52話
旧軽井沢停留所で下車した。お日様も段々と上がってきたので、暑さと日差しの眩しさも増してきた。
「さてと、焼き団子を食べに行こうか」
いつも通りの笑顔でそのようなことを言う悠橙先輩。それが逆にちょっと怖いものを感じてしまう。
だが、悠橙先輩は歩こうとしない。店まであたしを先に歩かせたいようだ。
そこで機転を利かせる。
あたしはスマホをポチポチといじり始めた。
「姫輝さん? なにしているんです?」
外が梨琴で中の人が姫輝が、不思議そうにぽかんとしている。
「ちょっとお店の場所を調べているの。どこだったか忘れてしまって」
と、言ってみた。
これが正解であろう。
なにしろ姫輝が「食べたことがない」と言っているなら、お店の場所を知らないというのも当たり前である。
調べたところで何の問題もあるまい。
スマホで調べながら、悠橙先輩をちらりと見る。
自分の計画で欠点があったことに気づいたらしく、口元に手をあてている。
表情に悔しさや怒りのようなものは感じ取れない。どちらかというと、恥ずかしそうにしている。自分の行いに恥じたのであろうか?
そうであったら、もうこういったことはしないで欲しい。まあ、疑惑があるのも気持ちが悪いのかもしれないけれど、そこは目を瞑って頂きたい。
スマホで調べ終わると、二人に声をかけて焼き団子のお店に足を運んだ。
***
「いらっしゃいませ~」
お店に入ると、ちらほらお客さんがいる。あたしたちは空いている席に座った。
メニューを見て、店員さんを呼ぶために手を挙げると、お水を持ってきてくれた。
焼き団子を三人前頼んでしばし待つ。
その間、雑談。
「東京と比べたら涼しいね~」
「そうですわね」
雑談と言っても、あたしと姫輝である。
悠橙先輩は入ってこない。
友達同士ということで、気を遣ってくれているのだろうか? それとも何か他の計画を立てているのだろうか?
店員さんが焼き団子を持ってきた所で、あたしのその心配は、頭からぽろりと抜け落ちた。
「わぁ~、美味しそう」
焼き団子にかぶりついた。もちもちとしていて、醤油の香ばしさが鼻を刺激する。
そんなあたしの反応を見た二人もごくりと唾を飲み込み、我慢できないとばかりに焼き団子を食べ始めた。
悠橙先輩も姫輝も、それぞれに思う所があるのかあまり楽しそうに見えない。せっかくの旅行なので、あたしとしては楽しいものにしたい。
さて、どうしたものか?
結論はこうだ。
『とりあえず、あたしだけでも楽しもう!』
という訳で、抹茶かき氷も追加で注文しました。
え? 入れ替わりバレのことは気にしなくていいのかって?
なんか二人を見ていると、バレることを気にしてびくびくしているよりも、どうどうと楽しんだ方が、悠橙先輩も見ていて気持ちが良いと思う。
もしバレた場合、怒らずに許してもらえるくらいの信用を得ればいい。その為には、あたしはあたしらしくしているべきだと考えた。
まあ、店を出たらそんな考えは消えて、青ざめていた。
状況は……別荘の場所を事前学習したけど、実際に来てみるとどこに別荘があるのかピンとこない。
悠橙先輩はあたしと姫輝を見守るように、後ろを歩いて付いてくる。
姫輝とアイコンタクトを試みる。以前のウインクによる意思疎通は失敗したので、あまり期待はできないが……
『姫輝、別荘の場所がわからないよ』
怪訝な表情をする姫輝。
『は? トイレに行きたいんですか? なんでお店で行っておかないんですか!』
姫輝があたしの手をとり、手を繋いだ状態で少し早歩きを始めた。
どうやら通じてくれたようだ。そのまま別荘へと誘導しておくれ。
アイコンタクトが通じていないことに気づかないまま、無事に雉子島家の別荘に辿り着いた。
いつも読んで頂きありがとうございます。
相変わらず梨琴の伝えたいことが上手く伝わらないですね。
まあ、結果オーライとなっておりますが(笑)。
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