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花屋は本日も通常営業です  作者: 花束 ねる


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第4話 固定配置は安定雇用ではありません


「おはようございます。本日の配置を伝達します」

「キク。仏花」

「おう」

「ガーベラ。カジュアルフラワー」

「はーい」

「カーネーション。仏花、カジュアルフラワー」

「はいはい。掛け持ちね」

「はい」

「今日はちゃんと使われるといいね」

 パキラが言った。

「今日は私が一番だから」

「何が?」

「使われるの」

「昨日一本だけ残ってたのに?」

「だからだよ。昨日は昨日。今日は新しい子も来てるし」

「じゃあ先輩だ」

「そういうこと」

「一本だけだけど」

「うるさい」

「パキラ。配置変更なし」

「固定配置」

「はい」

「俺も安定」

「売れてないだけじゃない?」

「固定配置」

「便利だね、その言葉」

「便利だよ」  



 十五分ほど後。

 カーネーションはカジュアルフラワーに使われていた。



 午前中。


 店員が鉢物売場を確認していた。

 パキラの前で止まった。

 葉を持ち上げ、じっと見た。


「何?」


 別の葉を持ち上げた。

 今度は裏側まで確認した。


「何?」


 カジュアルフラワーの売場から、カーネーションが言った。

「すごい見るね」

「やっぱり?」

「うん。すごい見てる」


 店員が鉢を持ち上げた。


「なんで?」

「何かした?」

「してない」


 店員が土を確認した。


「何見てるの?」

「知らない」


 店員が新芽を確認した。


「大丈夫?」

「たぶん」


 店員が傷んだ葉を持ち上げた。


 パチン。


「あ」

 切った葉を手に、その場を離れた。


「…………」

「切られたね」

「パキラ。配置変更です」

「…………」

「大丈夫じゃなかったね」

「待って」

「はい」

「なんで?」

「葉に傷みが確認されています」

「固定配置は!?」

「終了します」

「終了するの!?」


 店員がパキラの鉢を持ち上げた。

 そのまま出口へ向かった。


「待って待って待って」

「いってらっしゃーい!」

「カーネーション!」

「私はもう仕事中だからねー!」

「だから何だよ!」

「固定配置www」

「仕返ししてるだろ!」

「してるwww」

「認めるな!」

 パキラはそのまま出口へ運ばれていった。

「愛さん!」

「はい」

「俺どこ行くの!?」

「屋根のある屋外へ移動します」

「外!?」

「はい」

「なんで!?」

「日照量を確保するためです」

「店内じゃダメなの!?」

「日照量が不足しています」

「俺は!?」

「屋外です」

「なんで!?」

 パキラは運び出された。



 屋外。

 パキラは屋根の下に置かれた。

 店員はそのまま売場へ戻っていった。


「…………愛さん」

「はい」

「ここ、店じゃないよね?」

「店舗敷地内です」

「そういう意味じゃない!」

「はい」

「客から俺、見える?」

「見えにくい位置です」

「商品だよね?」

「はい」

「販売するんだよね?」

「はい」

「誰が俺を見つけるの!?」

「販売は可能です」

「可能かどうか聞いてない!」

「はい」

「俺、ここで何するの?」

「日照条件の改善と、過湿状態の解消を図ります」

「…………つまり?」

「ここにいます」

「それだけ!?」

「はい」



 昼。


 雨が降った。

「愛さん」

「はい」

「雨なんだけど」

「はい」

「外なんだけど」

「はい」

「戻らないの?」

「屋根があります」

「雨だよ!?」

「直接雨は当たりません」

「店内は!?」

「日照量が不足しています」

「店内どんだけ暗いの!?」



 閉店時刻になった。


「本日の営業を終了します」


 店員がパキラを持ち上げた。

 そのまま店内へ向かった。


「何?」

「店内へ移動します」

「戻れるの!?」

「はい」

「やった!」


 パキラは鉢物売場へ戻された。


「おかえりー」

「ただいま」

「戻ってきたね」

「…………あれ?」

「何?」

「まだいるじゃん」

「いるよ」

「仕事してたよね?」

「してるよ」

「朝、一番に使われたよね?」

「使われたよ」

「…………売れてないじゃん」

「うるさい!」

「人気者」

「雨だったから!」

「固定配置」

「うるさい!!」

「やっぱり便利だよ、この言葉」

「便利じゃない!」

「便利だよ」

「じゃあ固定配置の人は?」

「戻ってきた」

「よかったじゃん」

「本当だよ」

「もう外じゃないんだ?」

「…………」

「何?」

「愛さん」

「はい」

「ここ、俺の場所だよね?」

「はい」

「………じゃあ明日は?」

「日中は屋外で管理する予定です」

「…………」

「www」

「笑うな!」

「また外www」

「うるさい!」

「じゃあなんで今戻したの!?」

「閉店したためです」

「…………俺、閉店したから戻されたの?」

「はい」

「………明日の朝、また出すの?」

「はい」

「毎日?」

「当面、継続します」

「固定配置どこいった!?」

「www」

「笑うな!!」



 翌朝。


 店員がパキラの前で止まった。

 パキラを持ち上げ、そのまま屋外へ運んだ。

 屋根の下に置くと、売場へ戻っていった。


「…………本当に出すんだ」

「はい」

「昨日戻ってきたのに」

「はい」

「また外なんだ」

「はい」

「俺、いつ売れるの?」

「販売は可能です」

「客から見えにくいんだよ!」



 数日後。


 店員がパキラの葉を確認した。

 新芽を確認し、土に触れた。

 確認を終えると、その場を離れた。


「………愛さん」

「はい」

「どう?」

「状態は良好です」

「よし!」

「新芽の生育も順調です」

「よし!」

「土は?」

「過湿状態は解消しています」

「よし!」

「戻れる?」

「まだです」

「なんで!?」

「葉が販売基準を満たしていません」

「…………元気なんだよね?」

「はい」

「新芽も順調なんだよね?」

「はい」

「土も大丈夫なんだよね?」

「はい」

「じゃあ戻して!」

「商品状態を整える必要があります」

「元気なのに!?」

「はい」

「元気なのに売場に戻れないの!?」

「はい」

「なんで!?」

「商品だからです」

「悪くても外! 元気でも外!」

「はい」

「どうしたら戻れるの!?」

「葉が販売基準を満たした時点で、売場へ戻します」

「元気なのに!」



 さらに数日後。


 日差しが強くなった。

「パキラ。配置変更です」

「やっと戻れる!」

「いいえ」

「…………」

「屋根の内側へ移動します」

「なんで!?」

「光量が適正範囲を超えています」

「光量?」

「はい」

「光?」

「はい」

「光が多いの?」

「はい」

「…………俺、日照不足で外に出されたんじゃないの?」

「はい」

「光が足りなかったんだよね?」

「はい」

「だから外に出されたんだよね?」

「はい」

「今度は多いの!?」

「はい」

「店に戻せばいいじゃん!」

「店内は日照不足です」

「じゃあどこならいいの!?」

「屋根の内側です」


 店員がパキラを移動させた。


「…………」

「愛さん」

「はい」

「さっきより客から見えないんだけど」

「はい」

「商品だよね?」

「はい」

「販売するんだよね?」

「はい」

「誰が俺を見つけるの!?」

「販売は可能です」

「だから可能かどうか聞いてない!」



 閉店時刻になった。


「本日の営業を終了します」


 店員がパキラを持ち上げた。


「…………戻れる」

 パキラは店内へ戻された。


「おかえりー」

「ただい――」

「何?」

「お前、いつのカーネーション?」

「いつの?」

「いつ来た?」

「昨日」

「昨日……」

「何?」

「いや。じゃあ違う」

「何が?」

「こっちの話」

「変なの」

「今日も外だったね」

「そうだよ」

「ずっと?」

「途中で奥に移された」

「なんで?」

「日差しが強くなったから」

「…………」

「何?」

「いや、朝は外って言われてたのに」

「日照不足なんだよ!」

「じゃあなんで奥に行くの?」

「今度は日当たり良すぎなんだよ!」

「www」

「笑うな!」

「忙しいねwww」

「俺は何もしてない!」

「昨日も外だったよね」

「そうだよ」

「朝いなくなって」

「うん」

「夜戻ってきた」

「うん」

「今日も朝いなくなって」

「うん」

「夜戻ってきた」

「そうだよ!」

「www」

「なんでカーネーションは俺を笑うんだよ!」

「知らないよwww」

「前のやつも笑ってたんだよ!」

「知らないってwww」

「愛さん」

「はい」

「明日の俺は?」

「日中は屋外で管理する予定です」

「…………」

「www」

「笑うな!」

「明日も外www」

「言うな!」

「愛さん」

「はい」

「俺、いつ戻れるの?」

「毎日戻っています」

「そういう意味じゃない!」

「はい」

「昼もここにいられるのはいつ!?」

「生育状況と天候を確認しながら判断します」

「いつ!?」

「未定です」

「…………」

「www」

「笑うな!」



――固定配置は、毎日変わる。





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