43話
「穴があったら入りたい!」
顔を両手で覆う姫輝。隙間から見える顔は赤面している。
ただいま、ファミレスで反省会中。
「あたしもだよ」
同じように私も両手で顔を覆う。顔から火が出そうなほどに熱い。
「梨琴がおかしなことをやらせるから! これからどんな顔して、に~にの顔を見ればいいのやら!」
「それはあたしもだよ! っていうか、なんでウインクをした!?」
「梨琴がやれっていうからでしょ!」
ムキになって責任を押し付けてくる。あたしも反論をする。
「いや、ウインクをしろとは言ってないよ! あたしがウインクしたのは合図だよ!」
「「……」」
お互いの連絡ミスに気づき黙り込んだ。
そして、熱を冷ますように二人でお水を口にする。ごくごくと冷たい水を喉に流し込み、少し頭も冷えたところでコップをテーブルにコトリと置く。
「「ああ~!」」
再び、二人で頭を抱えて悶えた。
「はぁ~」
しばらく悶えた後、冷静を取り戻した。いや、取り戻せた。姫輝はまだ悶えている。
姫輝も羞恥心の世界から帰ってきた。
とりあえず、注文した料理を二人で頬張る。
勉強後のご飯は美味しい。途中、逃亡という形になったけど……。
先ほどの出来事を思い出しながら咀嚼をし言葉を発する。
「かなり恥をかいたけど、あれで悠橙先輩のあたしを見る目が変わるかもしれないよね~」
「変な人という目で見られないといいですね……」
疲労困憊の姫輝は、ため息を吐きながら不穏なことを口にした。
「え? そんなことある? いや、ありえるのか? こんなキュートな女の子にウインクされたらドキドキしちゃうんじゃない?」
「……自分で言う台詞ですか?」
場を和ませようとしたジョークなのだが、真面目な姫輝には通じなかったようだ。
姫輝の言うことも一理ある。あたしは思考を張り巡らさせた。
「いいこと浮かんだよ!」
「……嫌な予感しかしないのですが……」
姫輝が眉をひそめて、まるであたしがこれから言わんとしたことを把握したかのような表情を作る。だが、言わせて貰う。
「今度、花火大会に行こうよ!」
ちょっと、ほっとしたような表情になる姫輝。
「あら、いいですわね。二人で浴衣とか着ていきます?」
そんなことを言う姫輝に補足説明をする。
「二人って言うか、三人だよ? もちろん浴衣で」
「!!」
『三人』という言葉で、あたしの計画に気づいたようだ。
「まさかお兄様じゃないでしょうね!?」
「まさかのお兄様だよ」
花火大会の話で笑顔になっていた姫輝の表情は、険しくなった。
そりゃあ、あたしとの今までの付き合いで分かるよね。さっき、大恥をかいたばかりだし。
姫輝は首がもげんばかりに振った。
「無理無理無理無理!」
そんな壊れたからくり人形みたいな姫輝の手に、あたしはそっと手を添えた。
「人間、目標は高く持つべきなんじゃないかな? 諦めたらだめなんじゃないかな?」
「それは梨琴さんにとって都合のいいことだからでしょう! 私には何のメリットもないじゃないですか!」
「うん、まあ、おっしゃる通り、姫輝にとって良いことは何もないね。でも、今まで育んできた友情というのだろうか。あたしは元の生活に戻っても、姫輝の為に頑張ることはできるよ。だから、姫輝も頑張ってくれ」
綺麗ごとで攻めてみた。その効果があったのか、姫輝は今にも泣きそうな顔をしている。
「梨琴さん、ずるいですよ……」
あたしの名台詞に感動したのか?
「梨琴さんにとって、いいことしかないじゃないですか。補習は逃れるし、梨琴さんとしての成績は上がっているし。私なんて、姫輝としての成績が下げられている気しかしないのですが……しかも実の兄に羞恥プレイをさせるとか」
感動ではなかった。対価がこれっぽっちも割に合わないという話だった。
「い、いや、あたしは毎日運動を頑張っているよ? 姫輝って運動能力皆無じゃん」
「皆無とか言い方がひどくないです!?」
あたしの発言に目を吊り上げる姫輝。いや、間違ったことを言っていないと思うのだが。
「まあまあ、とにかくあれだよ。こうして入れ替わったのも仲良くなったのも何かの縁。よろしくお願いします」
あたしが頭を下げると姫輝も「はあ」と返事をして頭を下げた。あたしはそれを肯定の意味ととらえ、願望全開にする。
「じゃあ、三人で花火大会に行くこと決定ね」
「え? え? 結局、そういう話になるんですか?」
「なるんです」
こうして花火大会会議は一方的に話をつけて終わった。
後は、家に帰ってから、悠橙先輩を誘うのみ!
いつも読んで頂きありがとうございます。
ファミレスが頻繁に出て、作者のリアル情報?の少なさを感じます(汗)。
日頃、行動範囲が狭いんですよ……。まあ、ファミレスに行くことも稀ですが、以前の記憶を頼りにしています。
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