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2 真利愛の闘い

 スミス&ウェッソン M500+ ミリタリーモデル。

 彼女が信じる物全てが、これに込められている。「力」だ。彼女は、決して美人ではない。とは言っても、ちんちくりんでも無い。「普通に可愛い」程度のルックスだ。「美」以外に信じる物を探そうとした彼女が、突き詰めたのは「力」だ。その象徴が、この銃に込められていた。XZフレームなるこの宇宙にて最もデカいリボルバーフレームに、7発の500S&Wカートリッジの弾丸を装填できる。

 他に武器は無い。これだけが、この七連発リボルバーだけが、彼女の全てである。天野真利愛。彼女の武器はこれだけだ。アイデンティティーそのものと言っても良い。

 他の6つの地球外惑星の技術が無ければ、こんな出鱈目なスペックの拳銃は造れなかった。それに、幾ら地球外惑星の人間と言えども、撃たれたら死ぬ。象の頭も砕くと言われている500S&W弾である。人間の身体なんて大穴が空いて死ぬ。


 異世界宇宙に召喚されても尚、「地球」

には国境の線が引かれており、その線ごとに6つの地球外惑星による干渉や交易が行われていた。要するに、召喚前からそこまで状況に変化はない。違う点と言えば、召喚された宙域が、この六つの惑星国家にとって係争中であったと言う点である。

 「地球」を制するものが、宇宙を制する。その動きを事前に察知して、阻止するのが「紺碧」と呼ばれる組織の目的である。そして、同組織の「顔」とも言える存在が、「紺碧の令嬢」と言う戦う女性達である。


 美人は街を歩くだけで仕事に誘われると言うが、真利愛にはそれがない。令嬢だからと言って、ゴスロリな格好はしないが、それでも見れば分かる「制服」を用意されていた。

 日本の地方都市、某県にある伊座菜市の街中を、真利愛は練り歩いていた。執事も部下も連れずに、独りで、である。1年前まで、真利愛の隣には1人、男がいた。最初は相棒で、その内に交際相手になり、ついで父親になる筈であったが、息子と共に天に召されてしまい、真利愛は独りに戻っていた。

 伊座菜市は、そこまで悪い街ではない。不景気なのは、何処の国も一緒であるが、ここには「バースト」と呼ばれている麻薬は流行っていないらしい。既に半島経由にてこの国にも流行っているらしいが、経済的にまだ豊かなこの街は、まだ「バースト」がなければ生きていけないとまではいっていない。

 では、なんで真利愛は、そんな街を歩いているのか。定期パトロールなのか。組織・「紺碧」は警察ではないので、パトロールなんてしない。裏路地に入り、あんまりお上品とは言えない光景の中に入り込んでいく。情報を仕入れて、現場を取り押さえて、「力」で脅威を排除する。非営利・非政府団体である「紺碧」であればこそ、誰もが協力していた。

 ねぇ、ほら、「紺碧の令嬢」が此処に来ているよ。誰か「地球外惑星」と連んで悪さでもしているのかしら。

 知るか、そんなの。あいつらは何処の星の人間だろうとぶち殺すのさ。この星を守る為によ。その為なら、殺す相手を選ばない。

 あら、素敵。痺れちゃうわ。

 有象無象の言葉が、真利愛の耳に届く。でも、そんなの問題じゃない。その内に、どう見ても堅気には見えない男が2人、見張りに立っているトイレが見えてくる。トイレの出入り口には、「修理中」と書かれた看板が置かれている。

 見張りの2人が、真利愛に気が付く。堅気じゃないけど、頑張って堅気に見せている男2人は、真利愛に命じる。

「御免なさい、今は修理中だから」

 懐からデカい・長い・重いS&W M500+ ミリタリーモデルを取り出すと、両手で構えて、撃ち込む。頑張って堅気を演じていた男の頭、眉間に1発、綺麗に命中して、潰れたトマトの様になる。

 もう1人の男は、逃げ出そうとしてその背中に500S&W弾を1発、撃ち込まれる。身体をくの字に曲げて死ぬ。

 修理中の看板を蹴飛ばして、トイレの前に立つ。共用トイレであり、男子用でも女子用でもない。ドアノブを握り、回そうにも回らない。

 どうする。木製のドア越しに銃弾でぶち抜くか。その前に、1度だけ猶予の時間を与えよう。頭上に向けて、1発撃ち込む。

「わ、分かった。もう出るよ。分かったから、もう撃たないでくれ」

 出て来たのは、急いではき直したズボンを整える地球人と、惑星「マルトス」の少年が1人、虚ろな目で、口からダラリと唾を垂らしていた。お楽しみの途中だったらしい。

「こ、こいつは、その同意の上で、やったんだ。本当だ。同意なら罪にならないだろう。こんな可愛い奴がいたら、やりたくなるのは当たり前じゃないか」

 余計な事を言った地球人のペドに対して、便座の近くに落ちている「バースト」専用の注射器を指して言う。

「こいつで、このガキの意識を飛ばして、あんたもハイになりながら、口も尻も楽しんだ。これで同じ事を言えるわけ?」

「お、俺は同意で」

 銃のグリップで、男の顔面を叩く真利愛。


意識を取り戻した「マルトス」の子供は、一応の礼儀で病室に迎えに来た天野真利愛に言う。

「母星に戻りたくない。もう1度、「バースト」を使わせて。あれがないと、もう生きていけない。もう家に帰りたくない。あそこに帰るくらいなら、ここで死ぬまで「バースト」を使いたい」

 恐らく、母星の警察や入星管理局の役人にも、同じ事をいったに違いない。人間って奴は、何処に行っても同じなのだな。真利愛は少年に言う。

「「バースト」は1度使ったら、一生の後遺症に苦しむ羽目になる。特にあんたが使った目的では、1度やったらもう2度と忘れられなくなる。完全に治療は出来ない」

「……つまり、何が言いたいんだよ」

「あんたはもう死んでいるのと同じよ。生きている価値も無い。一生他人のお世話になりながら生きるしかないのよ」

「まるで、学校の先生や両親みたいな事を言うな。僕をこんなにしたのは、あいつらだ! あいつらが悪いんだ!」

「そいつらの前で、同じ台詞を言った事があるのかしら」

「ある」

「あんた、死んだ方がマシね。何で生きてんの? あんた1人生かすのに、どれだけの人が働いていると思ってんの? あんたみたいな子供は、守られる資格も養われる資格も無い。いっそ死んだ方が楽じゃないの?」

「じゃあ、どうすれば良いんだよ」

「あんた、猫って知っている? 野良猫って言うのを知っている? 猫が1度に産む子供の数は七匹。最終的に残るのは半分程度。大人しくて、弱い奴からいなくなる。もしあんたが自分の辛さや弱さを他人に理解してもらおうとしたのならば、他に方法があったのに、あんたはそんなチート業に頼らなくても良かったのに」

「何が言いたいんだよ」

「あんたにはもうどうする事も出来ないと言っているのよ。言い訳なんてしないで。失われた信頼を取り戻すのには一生涯かかるのよ。あんたの親も、あんたを受け持った教師も、皆あんたの為に苦しむ事になるのよ。それに比べたら、あんたの辛さや弱さなんて鼻くそほどの価値もないのよ」


「ちょっと、言い過ぎじゃないですか。あんたは、自分の息子が同じ事をしていたとしても、同じ事を言うんですか」

「だとしたら?」

「酷すぎる。あんな子供に、世の中の厳しさを知らせるのには、まだ幼すぎます」

「嘘をつくのはもっと酷いと思うわ」


 天野真利愛は、そう言う女であった。


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