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花屋は本日も通常営業です  作者: 花束 ねる


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28/50

第28話 (-灬-)✂


作業台の上に、花バサミが置かれていた。


黒い柄。

長く使われた刃には、何度も研がれた跡が残っている。


花バサミのオカツネ。


店にある道具の中でも、かなり古い。


「(-灬-)✂」


隣に置かれたハサが声をかけた。


「じいさん」

「…なんだ」

「いつからいるんだ」

「…知らん」

「覚えてねえのかよ」


「(-灬-)✂」


ハサが言った。


「俺が来た時には、もういたもんな」

「…そうだな」

「何年いるんだよ」

「…知らん」


ドライフラワーのアレンジメントコーナーから声がした。


カスミ草、スターチス、染めカスミ草、バラで作られたアレンジメントだ。


「あら〜、そんなに長いのね〜゜」

「あらあら〜゜」

「知らなかったわ〜♪゜」

「んだな〜゜」

「じいさま、すげえな〜゜」

「俺らとは桁が違うな゜」


ハサが言った。


「ほんと興味ねえな」

「…ないな」


店員が作業台へ来た。


花バサミを手に取る。


入荷した花の茎を刃に挟む。


ガッ。


刃が途中で止まった。


もう一度、力が入る。


ガッ。


茎が切れた。


ハサが言った。


「じいさん」

「…なんだ」

「鈍ってんぞ」

「…切れた」

「二回かかってんだろ」


次の一本。


ガッ。


やはり一度では切れない。


もう一度。


ガッ。


切れた。


「…まだいける」

「どこまでいく気だよ」


「(-灬-)✂」


次の一本。


ガッ。


ハサが言った。


「じいさん」

「…なんだ」

「そろそろ研ぎだろ」

「…まだ切れる」

「二回でな」

「…切れてる」

「そこ譲らねえな」


店員が花バサミの刃を確認した。


ドライフラワーのアレンジメントコーナーから声がした。


「あら、おじいさま、今日は切りにくそうね〜゜」

「あらあら〜゜」

「ちょっと大変そうね〜♪゜」

「んだな〜゜」

「じいさまも年だからな〜゜」

「まだやるつもりか゜」


「…まだいける」


ハサが言った。


「まだ言ってんのかよ」


愛さんが告げた。


「研ぎに出します」


ハサが言った。


「じいさん、研ぎか」

「…ああ」

「久しぶりだな」

「…そうだな」


店員が花バサミを手に持ち、作業台を離れた。


ドライフラワーのアレンジメントコーナーから声がした。


「あら、おじいさま行っちゃったわね〜゜」

「あらあら〜゜」

「どこ行くのかしら〜♪゜」

「んだな〜゜」

「じいさま、帰ってくんのけ〜゜」

「そのうち戻るだろ゜」


一時間ほどして。


花バサミが作業台へ戻ってきた。


黒い柄。

長く使われた跡も、そのまま残っている。


刃だけが研ぎ直されていた。


店員が花バサミを手に取る。


キクの茎を刃に挟む。


スパッ。


一度で切れた。


「(°灬°)✂」


キクが切り口を見る。


「研ぐと違うな」


次の一本。


スパッ。


その次も。


スパッ。


ドライフラワーのアレンジメントコーナーから声がした。


「あら〜゜」

「あらあら〜゜」

「よく切れるわね〜♪゜」

「んだな〜゜」

「じいさま、すごいな〜゜」

「さっきとは別物だな゜」


店員が次のキクを手に取った。


刃が茎に入る。


スパッ。


「あ」


キクが声を上げた。


店員の手が止まった。


切る予定だった位置より、少し上だった。


キクが切り口を見る。


「じいさん」

「…なんだ」

「そこまで切れとは言ってねえぞ」

「…切れた」

「切れたじゃねえよ」


「(°灬°)✂」


ドライフラワーのアレンジメントコーナーから声がした。


「あら〜゜」

「あらあら〜゜」

「切れすぎちゃったわね〜♪゜」

「んだな〜゜」

「じいさま、元気になったな〜゜」

「元気で済むのか゜」


店員が切り口を確認する。


少し短くなったキクは、そのまま別の束へ回された。


作業はそのまま続いた。


スパッ。


スパッ。


スパッ。


やがて、切る花がなくなった。


店員が花バサミを作業台へ戻す。


刃が閉じる。


ハサが隣に置かれた。


「じいさん」

「…なんだ」

「もう終わりだぞ」


「(°灬°)✂」


少し間があいた。


「まだ切りたいのか」

「…………そうだな」

「もう切るもんねえぞ」


「(´灬`)✂」





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