偵察報告
「アイツ、ヤバかったってヤツだぜぇぇーーー!」
村の集会所に入って早々、ガイアがダルグに泣きつく。
「あーもう!情けねぇな!で?ラングはどういう感じだったんだ?」
ダルグが問いかける。
「アイツぁ、ヤバいやつだよ。火も毒も効かない。おまけに力も強い。まあ、なんとか逃げ切ったけどね」
カウルがダルグに淡々と報告する。
突然、ガイアが泣き止む。
「あ、そうだ!逃げてるときに、なにか、棍棒?みたいなのが飛んできて、何回かラングの体をドゴーン!って打ちつけてたってヤツだぜ!
そしてな!ラングがめっちゃ苦しんでたって……」
「はあ!?アンタねぇ、そんなの幻覚に決まってるじゃないか。ラングは頭をおかしくする能力もあるのかい?」
カウルが呆れて言う。
「あ、ああ。まあ、ガイアも疲れただろうからな、ちょっとあっちの寝室で休めよ。もちろん、カウルも」
「本当かい?ありがたいねぇ。お言葉に甘えさせていただくよ。ほらッガイア!」
「痛い痛い!耳引っ張るなってヤツだぜ!」
ガイアの情けない声とカウルの怒号が響く。
────「棍棒」ガイアの妙な言葉が気に掛かった。2人が偵察に行っている途中、俺の棍棒が山の方へ飛んでいった。そして偵察中にガイアが棍棒を見た。
その棍棒はラングを攻撃していた。
するってぇと、この棍棒はガイア達を助けようとしたのか?やっぱり、棍棒は意思を持っている?
あの隕石が降って、この棍棒を手に入れたときにあのラングが現れた。棍棒は俺たちを助けようとしたのか?─────
ダルグは珍しく冴えた思考をした。
────ってなると、次は俺がこの棍棒を持ってラングのもとに行ってみるか?───
やがて2人は寝室から戻ってきた。
ダルグは何よりも最初に
「なあ、次は俺が1人で行ってみても良いか?」
と投げかけた。
この棍棒の力について何故か他人について話すことはできない。だから、誰かと一緒に行ってこの力がバレたら何かマズそうだ。
「はあ?1人で?いきなり何を言ってるんだ?そんな無謀なことはアタシが許さないよ!」
カウルが真っ先に反発する。
「1人でなんて危険すぎるってらヤツだぜ!」
ガイアも一緒に乗る。
「その気持ちは分かる。だけどな、俺はお前たちを巻き込みたくない。偵察してて分かるだろ?」
ダルグは適当に理由をつけてどうにかいかないかと祈る。
「分かるから止めてるんだろ!?1人で行くなんて絶対にさせないよ!」
カウルが怒号をあげる。ガイアは思わず耳を塞ぐ。
「分かった……村長に決めてもらおうじゃないか。それで納得するか?」
ダルグが提案する。
「……分かったよ。まあ、アタシと同じ意見だと思うけどね!」
カウルは不服そうな顔をしながらダルグたちと一緒に村長の部屋へ行く。
どうやら村長は聞いていたらしい。
「ま、いいんじゃないかの?」
村長は3人が入って早々に言い放った。
「ちょっ、待っ、はぁ!?」
カウルはもはや言葉も出なかった。ガイアはもはや顔の原型をとどめていなかった。
「1人で言って死んだんなら、その程度だったということじゃ」
「ちょっと待ちな……じゃなくて、待ってください!村長───
───ダルグは一応、あのゴルドよりも強いんですよ!?そんなに強いリーダーを失うかもしれないんですよ!?」
カウルはまだ戸惑っていた。
「アンタはダルグがどれほどのリーダーなのかを分かっちゃおらん。」
バヌトゥはため息をつき、今度はダルグに向き直った。
「ダルグよ。1人で行くことを許可しよう。しかし、あくまでも偵察だけじゃ。あのマンモスを倒すなんて考えぬことじゃな」
「ありがとうございます!村長!」
ダルグは跪いた。
ガイアは完全にこの場の空気と化しながらも考えた。
──ダルグ、アイツは最近おかしい。トントン拍子に出世してやがるってヤツだ。ゴルドも村長も気付いていないが、オレにだけは分かる。ずっと仲間として一緒に狩りをしてきたのだから。けど、オレにはただこれを見守ってるしかできない。なんだか分からないけど、コワイってヤツだぜ──
1人は喜び、1人は困惑し、1人は恐怖する。その混沌とした感情の森を、齢100歳越えの1人の老人が支配していた。
2人だけで偵察も大概頭おかしい




