偵察その2 ファイア
ガイアから毒を喰らったラングの傷は完治し、より勢いを増してこちらに走ってきた。
「ヤバい!ヤバいってヤツだぜ!」
「アンタ!アレは?火はどうだ?」
「火打ち石に火をつけたいけど......そんな余裕ないってヤツだぜ!」
「仕方ないわね!アタシがアイツの気を引きつけるから、そのうちに火をつけろ!」
そう言ってカウルはラングの方へ向かった。カウルがラングの上をヒョイと飛び越えると、ラングの目線はカウルの方へ完全に向いた。
「このうちに......!」
ガイアは火打ち石を取り出し、矢に打ち付ける。焦って手が震えるので、なかなか火が点かない。
「クソッ!火ィつけってヤツだぜッ!」
5回ほど打ちつけ、ようやくついた。
「速......く!」
カウルが怒鳴る。カウルはラングの右、前、後ろと飛び回っていた。だが、動きに疲れが出ている。
一方、ラングは大きな体に合わない機敏な動きで鼻をカウルに打ち付けようとする。
「これは...避けられない!」
カウルは鼻に当たることを覚悟した。
その時、ラングの右頬に光が突き刺す。ガイアの矢だ。ラングの鼻の動きが止まり、呻き声をあげる。悶えるうちにも、頬から火は広がる。ラングが鼻で器用に矢を抜き、火を消すために地面に頬を擦り付ける。
カウルはラングから距離を取る。
「多分...」
「だよな...ってヤツだぜ」
火はやがて消え、頬に火傷の痕が残る。ラングの動きが止まり、想像通り火傷はみるみる治っていく。
「やっぱりってヤツだぜー!」
「ガイア、ここは一旦撤退だ!」
2人は山麓の方へ走って降りていく。
───ダルグは狩りを終え、いつも通りマンモスの肉を村長の家に持って行っていた。家の中に入ると
「おお、ダルグか。ここに座りなさい」
と村長が歓迎してくれた。ダルグは椅子に座り、棍棒をテーブルに立てかけた。
「これ、今日取った肉です。」
「───あの2人は今頃上手くやっているでしょうか。」
「さあな。ワシの予感じゃが、かなり苦戦しているんじゃなかろうか。」
ダルグと村長は同時にため息をつく。
少し気まずい空気が流れた後、ダルグは椅子から立ち、棍棒を手に取った。
「上手くいってると、良いですね。」
そう言い残してダルグは家を去った。
ダルグは家を出た後、少し伸びをした。その時、急に手に振動が走る。
「な、何だ?」
振動する手に目を向ける。振動源は棍棒...?
するとなぜかダルグは棍棒から手を離した。いや、違う。棍棒が離れたのだ。棍棒は偵察隊が行った山に飛んで行った。─────────
「クソッ!あのマンモス、しつこいねぇ!」
カウルが言い放つ。
ガイアは必死にカウルについていくが、もうそろそろ限界だ。
「このままじゃ、追いつかれ……..って……」
耳鳴りが止まらない。耳鳴りの音に連れていかれるように、意識が遠のく。ああ、もう、ダメってヤツだ。耳鳴りの音がどんどん大きくなる。まるで、あの時降ってきた岩の塊のように……
ドゴーン!と耳鳴りとは思えない音が背後から響く。ガイアが後ろを振り返ると、妙な光景が広がっていた。思わずガイアは足を止めた。
棍棒?がラングの足、頭頂部を素早く叩く。棍棒が叩く度に、叩かれた部分から紫色の光が輝く。ラングの体には見るに耐えないアザが出来ている。ラングはまた悶える。
この間、約0.7秒。この速い動きをよく捉えることができたものだ。
「だけど……これも、治っちまうってヤツだよな?」
否、治らなかった。ラングが苦しんでいる間に、あの謎の棍棒はどこかに行ってしまった。
─────「えー!どこ行っちゃうのー!?」
ダルグはどこかに飛んでいく棍棒を前に、立ち尽くしているだけだった。
「オレの棍棒、どっか行っちゃったよ…トホホ……」
と思ったら、すぐに戻ってきた。
「えー……何なの、この棍棒……難しすぎる……」
ダルグは肩を落とした。─────
ガイアは肩を落とした。さっきのは、幻ってヤツか?でも、今ここにいるのは苦しむラング。
「今の大きな音は何だい?」
カウルが後ろを振り返る。
「なッ!あのマンモスが苦しんでる!?何が起こったんだい、ガイア!」
「分からない、分からないってヤツだぜ」
「さっきの音が原因か!?ラングは音に弱いのかい!?」
「いや、違うと思うってヤツだぜ」
「何でだい?じゃあ、何でラングは今苦しんでいるんだい!?」
カウルが食い気味に問う。
「ちょっと長くなるから、村に着いてから話すってヤツだぜ!」
「何だい。まあいい!この隙に逃げるよ!」
再び2人は走って逃げた。
山麓が見える。2人にとってはこの景色が希望の光のように思えた。
偵察隊が見事に村に帰還してきた。そこにはダルグがどっしりと待ち構えていた。
「さ、偵察の報告、してもらうぜ」
0.7秒でマンモスの足と頭を叩いたら速さのあまり衝撃波が出そうですけど、どうなんですかね。




