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<再編中>幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 —Saga "Vairo" et "Edius"—  作者: 狼駄
第5章 紫色の"遺"志(ᚹᛁᛇᛚᛖᛏ ᚹᛁᛚᛚ)
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第51話 永遠の旅路

「な、何なのアレェェェェ!?」

「我等がロッギオネ神殿で怠惰たいだむさぼっていた間にこんな奴が………。フフフッ」


 こちらはレアットの落雷にやられている側。エディウスと賢士けんしルオラが同じシグノに騎乗している。

 周囲の取り巻きは次々とやられてゆく中、流石にエディウスは、シグノをたくみにあやつり回避している。


「あ………。あ、あれ。戦陣せんじんの中心にいた筈なのにいつの間にか先頭に移ってるあの頭の白い御方おかたはエディウス様じゃないのっ?」

「アアッ!? 何だテメエ、敵の親玉に()って何なんだよっ! ………だがそうかよっ、アレがエディウスか。へッ!」


 白髪で小柄ながらその美しい容姿ようし相反そうはんする大剣グレードソード竜の牙(ザナデルドラ)を握っているエディウスは、神々(こうごう)しくて非常に目立つ。

 その神につかえることを辞めたエターナにとっては恐怖の対象でしかない。

 そしてエターナからの声を聞いたレアットは、最強の標的に舌なめずりする。


「喰らいやがれぇぇ!!」

「…………我が言之刃フォグラマの風を心に吹き荒れる嵐に変えよっ! 『心之嵐クオレテスタ』!」


 両手の巨大剣で小さな円を描くように力強く回転させて、崖を降りたときの数倍はあろうかという二本の竜巻を生み出して、エディウス等の方へ向けたレアット。

 それに対し既に途中まで詠唱を終えていたルオラは、自らの心中に吹き荒れるたましいの嵐を生み出してぶつける。

 本来なら言の刃(フォグラマ)で風を起こした後に使って嵐に変化させる奇跡なのだが、賢士最強のルオラは、それ抜きでやってみせる。


「相殺しただとっ!? 益々(ますます)おもしれえじゃねえかっ!」

「る、ルオラ様の心之嵐クオレテスタと同等!? ………こ、これなら良い戦いが出来るかも………」


 レアットはせっかく生み出した嵐を蹴散けちらされたのいうのに、むしろテンションを上げてゆく。

 恐怖一辺倒(いっぺんとう)だったエターナだが、その様子を見て少しだけ希望が湧いてきた。


(す、少しは私だって良いとこ見せないとっ!)


 エターナはレアットのことを信じ、両目を閉じて意識を集中する。深呼吸して新鮮な酸素を身体にも心にも巡らせてゆく。


「ディッセオ・オーレ! 生命の泉、枯渇こかつし、命の木枯れ果てるとき!その軌跡きせき終焉しゅうえんを告げる! さあ神への遺言ゆいごんを告げよ! くがよい、終わりなき道へ!」

「あ、あの女は、まさかエターナっ!?」


 閉じていた目をカッと見開き、指先で印を宙に描きつつ勇敢ゆうかんを声に載せるエターナ。

 それを聞いたルオラが存在に気づく。らしくもなく顔が恐怖で引きつっている。


「『終わりなき旅路ストラーダ・インフィニータ』!!」

「ま、まさか禁忌きんきのそれをっ!? 最高司祭グラリンと同じ奇跡をあの小娘がっ!?」


 エターナが宙に描いた印。エディウス等の騎乗するシグノの頭上に移動し、神々しい光を放ちながらその身体を全て覆う。

 白く美しかった筈の竜の肌が一気に色褪いろあせてゆき、さらにボロボロに全身が崩れてゆく。

 この奇跡は戦の女神(エディウス)に仕えし司祭が、攻撃に転じることの出来る唯一の術。

 生命の泉(プリマベラ)はるかに凌駕りょうがする細胞分裂をうながして、対象者の寿命をまばたきで終わらせる。

 危険すぎて禁忌とされている奇跡なのだ。


 当然()()を失ったエディウスとルオラは地面に投げ出された。


「ククッ! やってくれるっ!」


 落下するエディウスが竜の牙(ザナデルドラ)を片手で地面に叩きつける。その反動で浮かび上がり地面に激突するのを防ぐ。

 愛するルオラの手をギュッと握り、救出することも忘れない。


「おぃっ! テメエっ、やるじゃねえかっ!」

「そ、それより良い加減エターナって名前で呼びなさいよっ、この馬鹿レアットっ!」


 素直にその結果を感心するレアット。そんな真っ直ぐな賞賛しょうさんを受ける心の準備が出来てなかったエターナは、少し顔を染めながら文句を言った。


「ウラアァァァ!!」


 レアットは次々と竜巻を繰り出してエディウスに浴びせてゆくが、竜之牙(ザナデルドラ)で両断されてしまう。


「アーハッハッハッ! 良いっ! 良いぞ貴様ァ!」

「アンタもなっ、エディウスさんよぉぉ!!」


 互いに剣術で勝負している筈なのだが、いずれの力も特殊過ぎて凡人ぼんじんには理解出来ない。


「レアット………相談があるの」

「おぅ、何だよやぶから棒にっ」


 レアットの大きな背中に自分の背中を合わせるエターナ。

 まるで背中は任せてというていなのだが、実際には背中に隠れたが正しい。


「ここから先、私は回復やサポート役に徹するべきなんだろうけど………それって必要?」

「アアッ!? よく分かんねえけど、要するに”後はヨロシク”ってことか? 良いぜっ、元々そのつもりだったんだ。あの白い奴(シグノ)殺っただけでお前は、良い仕事したぜっ!」

「わ、判った!」


 やり取りが終わると物陰ものかげを探して一目散いちもくさんに逃げ込むエターナ。

 彼女は戦線離脱……かと誰もが思いきや少し違った。


戦の女神(エディウス)よ! その偉大いだいなるお力で悪しき力を全て封じる奇跡の盾(スクード)を!」

「なっ!? よ、良くもあの小娘~っ!」


 物陰から突然巨大な光の矢のようなものが放たれる。

 見た目通りの攻撃ではないが、ルオラだけでなくこの場にいる奇跡の御業みわざを主力の攻撃としている全ての連中が、やられたと頭を抱えたくなる。


「逃げたんじゃねえのかっ? 一体何をやらかしたっ!?」

絶対魔法防御アンチマジックシェル……って難しいか。とにかくここら一帯(しばら)くは奇跡も魔法も全部無効よっ! せいぜい頑張んなさいっ!」

(もっともアンタの攻撃自体が奇跡そのものだと思うけどね)

「なっ! ……ってそんな事も出来んのかよっ! うっしゃあァァァ! 最高の演出だぜっ!」


 これまで以上のハイテンションで、ガッツポーズからエターナに向けて親指を立てる。

 レアットにとって最高の舞台を作り上げた相手に向けられた最高の賛辞さんじ

 実は大体の司祭はこの奇跡を行使こうし出来るので、それ自体は大したことではないのだが、使ったが最後。

 自らの首を絞める行為こういなので余程条件がそろわない限り使わないのだ。


「うらあぁぁぁっ!!」


 またも竜巻を生み出すレアットだが、何と自らその中に飛び込んでしまう。そしてそのまま宙へと舞い上がると、両腕を広げて巨大剣二刀流を左右のシグノと騎乗している連中の首を狙って叩き込んだ。


 人間達はおろか白い竜(シグノ)ですらも、断末魔だんまつますら上げる間もなく首を落とされた。


「くうーっ! 能力で殺すのもいいがやっぱ生身なまみを斬るのはたまんねえなっ! 感触がダンチだぜっ!」

「うっわーっ、えっぐ………。やっぱりアイツラファンがどうこうじゃなくて、暴れたくてきただけじゃないの」


 ボタボタッとゴミのように降って来る首と死体を目の当たりにしながら、エターナはつぶやくのであった。

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