26話
さて、ライバルの比那田さんとの関係は果たして?
「流石私のライバルですわ!」
更衣室で制服に着替えていると、比那田さんがそのようなことを言ってきた。
(あの程度でライバルとして競い合うとか、類は友を呼ぶってやつか?)
正直、あまり関わりたくない。こういう輩は、大抵めんどくさい。あたしの推測だが、勉強で負けたことにより、ライバル意識が芽生えたんだろうな。じゃなかったら、姫輝も比那田さんも鈍臭いのに、運動で張り合うわけがない。
姫輝はどう対応しているのだろう? 上手くあしらっているのか? それとも相手になっているのか? そもそも眼中にないのか?
あたしは言葉に困り一言。
「はあ……」
その言葉を聞いた比那田さんはというと……。
「どうしたんですか! 姫輝さん! いつもと違うじゃないですか!?」
あ、対応を間違えたか?
だが、後には引けない。とりあえず、言い訳を試みる。
「そんなことありませんわ。比那田さんのことは、いつもライバルと思っています」
「とうとう私をライバルと認めて下さったのですね!」
そういうと、比那田さんは身体をくねくねとして、身悶えている。
次の瞬間。急にビシッとした態度になり、左手を腰に当てて、ビシッと右手であたしを指差す。
「私の実力に、危機感を覚えたのですね! 学年一位は私が頂きますから、首を洗って待っていて下さい!」
その言葉だけ残し、華麗に演出気味で更衣室から去っていった。
その場に取り残されたあたしは、口がぽかんと開いてしまう。
(対応を間違えたか?)
また姫輝に怒られそうな予感がした。
怒られる想像から我に返り、あたしも急いで着替えを済ませ、教室へと戻る。
そこにはおかしな光景が繰り広げられていた。
「雉子島さんが、比那田さんをライバル認定したんだって」
そんなひそひそ声が聞こえてきた。
(いや、ライバル認定って言っても、今の姫輝は外見だけだから、比那田さんは余裕で勝てるでしょう。むしろ、あたしが負けたら姫輝に何を言われるやら……)
そういう意味では、自称ライバルの比那田さんを、あたしもライバル視しなければいけないかもしれない。
姫輝のクラスメイト情報ノートを取り出し、比那田さんのページを探る。
そこに書いてあったのは……。
『人のことをライバル扱いしてくるけど、無視して下さい。面倒ですから。そもそもテストの順位が二十位台なのに、ライバル視してくるとか理解ができません』
(やらかした!)
ライバルと認定してしまった。それにしても二十位台なのに、勝負を挑んでいたのか。まあ、それは向上心があっていいことなのか? ちなみにあたしは百位以下である。今のままだと、勝負にならんな。
余計なやっかいごとが増えた一日だった。
家に帰ると、あたしは鞄を投げ出し、制服を脱ぐ。そして、下着姿でクローゼットの中を漁る。
「う~ん? 普段、運動をしていないのか? 運動に適した服がないじゃない」
私はどちらかというと、頭脳派というよりも、脳筋派である。どちらかというとだよ?
あまりにもひどい運動能力なので、あたしらしくない。あたしらしさを求めるために、ジョギングでもしようかと思ったのだが……学校のジャージでいいか。
今日の体育で使ったジャージを取り出し、それを着用する。
(近所を散策がてら走りますか!)
そう意気込んで、家を出た。
車どおりが少ない桜並木。流石高級住宅街である。そんな中を走っていると、公園入口の標識が見えてきた。
興味本位で公園内に入っていく。住宅街をジョギングするのはちょっと恥ずかしいけど、公園内は同志たちが同じように走っている。あたしもその中に混ざり走る。
姫輝の運動能力の低さの為、ちょこちょことインターバルトレーニングではあるが。
インターバルの歩きの時に、公園の景色を眺める。木は青々と葉が茂っている。既に新緑の時期はすぎているので、色濃い緑色の葉をしている。
(身体は重く感じるが、景色のおかげで気分は清々しいな)
いや、身体が重いというのは運動神経的なものである。姫輝の名誉の為に、そこは付け加えておく。
身体があたしになじむように、陽が暮れてくるまで頑張った。あたしはヘロヘロになりつつ、帰路についた。
夕食後、勉強に勤しんだ。いや、勤しみたくはないが、授業について行くのに必死である。
藪垣梨琴だったときは頑張らなかったが、雉子島姫輝の中に入っていると、頑張らざる負えない。
渋々勉強をしていると、ドアがかちゃりと開く。
に~にがトレイに飲み物を入れて来てくれた。
「いつも勉強お疲れ。一息ついたらどうだ」
そう言い、あたしの手元に飲み物を置いた。アイスロイヤルミルクティーである。家でも普通に飲んでいるのか。セレブ感満載だな……。
「ありがとう!」
あたしは勉強していた手を休め、ストローを口にした。
「甘っ!」
「え?」
「い、いや、なんでもないよ」
姫輝のやつ。涼しい顔をしてロイヤルミルクティーを優雅に飲んでいたが、こんな甘いので飲んでいたのか!? 色々な意味で甘ちゃんだな!?
勉強中に甘さはありがたい。だが、必要以上に甘すぎる。もはやスイーツを食していると言っても過言ではない。
悠橙先輩が部屋を去った後、甘いけど苦々しい顔をしつつロイヤルミルクティーを飲むあたしだった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
ストック分の小出しです(汗)。
ロイヤルミルクティーって甘くて美味しいですよね。
某メーカーのペットボトルのロイヤルミルクティーが好きな作者です。
こんな私が完結できるように応援して頂けたらと思います。
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