33話
伊豆高原の旅行当日。
東京駅の集合場所で、比那田さん、陶原さん、恵野さんの三人の姿が見えた。
あたしが手を挙げて声をかけると、三人も挨拶をしてきた。
いや、訂正。三人ではなく二人である。一人は頷いただけである。その一人とは不思議ちゃんの恵野さん。
あたしたちは早速、東海道新幹線のホームへと向かった。
「時間はまだありますね? 駅弁でも買いましょうか?」
「「さんせ~い」」
相変わらず、恵野さんは頷くだけ。
まるで、恵野さんの口は食べる為だけについているような気がしてきた。
売店で駅弁を眺める。色々あるが、出来立てのお弁当ならともかく、冷えてしまっているお弁当は当たりはずれがある。
それを考慮して、私はありきたりな牛弁当にした。
比那田さんと陶原さんも選んでいる。
恵野さんに目をやると、両手にレジ袋を持っていて、何気に聞いてみる。
「恵野さん、その両手のレジ袋、何を買ったの?」
「んっ」
その一言だけ呟き、レジ袋を見せつけてくる。見ることを許可してくれたという認識でいいんだよね?
あたしは恵野さんが両手に持っているレジ袋の中を覗き込んだ。
そこにはお弁当が計五つほど入っている。その他おにぎりが二つ。
「……」
言葉を失い、あたしは乾いた笑顔を恵野さんに向ける。
(お弁当も沢山食べるんかい!)
そんな何とも言えないやりとりをしていたら、他の二人も買い終えたようだ。
「それじゃあ、そろそろホームに行こうか」
陶原さんがそう言うと、みんなでぞろぞろとホームへ向かう。
そして、しばらくホームで待つ。
恵野さんは、レジ袋からおにぎりを取り出し、もぐもぐと食べ始める。
見慣れた光景なのか、比那田さんと陶原さんは二人でおしゃべりをしている。
あたしはというと、困惑している。
それはあたしも二人の会話に混ざるべきか? それとも恵野さんと会話をするべきか? いや、恵野さんは食べているから、話しかけるのもどうかと思う。それ以前に、話しかけても大した反応もないであろう人と話しても、すぐに気まずい空気になりそうだ。まあ、気まずいと思うのはあたしだけで、恵野さんは気にしなさそうだけど。
あたしは「早く新幹線が来ますように!」と願った。
熱海駅に着くと、東京にいたより夏らしさを感じる。場所がいかにも『夏です!』という所だからかもしれない。
伊東線に乗り換え、伊東駅へ。そして、伊東駅から伊豆急行線に乗り、約一時間三十分の旅路を経て、伊豆高原に辿り着いた。
「さて、では予定通り、まずはテディベアミュージアムに行きましょうか」
比那田さんがそういうと、あたしは質問をする。
「荷物はどうするの?」
「あ~、そういえば、そこは決めてなかったね」
陶原さんも思い出したかのように、あたしの質問に同意した。
初日に伊豆高原駅近くにある、テディベアミュージアムを見学に行くことは決めていた。だが、荷物を持っていくかどうかは決めていない。
「どうしますかね? 方向的には保養所のある方向に向かうのですが……」
比那田さんが困った表情をしている。
そこであたしは提案してみる。
「急ぐたびでもないんだし、駅のコインロッカーに荷物を入れていって、後でまた取りに来たら?」
その言葉を聞き、比那田さんの顔は、ぱぁっと明るくなる。
「そうですよね。急ぐたびではないんですし!」
フォローされたことが嬉しいのか。それとも崇拝していると思える姫輝の提案が嬉しいのか。まあ、貴女が崇拝している姫輝の中の人は、別人なんだが……。
あたしたちは荷物をコインロッカーに突っ込んで、テディベアミュージアムに向かった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
恵野さん。
『大げさな方が盛り上がりがいいだろう』と考えている作者。
お弁当5つは多すぎたかな?(汗)。
こんな私が完結できるように応援して頂けたらと思います。
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