45話
花火大会の日。
浴衣姿の悠橙先輩が、いつもより大人びて見える。
いや、年上だからいつも大人びてみているけど、今日は尚更ね?
涎を垂らしてガン見して惚けていたあたしの髪に、手を添えてきた。
「姫輝……可愛いよ」
破壊力のある仕草と言葉。
脳内がオーバーヒートして、頭の中では何人ものあたしが音楽に合わせ盆踊りを踊っている。その最中、ピタッと音が鳴りやみ、脳内あたしたちは騒めく。
(は? 姫輝を褒めた? シスコン過ぎではないですか? これは由々しき事態。今日は……いや、今日もか。姫輝には頑張って貰わないと!)
打倒シスコンに燃えるあたしに、きっと今頃、姫輝は悪寒を感じていることであろう。
梨琴である姫輝と早く合流させるべく、悠橙先輩の腕を引っ張り急かす。
いそいそと、花火大会の会場に向かう電車に乗り、移動する。
進むにつれて、段々と浴衣姿の人が増えてきた。浴衣姿の人の増加に伴い、あたしのテンションも上がってくる。
(花火大会デートだ! デートだ!)
そこでぴたっと冷静になる。姫輝というお邪魔虫がいる。いや、梨琴の姿をしているのが姫輝なので、アプローチをするには姫輝の存在は必須なのだが……ああ、ややこしい!
一人で一喜一憂しているうちに、花火大会会場の最寄り駅に着いた。姫輝と待ち合わせをしている場所。
人で混みあっているので、LINEに連絡を入れてみる。
どうやら駅前のオブジェの前にいるようだ。
悠橙先輩に伝えると、突如手を握られる。
「人が多いから、はぐれないようにね」
優しい笑みを返され、頬が火照る。握られた手も熱く感じる。手汗は大丈夫だろうか? あたしの心音が花火の音よりも、豪快に鳴り響く。聞こえてしまっているのではないかと思うと恥ずかしい。
そんなお姫様の扱いは、一人の人物のチョップで斬られた。
外見梨琴の姫輝である。顔がふくれっ面になっている。
どうやらトリップしていた間に合流したようだ。
いつも読んで頂きありがとうございます。
区切り的に短くなってしまいました(汗)。
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