48話
「……なんか怪しまれている?」
「……さあ、どうでしょう? 確定はしていないけど、違和感は感じているみたいですね?」
「そうだよね~。ってあれ? じゃあ、今日、あたしと手を繋いだのは、あたしの反応を探るため?」
「そう言えば、手を繋いでましたね? どんな誘惑をしたんですか!?」
ぎろりとあたしに睨みを利かせる姫輝。あたしはふるふると首と手を振る。
「い、いや、誘惑なんてしてないよ! ホントにホント!」
この際、ついでに今までのことを確認する。謎のままだと気持ち悪い。
「入れ替わりの前って、姫輝と悠橙先輩って手を繋ぐこととかあった?」
「ないですわね! いくら私が甘えん坊だからと言って、それはないです!」
(甘えん坊の自覚はあるのね……)
会議をしていると、突然背後から声をかけられる。
「お待たせ」
「「うわぁっ!」」
「二人ともどうしたの?」
驚きのあまり、二人で思わず飛び退いてしまった。
人の多さでたこ焼き屋も混んでいるだろうと勝手に思い込み、油断していた。
きょとんと首を傾げている悠橙先輩。今の会話、聞かれてないよね?
「い、いや、なんでもないよ」
「そっか、はいこれ」
レジ袋からたこ焼きを取り出すと、あたしと姫輝に手渡してきた。
とりあえず、今の話は聞かれていなかったようでほっと胸を撫で下ろした。
安堵した私は、たこ焼きを口の中に放り込む。
とろりとしているが、熱くはない。温かい程度で火傷をする心配はない。作り置きされていた奴だろうな~。
花火を見ながら、ソースとマヨの味を堪能した。
口にタコ焼きを頬張りながら感傷に浸る。
隣には憧れの人がいて、最高のシチュエーション。
なのに、なんだろうな? この拭えない不安感は。
花火大会もいよいよクライマックスになり、花火が次々と轟音を鳴らしながら上がっていく。
その轟音が鳴りやむと、花火大会終了のアナウンスが流れ、人が次々と川の流れのように駅の方向へと歩き始める。
気をつけないと、人の波に流されて、逸れてしまいそうだ。
そこでふと考え付いた。
(こっちから手を繋いで様子を見るか?)
そっと手を繋ごうとするも、勇気が出ない。心臓の鼓動が先ほどの花火よりも激しく音を立てている感覚がする。
もたもたしているうちに、人混みに押された。
「わっ!」
その勢いで、悠橙先輩の手を握ってしまった。やってしまった。いや、そうしようと思っていたのだから、それでいいんだけど、もうちょっと心の準備が欲しかった。
握りしめた手が、握り返された。
ふと隣を見上げると、悠橙先輩は真剣な眼差し。
「大丈夫?」
「は、はいっ!」
街灯の明かりのせいか、悠橙先輩の目に熱を感じる。視線を合わせていると、こちらまで顔が火照ってきたので、顔を背ける。
そのまま何も話さずに、花火大会の最寄り駅まで着いた。
「それじゃあここで。おやすみなさい」
「「おやすみなさい」」
駅で姫輝と別れた。
悠橙先輩と二人きりだと不安なので、もう少し姫輝と一緒にいたかったが仕方がない。
今まで望んでいた悠橙先輩との二人きりが、今ではとても気まずい。
身体が入れ替わるという前例を聞いたことがないために、判断ができない。
帰りの電車の中で、悠橙先輩の顔をこっそりと覗き込んでみると、何かを考えているかのように見える。
私はどうすることもできないまま、家に帰り着いた。
いつも読んで頂きありがとうございます。
花火大会のシチュエーション。
友達や恋人?と行った記憶がないので「こんな感じか?」と頭を抱えました(汗)。
※子供の頃に家族(両親や兄妹)と行った記憶しかない。
ひょっとしたら友達とくらいは行ったかもしれないけど、記憶にない。
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