十三話 意外な犯人
シックル・セイワンのプレイヤーからの通称は「乙女ゲームに出るべきではない男」である。
何故なら彼の一番は主君であるゴルド・ワード第二王子。
それは好感度をいくら上げても一切変わらない。
シックルはゴルドと知り合いになった翌週に登場するが出会いは最悪だ。
王子に近づくな平民女と出会い頭に罵倒し、腹を立てたヒロインと戦いになる。
そしてボコボコにされゴルドに仲直りを仲介されることでやっとヒロインとシックルは知り合い関係になる。
その後もゴルドとヒロインの仲を妨害し、隙あらばヒロインを退学させようとしてくるのだ。
これはゴルドルートでもシックルルートでも変わらない。
ただシックルルートでは彼が何故そこまでヒロインを敵視しているかの理由がわかる。
しかし、それだけだ。
放課後一緒に帰ろうと誘っても「何故平民女などと」とすげなく断られる。
好感度を大分上げても「ゴルド様の護衛だ」で断られる。
週末デートにこぎつけても五回に三回は「急用が出来た」と当日キャンセルをされる。
バレンタイン、クリスマス、新年、修学旅行も彼はゴルド王子の護衛をしている。
そのせいでシックルとのイベントは少なく、そしてゴルドとのイベントには皆勤状態。邪魔である。
「主君より女を取る騎士なんて死ねばいいんです」
そうライターが言い切って燃やされたらしいが、とりあえず恋愛ゲームのセンターにいるべき人物では無い。
銀髪長身の学生騎士という外見設定とゴルドとの主従関係に一部に熱烈なファンこそいたものの人気は下の方だった。
「アンジェリーナの追放を企てていたのは貴様か」
「何の話だ!」
シックルはゴリアテッサの台詞に尻尾を逆立てるように噛みつく。
学園を牛耳るだけでなく暗黒教団さえ壊滅させた女傑相手に一歩も引かない勇気だけは大したものだ。
何度床に沈められても敵意を剥き出しに剣を向けて来る相手などゴリアテッサにはいなかった。
だからこそゲーム内の彼女もシックルを殺すのは後回しにしていたのだろうか。
すらりとしながら筋肉質な長身に神秘的な銀の髪。
学生服に帯剣は校則や治安的にどうかと思うが腰の細さが強調されている。
それがシックルに本人が気づかない無自覚の色気を付与していた。
いや、気づかないからこその艶だろうか。
「ふむ……」
「何をジロジロ見ているっ」
「中身は駄犬だが外見はそれなりだと思ってな」
「なっ」
新鮮な気持ちでシックルを品定めしゴリアテッサは呟く。
それに王子の護衛剣士は驚いたように声を上げた。
「きっ、貴様王子だけでなくこの俺まで手籠めにしようと……!」
顔を真っ赤にしながら抜刀しようとするシックルの腕をゴリアテッサは捻りあげた。
「ぐっ」
「徒手の女相手に迷わず剣を抜こうとは大した騎士様だ」
「お、お前など女と思ったことはない!」
そう痛みに顔を歪めながらシックルは気丈に言い返す。
玩具としては面白い、ゴリアテッサは悪役令嬢らしくそう思った。
そしてアレに似ていると。
「ならば貴様こそ敗北した姫騎士のように扱ってやろうか……?」
「なっ……!くっ、ころ」
「およしになってください、ゴリアテッサおねえさま」
ゴリアテッサの丸太のような腕にそっと白い手が添えられる。
「ゴルド……」
「おねえさまがご機嫌斜めな件にシックルは関わっておりません」
そうほんわりとした笑みを浮かべゴルド第二王子は言った。
彼はジューダスの妹のマリアに似た雰囲気を持っていた。
(実際、属性が被っている部分はある)
高貴な姫や聖女を男にしたならばゴルドいう姿になるのだろう。
ゲーム内でラスボスに囚われ助けを求めるポジションにいるだけはある。
「ゴルド、犯人を知っているならば速やかに吐け」
「犯人はおねえさまの信奉者です」
「……何?」
思わずゴリアテッサはシックルを掴んでいた手を離した。
「いだっ!」
そのまま床に落とされた剣士が悲鳴を上げるが心配する者はいない。
「おねえさまは最近雰囲気が優しくなられました、それは変化です」
ゴルドはペンと箸以上の重さを知らないような細指をゴリアテッサから離した。
そして祈るように自らの指を絡め合う。
「僕は昔のおねえさまに戻ったみたいで嬉しいけれど……おねえさまが愛でては捨てた者たちは、あの娘に嫉妬したようです」
「……下らぬことを」
「ふふ、流石ゴリアテッサおねえさまはこの学園のマ首領ナですね。恐ろしい程の人気だ」
今頃アンジェリーナさんは校舎裏に呼び出されている筈です。
そう人差し指を自らの桃色の唇に触れさせゴルドは清楚ながらも妖しく微笑んだ。
8/27にコミカライズ1巻が発売されます。
宜しくお願い致します!




