返してくるその者を待つ。

 接触までに思ったよりも時間が取れなかったために、策と言う策はないものの。

 こうなってしまった以上最善を()くす以外に道はない。


「リンさん。ここは私が」


 そんな現状を察してか。

 マリアが進み出て来ては胸元から刃を引き抜く。


「分かった」


 一歩引くではなく、マリア以外を背中に隠しては正面を見据(みす)える。


「き――来たわよっ!?」


 言われずとも既に目視しているが、正面から見るとなんとも大きな毛玉のようだ。

 手足こそ存在しているようだが、最早その区別はつかず、左右非対称にあちこちから生えているという何ともそれで良くあれだけの速度が出せるなと感心してしまう。


「たすけてッ――!」


 今度はしっかりと聞き届けることが出来た。


「聖なる一撃――」


 マリアから声が漏れる。

 同時に手に持つ刃が薄く輝き始め、そうして徐々に光の濃度を増していく。


「リンさん」

「あぁ」


 寸前に呼びかけられたところで何が何やら。

 分からないまでも詳細を打ち合わせている時間はないからにして。

 アイギスを手っ取り早くサラスへと再び預けては、分からないなら分からないなりにこちらはこちらで動くことにする。

 前に踏み出してはその者とすれ違い――変わってこちらへと伸ばされた(いびつ)な手足をいなしてはその勢いをそぐ。

 外見からして触れて良いものか躊躇(ちゅうちょ)していたが、触れてみれば何の事は無い。

 ただゴツゴツとした感触が手に残るのみだ。

 そのまま相手の下へと(もぐ)り込み。

 ()り上げる。

 空へと浮かび上がっては後方のサラスたちを飛び越えて、案の定。


「お見事です」


 そんな言葉をこちらに残してはマリアが駆ける。

 そうして、体勢の整わぬ間に光り輝くその刃を突き立て――。


「神の導き――」


 刃はその身を(うず)めては光を失い。

 代わりに毛玉の内部から光が漏れ始める。

 それから程なくして。

 毛玉は人へとその姿を変えた。

 



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