1 七つ目の星
西暦2026年、夏―。
惑星「地球」に住む人々が、一斉に天を仰いだ。空が光っている。その中で、月と太陽だけは見えた。それは正に色彩の暴力であり、自分達がただならぬ状況に置かれているのだけは事実であった。
やがて、空はいつも通りの星空を取り戻していた。何だったんだ、さっきのは。やれやれ、もうお仕舞いか。もっと続くものだと思っていたのに。そんな呑気な空気があったのは、現代人は所詮この世に「奇跡」だの「神意」だのなんてものはなく、先程の現象も自然現象の1つだろうと思っていた。
そんな現代人の余裕を奪ってきたのは、次の指摘であった。
「星空が、以前と違う」
大きな星が幾つか、見えていた。六つの星が見える。月だって、幾つか増えている。此処は何処だ。如何して自分達は此処に居る。どうやら、自分達は地球諸共、違う世界の宇宙へと召喚されたらしい。大凡常識的な結論では無かったが、そうとしか言えなかった。六つの星には、それぞれ知的生命体の存在が確認され、その全てがこちらとの接触を試みているのが確認された。
そこは、遠い昔、遥か彼方の異世界宇宙であった。「地球召喚暦」と言う暦が始まった、その瞬間である。
それから暫くして、「地球人」は1つの結論に至った。どうやら、自分達と同様に、この六つの星々もまた、お互いに係争中であり、その原因は矢張り領地問題であった。人間、何処の世界に行っても進歩が無いと慨嘆しつつも、もう1つ、悪い知らせがあった。
その係争地のど真ん中に、「地球」は異世界転移してしまったらしい。つまり、今後は「地球」を狙って、この6つの星々が争う形になるのだ。あるいは、戦場にして制圧下に置く事も充分に有り得る。
しかして、その予測は「地球召喚」よりたったの2年で現実のものとなる。「サヴァイラ」と呼ばれる惑星が、「地球」への侵略する意図ありと、「ゲレンバス」から報告を受けて、「地球」は他の惑星に積極的に近づいていた。目的は、この異世界宇宙に召喚された「地球」にて生き延びる事である。
「人権」だの「経済性」だの「政治的」だの、そんな理屈は犬の餌にしている、この宇宙において生き延びるのには、「戦争」しかない。しかし、単純に武力だけで戦って勝てるとは思っていない。もっと根本的な部分からやり直さなければ駄目だ。
しかし、驚くべき事に、この段階に入っても尚、「地球」は1つの国家として纏まる事が出来ずに居た。こう言う時、真っ先にリーダーシップ、と言うよりは指導者面をしたがるアメリカ合衆国は、そもそもの話、「対決姿勢」なのか「融和姿勢」なのかがハッキリしないままに、指導部がダラダラとした会議を繰り返すのみで、結論は出せずに居た。
となると、次は中国であるが、都合の良い事だけを誇張して、都合の悪い事は隠蔽する、要するに信用出来ない組織が国政をになっている時点で、既にリーダーとしての資質は無い。
では、ヨーロッパの国々は如何なのか。過去に行われた2度に渡る世界大戦と、冷戦による分断と、失策の連続はこの地域をボロボロにさせていた。今更過去の幻影を追いかけても仕方が無い。
日本はどうか? 実際、何度か粉をかけてみたら、縮こまって「辞退します」と情けない態度でまだ頼んでもいないのに断ってきた。どうやら、「責任」を取らされるのが嫌なようだ。
……と言う事で、「地球」の中でも頭の良い連中が集まって、どうにかしていくしか無かった。国家はあてには出来ない。ならば、やれる奴等がやるしかない。それも、「国益」や「選挙」に左右されない、非政府・非営利団体が出てくるしかない。
「紺碧」と呼ばれる組織が生まれたのは、そう言う経緯があった。そして、その「紺碧」に置いて、地球外惑星の技術を用いた装備や武器を用いた「令嬢」達が居た。人はそれを、「紺碧の令嬢」と呼ぶ。
輪廻転生。それは現実の辛さや悲しさを乗り越える為に考え出された物の筈だが、もはやそれは現実に横たわる、現在進行形にて人々を悩ませている問題であった。
組織・「紺碧」の存在は、6つの惑星の指導者達にとって、脅威であった。この七つ目の惑星にて、この組織は一体何をなそうとしているのか。
地球召喚暦7年、夏。組織・「紺碧」は、その初仕事に取りかかっていた。




