第29話 現地調達します
作業台の上に、アルストロメリアが置かれていた。
ピンクと白。
ピンクの品種は、レベッカ。
白の品種は、オルガ。
ピンクのアルストロメリアが声を上げた。
「なんで僕がレベッカなんだよ! 男だぞ!」
白のアルストロメリアが答えた。
「僕はオルガ!」
「お前はいいよな! かっこいい名前で!」
「かっこいいだろ!」
「僕もかっこいい名前がいい!」
少し考えて、レベッカが言った。
「そうだ。かっこいいやつやろう!」
「なに?」
「戦隊!」
「やる!」
話が決まった。
レベッカが声を上げた。
「僕、レッド!」
愛さんが告げた。
「レベッカはピンクです」
「なんでだよ!」
「花色がピンクだからです」
「僕、レッドがいい!」
「赤のアルストロメリアは、現在入荷していません」
「赤いるの?」
「赤系の品種はあります」
「じゃあ呼んで!」
「現在、入荷していません」
「いないじゃん!」
レベッカから見える位置に、赤い花がいた。
「いた!」
ケイトウが応じた。
「……なんだ」
「お前、今日からレッド!」
「俺はケイトウだ」
「名前!」
「サカタプライド」
「かっこいい! レッドな!」
ケイトウは少し黙った。
「……勝手な子だな」
レッドが現地調達された。
白のアルストロメリアが言った。
「レッド、取られたぞ」
「大丈夫!」
「なんで?」
「あとでレッドの力を借りれば、僕も赤くなれる!」
ケイトウが言った。
「ならないぞ」
「なる!」
「ならない」
「戦隊はなるんだよ!」
「そうなのか」
「なる!」
愛さんが告げた。
「レベッカの花色は変わりません」
「今はな!」
「今後も変わりません」
「戦う時は変わる!」
「変わりません」
「愛さんは戦隊知らないんだよ!」
「戦隊は、商品情報に登録されていません」
「ほら、知らない!」
レベッカが声を上げた。
「次、イエロー!」
「俺を呼んだかァァァァァ!!」
離れたところからヒマワリの声がした。
「呼んでない!」
「イエローだろ!」
「そうだけど!」
「俺だ!」
「名前!」
「サンリッチオレンジ!」
レベッカの声が止まった。
「オレンジじゃん!」
「黄色だぞ!」
「名前はオレンジじゃん!」
「見ろ! この色!」
「黄色!」
「そうだ!」
「でもオレンジじゃん!」
「サンリッチオレンジだァァァァァ!!」
「やっぱりオレンジじゃん!」
「名前はな!」
イエローも現地調達された。
レベッカが声を上げた。
「次、ブルー!」
「青のアルストロっているの?」
愛さんが告げた。
「切り花では、自然の青はありません」
「いないの?」
「染め花としては存在します」
「染め花?」
「白い花に染料を吸わせ、青色を表現します」
「いるじゃん!」
白のアルストロメリアが聞いた。
「珍しいの?」
「流通量は少ないです」
「見たい!」
「現在、入荷していません」
「いないじゃん!」
二本のアルストロメリアから見える範囲に、青い花があった。
「いた!!」
リンドウが応じた。
「拙者でござるか」
「ブルー!」
「ブルーやって!」
「頼む!」
「拙者はリンドウでござる」
「ブルーがいないんだ!」
「お願い!」
「どうしても必要なんだ!」
リンドウは少し黙った。
「そこまで頼まれるのであれば……仕方がないでござる」
「やったー!」
ブルーも現地調達された。
赤。
青。
黄。
白。
桃。
五色が揃った。
レベッカが声を上げた。
「名乗るぞ!」
オルガが応じた。
「おう!」
ヒマワリが声を上げた。
「名乗りかァァァァァ!!」
レベッカが言った。
「まずレッド!」
ケイトウが少し黙った。
「……誇りを掲げる赤、サカタプライド」
レベッカとオルガが声を上げた。
「かっこいい!」
レベッカが続けた。
「次、ブルー!」
リンドウが応じた。
「夏を駆ける青、安代の夏でござる!」
オルガが声を上げた。
「ブルーかっこいい!」
レベッカが続けた。
「次、イエロー!」
「来たァァァァァ!!」
ヒマワリが声を上げた。
「真夏を照らす、黄金の太陽!
咲けばそこが夏になる!
一輪で夏を連れてくる、この存在感!
黄色に輝く、サンリッチオレンジだァァァァァ!!」
少し、間があった。
レベッカが言った。
「長い!」
「名乗りだぞ!」
「長い!」
「まだある!」
「もういい!」
レベッカが続けた。
「次、ホワイト!」
白のアルストロメリアが声を上げた。
「白く輝くアルストロメリア! オルガ!」
レベッカが声を上げた。
「かっこいい!」
オルガが言った。
「最後、ピンク!」
ピンクのアルストロメリアが声を上げた。
「華麗に咲く桃色! アルストロメリア! レベッカ!」
少し間があった。
レベッカが言った。
「……やっぱり僕だけかわいくない?」
オルガが答えた。
「今さらかよ」
「桃色だし! レベッカだし!」
「かっこよく言ってもレベッカだったな」
「うるさい!」
「あとでレッドになるんだろ!」
「なる!」
愛さんが告げた。
「花色は変わりません」
レベッカが言った。
「なる!」
戦隊が完成した。
しかし、しばらくしてレベッカが気づいた。
「……敵がいない」
五色の花が黙った。
オルガが言った。
「悪役がいないと戦えない」
「悪役……」
近くには、いつもの花たち。
資材。
道具。
作業台の端には、黒い花バサミが置かれていた。
「(-灬-)✂」
レベッカが言った。
「……じいさん」
「…なんだ」
「黒いな」
「…ああ」
「古いな」
「…ああ」
オルガが言った。
「強そう」
少し、間があった。
レベッカが声を上げた。
「じいさん、悪役やって!」
花バサミは黙っていた。
少し、間があった。
「(✧灬-)✂」
ハサが言った。
「じいさん」
「…なんだ」
「なんか嬉しそうだな」
「(✧灬✧)✂」
「否定しろよ」
オルガが言った。
「でも、悪役一人じゃ足りない」
レベッカも気づいた。
「手下がいない!」
その後ろでは、店員がお客様の会計をしていた。
商品が読み取られる。
支払いを受け取る。
そして。
ガチャ。
レジのキャッシャーが開いた。
中から声がする。
「1,000円!」
「500円!」
「100円!」
「100円!」
「10円!」
「10円!」
「10円!」
「5円!」
オルガが声を上げた。
「いた!」
レベッカも声を上げた。
「あそこだ!」
「悪の秘密結社だ!」
「100円!」
「10円!」
「500円!」
ケイトウが言った。
「金額を言ってるだけだ」
レベッカが言った。
「いっぱいいる!」
ケイトウが答えた。
「数だけはな」
店員が会計を終えた。
ガチャン。
キャッシャーが閉じた。
悪の秘密結社は閉鎖された。
「……………」
レベッカが言った。
「……閉まった」
オルガが言った。
「敵、いなくなった」
「今いたのに!」
「いたな」
「見つけたばっかりなのに!」
「そうだな」
レベッカが声を上げた。
「開けて!」
愛さんが告げた。
「会計時以外は開きません」
「敵なのに!?」
「レジです」
ケイトウが言った。
「閉鎖が早いな」
味方が揃った。
悪役も決まった。
手下も見つけた。
ただし、手下は閉鎖されていた。
レベッカが声を上げた。
「もういい! とにかくいくぞ!」
オルガが止めた。
「その前に!」
二人が声を揃えた。
『花屋で僕らと握手!』
「それ、俺がやりたかったやつぅぅぅ!」
ヒマワリの声が店内に響いた。
愛さんが告げた。
「花と握手はできません」
「またそれかァァァァァ!!」
その時、店員が売場へ来た。
ケイトウが持ち上げられた。
「……なんだ」
続いてヒマワリ。
「お?」
リンドウ。
「拙者もでござるか」
白のアルストロメリア。
「あ」
最後にピンクのアルストロメリア。
「ちょっと待って!」
五色の花が軽くまとめられた。
包装紙が広げられる。
レベッカが声を上げた。
「まだ戦ってない!」
オルガも続いた。
「僕らと握手もしてない!」
ヒマワリが声を上げた。
「俺も戦ってないぞォォォォォ!!」
五色の花が包装紙に包まれていく。
レベッカが声を上げた。
「悪役!」
作業台の上には、花バサミが残っていた。
「(°灬°)✂」
「じいさん、待ってて!」
包装紙が閉じた。
五色の花は、そのままお客様へ渡された。
戦隊はいなくなった。
店内が静かになった。
レジには、五色の花の代金だけが残されていた。
「1,000円!」
「500円!」
「100円!」
「100円!」
「10円!」
「10円!」
「10円!」
「5円!」
作業台の上では、花バサミが待っていた。
「(°灬°)✂」
ハサが言った。
「じいさん」
「…なんだ」
「もう行ったぞ」
少し、間があった。
「(´灬`)✂」




