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入れ替わりで激やば!  作者: 藤谷 葵
第四章:仲良しになってヤバい

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40話

 伊豆高原旅行の最終日。


 食事を終えると、あたしたちの客室内は戦場と化した。


「早く荷物をまとめて! バスが来ちゃうよ!」


 陶原さんのその言葉で、あたしたちは慌てて荷物をまとめる。

 慌ただしくチェックアウトをして、バス停へと向かう。


「バス、行っちゃった?」


 あたしの言葉に陶原さんがスマホの時間と、バスの時刻表の時間を照らし合わせる。


「まだ大丈夫みたいだね」

「「はぁ~」」


 あたしと比那田さんは、安堵のため息を吐く。運動能力皆無組には、バス停まで走るのはしんどかった。


 しばらくするとバスが来て、それに乗って伊豆高原駅まで向かった。

 バスに乗り込むと、窓の外の流れゆく景色を眺めながら思う。


(長いようで短い旅行だったな。あっという間に終わったよ。また来年もみんなでこれたらいいな。その時は姫輝も一緒に……いや、この場合、あたしも一緒にってなるのか?)


 駅に辿り着くと、電車がちょうど来た。いや、正確にはちょうどドアがしまった。


「「「あっ!」」」


 三人の叫び声がハモる。電車は無情にも、出発してしまった。


「あちゃ~、次の電車で帰るしかないね。その間どうする?」


 あたしが質問をすると、比那田さんが口を開く。


「お土産でも見ていましょうか」


 そして、お土産を見る。二泊三日だが、楽しい旅行であった。

 最後のお土産を購入して、駅のホームの長椅子に腰掛けて、今度は電車を逃さないように待つ。


 次の電車が来て、あたしたちは乗り込む。

 あたしは一番最後に乗り込む際に、ふと背後を振り向き感傷に浸る。

 発車のベルが鳴り始めたので、慌ててあたしも席についた。

 電車はゆっくりと走り始め、徐々にスピードを上げていく。

 楽しかった日が段々と遠ざかる思いがして、少し切なかった。


 段々と景色が都会化して行く。それはそれで懐かしさを感じる。


「姫輝に会うのが久しぶりに感じるなぁ~」


 身体が入れ替わってから、毎日のように姫輝とは交流があった。入れ替わり以前では想像もできない仲の良さ。


(あああああ! 姫輝に旅行のことを報告したら怒られるかな?)


 両手で頭を抱えて身悶える。


「……なにしてるんです?」


 比那田さんの呆れたジト目と陶原さんの苦笑い。あたしはその場を取り繕う。


「……いえ……なんでもありません」


 そんなやり取りをしながら、東京へと帰り着いた。

 解散をすると、あたしはお土産を渡すために姫輝、いや、梨琴の家に足を運んだ。


 久しぶりの我が家に着いた。

 薄情ながらにも、悠橙先輩に懐き、ほぼほぼ姫輝の家にいた記憶しかない。


 インターホンを押すと、しばらくしてから返事が返ってきた。


「はい……って梨琴ですか」


 その人物は返事の後、名前を小声で呟いた。

 玄関のドアはすぐに開けられ、あたしはその人物の顔を確認すると、こちらも小声で話しかけた。


「姫輝にお土産を買ってきたよ」


 その言葉に姫輝の表情は、ぱぁ~っと明るくなる。


「な、なんですかね? 早く下さいよ」


 姫輝の催促に、あたしは苦笑いをする。


「とりあえず家の中に入れてよ」

「そ、そうですわね」


 あたしは大荷物を抱えて、「お邪魔します」と姫輝、いや、あたしの部屋へ入った。


「ふぅ~」


 荷物を置いて、一息つく。


「梨琴さん、今日旅行から帰ってきて、そのまま来たんですか?」

「うん、そうだよ。早く姫輝にあげたくて」


 そう言うと、鞄から二つのお土産を取り出す。大室山キャラクターとテディベアのぬいぐるみである。


「はい、これ」


 あたしはそう言うと、姫輝に大室山キャラクターを手渡す。


「これは……」


 戸惑う姫輝。うん、お嬢様の姫輝には、ゆるキャラ的なものは分からんよね。


「それはあたしへのお土産。元に戻った時の為に、部屋にでも飾っておいて」


 そして、もう片方の手に持ったテディベアのぬいぐるみを見せる。


「この子は姫輝に似合いそうだから、姫輝の部屋に飾ろうと思うんだ。ようするに、元に戻った場合を考えてのお土産」


 あたしがそう言うと、納得したかのように頷く。


「なるほど」


 あたしからテディベアのぬいぐるみを受け取ると、大室山キャラクターと見比べている。


「どしたの?」

「……いえ、両方とも欲しいような……」

「ある意味、両方貰えているようなものじゃない? 入れ替わり中は姫輝は大室山キャラクターを持っているし、元に戻ればテディベアのぬいぐるみを持っているのだから」


 姫輝は眉間にしわを寄せて唸る。


「ん~、そうなんですけど、なんかそうじゃないんですよね」

「と言うと?」


 そこで姫輝は、ぱぁっと明るい表情になる。


「いっそのこと、私へのお土産と言うことで、両方ともこの部屋に置いてくれませんかね? 元に戻ったら、姫輝としてまた受け取るということで」

「つまり……お土産を独り占めと言うこと?」

「……まあ、そうなりますわね……」


 今度はバツが悪そうな顔になる。以前は冷たそうな印象だったのに、姫輝と日々を過ごすようになって、くるくると色々な表情を見せるようになった。これが本当の姫輝なのかもしれない。

 だが、お土産の話は別である。


「いや、あたしのお土産が手元に残らないじゃん!」


 姫輝は四つん這いになり、あたしの他のお土産に手を伸ばす。他のお土産は定番のお菓子である。


「これが梨琴さんのお土産と言うことで」

「いや……消耗品のお土産は、お土産としてカウントされないかな。思い出として残らないじゃん」


 そんな時、部屋のドアをノックする音が聞こえ、すぐにそのドアは開かれた。


「いらっしゃい」


 二人分の飲み物をオボンに乗せたお母さんが、やってきた。お母さんが飲み物をローテーブルに置くと、あたしはお土産のお菓子を渡す。


「お母……じゃなくて、これお土産です」

「あら、ありがとう」


 うっかり、「お母さん」と呼ぶところでした。言い間違えそうになったのを気づかれなかったようなのでセーフ。

 お土産を手にして部屋を出ていくお母さんの背中を見送る。早く元に戻りたい気分になってきた。


 帰るのが寂しくなり、それとなく時間を延ばすように、旅行の土産話を続けた。

いつも読んで頂きありがとうございます。


伊豆高原からの帰りのシーン。

梨琴の内心が少しくどいかな?と感じましたが、修正案が浮かばなかったので、そのまま投稿することにしました(汗)。

一応、下読みして推敲作業をしたのですが……。


応援や感想をお待ちしております。

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― 新着の感想 ―
いつも楽しく拝見させて頂いています。 後書きの件ですが個人的に非常に良かったと思いますよ。 姫輝に渡すお土産も姫輝が可愛らしく思えました。 全体的に良かったと思います。
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