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盾1回復4の盾ですがなにか?  作者: なんちゃコフ
106/157

106、パズル

「……ねぇ、こういう場合ってさ。どうするのが一番なわけ?」


 背中越しにサラスが疑問を投げかける。


「うーんっ、笑えばいいんじゃないかなっ? こうやってっ」

「いやいや。笑えるかどうかはさておいても、笑っちゃマズイんじゃない?」


 サラスはジーナとの他愛のない会話を繰り広げていく。


「でもでもっ、相手からしてみればさっ。同情って、結構くるものがあると思うよっ?」

「いや、そうだけど……それでも、うーん。マリアはどう思う?」


 サラスからジーナへ。

 そうしてマリアへと話題の矛先が向けられるのは何もおかしなことではない。


「黙っていればよいかと」


 マリアは落ち着いた声色で淡々と答える。


「うーん、それはそうなんだけどさ。ちょっと味気がなさすぎるっていうか?」

「事実かと」

「わーわーっ」

「容赦ないわねー」

「事実ですから」

「えげつないわね」

「仕方の無い事です」

「まぁ、それもそうなんだけどね?」

「結局言っちゃうんだっ?」

「事実だもの」

「それもそうなんだけどねっ」

「ふふっ、アンタも大概じゃない」

「それほどでもないかなっ?」

「リンの前だってこと忘れてないかしら?」

「後ろだからだいじょーぶなんだよっ?」

「物理的にはね?」

「リンさんはそのようなことお気になさらないかと」

「あーっ! それぼくが言いたかったのにーっ!」

「リンはそんなこと気にしないわよ?」

「あーっ! サラスまでーっ!」

「ふふっ、ほらほらっ。次はアンタの番でしょ?」

「むーっ。リンは――」

「貴様ら……ッ!」


 そこでようやく反論を挟める程度に持ち直したのか。

 その者が息を切らせながらも目の前へと都合何度目かの復活を遂げる。


「よくもこの私を――」

「静かにしてろ」


 殴りつけては鼻から下を()ぎ落とす。

 壁に叩きつけられる肉片と飛び散る血飛沫(ちしぶき)


「――」


 残った両の(まなこ)に込められているのは憤怒。

 だがそれは現実に置いて何かの足しになるという事は無い。


「アンタもアンタで容赦ないわねぇ」


 引き続き四肢を無用の長物へと変えてはサラスから感心の声が上がる。

 正直あと何度繰り返せるかも分からない今。

 褒められたところで素直に喜んでいられるほどの余裕はない。


「それよりも手段は思いついたか?」


 本題へと戻るべく、その一言で以って軌道の修正を図る。


「そんなの聞いてれば分かるでしょ?」


 それからサラスは言いきる。

 そんなものは無いと。


「手立てなしか。アイギス」


 その名を呼んでは現状を擦り合わせるべく反応を待つ。


「なに?」


 最近ではそれが普通のように。

 こちらの視線を捉えては言葉少なに聞き返してくれる。


「外せないそうだ」


 事実を端的に、それでいて大まかなものとして告げる。


「……?」


 アイギスは分かり易く首を(かし)げては何の事だとその姿勢で以って問い返す。


手枷(てかせ)と足枷と首の枷だ」


 そこに至るまでの過程は(はぶ)き。

 残った結果だけを手っ取り早く目の前へと並べる。


「なんで?」

「鍵がない」

「どうするの?」

「手足は切断すればどうにかなる。ただ首を同様に対処すれば助ける以前に殺すことになりかねない」

「切断する?」

中治癒(ミドルヒール)でどうにかなる域を超えているように思う」

「ううん?」

「ん?」

「大丈夫だよ?」

「……分かった」


 地面で沈黙する何と呼ばれているのかもどう形容するべきなのかもよく分からない。

 役割で言えばこの場の番人であるその者をそのままに。

 今回の目的である意識の無い囚人へと近づいて行く、が――。


「ちょ――流石に信用が過ぎるんじゃない!?」


 サラスに肩を掴まれては何故か正気を疑われる。


「問題ない」

「問題大有りよ!」


 サラスはこちらの回答を塗りつぶす勢いで否定を口にする。


「どこがだ」

「全部よ!」

「手足は中治癒(ミドルヒール)でどうにかなると結論付けた筈だが」

「首よ!」

「それならアイギスがどうにかする」

「方法ぐらい聞いたらどうなのよっ?」

「アイギス」


 言われるがままにその名を呼ぶ。


「大丈夫だよ?」


 アイギスに変わりはない。


「なっ?」

「何が、なっ? よ!」

「アイギス」

「大丈夫だよ?」

「それは分かったからっ。あーもうっ、方法よっ、方法っ!」


 サラスはどうにも納得できないようで。

 追及するようこちらへと求めてはその先を促してくる。


「アイギス」

「大丈夫だよ?」

「方法を知りたいそうだ」

「うん?」


 アイギスは先程と同様に首を傾げては、頭上へとこれまた分かり易く疑問符を浮かべる。


「サラス」

「アンタとアイギスの間に何があるのかは知らないけどっ、相談ぐらいはしてくれたっていいんじゃないのっ?」

「……?」


 アイギスは繰り返すように反対側へと首を傾げて見せる。


「……ジーナっ!」

「えぇっ……ぼくは別にいいのに……」

「アンタは気にならないのっ?」

「アイギスが助けたいって言った人でしょ? 殺したりしないと思うけど……」

「そう言われて見ればそうね」

「納得はやっ!?」


 サラスの変わり身の早さに対してジーナが驚きの声を上げる。


「マリアはどう思ってるのよ?」

「私は、リンさんが――」

「聞くまでも無かったわね」

「……はい」


 マリアはサラスの傍若無人(ぼうじゃくぶじん)っぷりに多少の呆れを含ませながらも微動だにしない。


「はぁ……分かったわよ。それで? 助け出せるとして帰りはどうするのよ」


 それでようやく納得、というよりも観念したのか。

 サラスはその先について話題を巡らせる。


「持たないだろうな」


 ここで偽りを述べた所で何も良い事はない。

 正直に自身を取り巻く現状を言葉にする。


「フ……フハハハッ! お前等は――」

「静かにしてろ」


 今は時間が惜しいと問答無用で再び壁の染みへと戻す。


「大丈夫だよ?」


 目を向けるまでも無くそれはアイギスの声。

 そしてその事実は何よりも信頼に値するものでもある。


「分かった」


 了解の意思を示しては最早憂慮(ゆうりょ)すべきことは何もないと自身とその者との間に残された距離。

 僅かに空いたその数歩を詰める。


「アイギス」

「うん」


 その言葉を最後に。

 素早く相手の四肢と首を宣言通りに切り離しては胴体を枷から引き抜き。

 失う血液を最小限にてとどめるべく頭部を片手に工作でもするが如く互いの断面を強引に擦り合わせる。


大治癒(フルヒール)――」


 アイギスの言葉の上だけで判断するならば、それは中治癒(ミドルヒール)の更なる上位か。

 暖かな光と共に、噴き出していた血は止まり。

 断面は跡を残すこともなく繋がっている。

 それどころか拠り所を失ったまま放置されていた筈の手足ですら元通りという始末。

 結果は分かっていたが、正直一言でここまでの結果をもたらすとなるとこちらとしては意味合いが変わってくるというもの。

 復活(リザレクション)の時もそうであったが、何よりも今はアイギスの体調が心配だ。


「アイギス」


 意識の無い体を手に。

 それとなく様子を窺う。


「なに?」

「大丈夫か?」


 言葉のままに真意を問う。


「テレポート」


 それは言葉と共に行動で示された。


「無理してないか――?」


 移り変わった景色になど目を向けず。

 ただそれだけが気がかりだと再び問いかける。


「おなかへった」

「そうか」


 いつも通りの言葉に一先(ひとま)ずは安心。


「すぐご飯にしよう」

「うん」


 答えはすぐに出た。


「ねぇ」


 声に目を向ければサラスは何か言いたげだ。


「この子――たち。どうするのよ」


 サラスに自然と集まっていた視線が外されていくような感覚。


「おうちにかえしてあげて?」


 それを真正面から捉えるアイギス。


「あははっ」


 ジーナは笑っている。


「何か考えがあってのことでは?」


 マリアは当然そうであるとしてサラスに答えを求める。


「ないわよ」


 特に考える素振りも見せずに答えるサラスはいっそのこと清々しい。


「行き当たりばったりとは正にこのことですね」

「ただの考えなしともいうかな」

「自分に正直なだけよ」

「言い得て妙だな」

「物は言いようですね」

「別に分かってたことでしょ?」


 サラスはあっけらかんと言い放つ。


「まぁ、そうだが」

「それは……はい」


 マリアは暫く考えた後。

 気を遣う事も言葉を濁す事も避けては同意する。


「まっ、なるようになるでしょ」


 サラスはあくまでやりたいことはやったと。

 それ以上は流れに身を任せる所存のようだ。


「リンー」


 アイギスに裾を引っ張られる。


「あぁ、迎えがきたらそうしよう」

「ごはんー」

「そうだったな」


 どうやらアイギスにとってはそちらの方が重要らしい。

 自然と笑みが零れる。

 サラスに目を向けると若干返す事に関しては微妙な顔をしていたが、たちまちご飯とする旨には理解を示してくれているようで。

 ジーナが先導してはその後に全員が続く。

 何はともあれ休息は必要だ。



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