第27話 すべてドライにはなりません
店の片隅。
天井には、すでに乾いたカスミ草が吊り下げられていた。
「あらあら〜゜」
「あらあら〜゜」
「あらあら〜゜」
「あらあら〜゜」
「あらあら〜゜」
その隣には、乾いたスターチスが一本。
「んだな〜゜」
そこへ店員が、新しい花を持ってきた。
青いカスミ草。
スターチス。
バラ。
次々と天井に吊るされていく。
乾いたカスミ草たちが、新しく吊るされた青いカスミ草を見る。
「あら、あなたもこっちなのね〜゜」
「あらあら〜゜」
「あら、青くなってるわねえ〜゜」
「きれいねえ〜゜」
「あらあらあら〜゜」
青いカスミ草たちが揺れた。
「私の番、またかしら〜♪」
「またなのね〜♪」
「今度は何かしら〜♪」
その隣では、新しく吊るされたスターチスたちが揺れている。
「おらもここだべか〜」
「おらもだ〜」
「何すんだべな〜」
「まあいいべ〜」
乾いたスターチスが答えた。
「んだな〜゜」
バラたちは黙っていた。
「…………」
「…………」
「…………」
「あら、増えたわねえ〜゜」
「あらあら〜゜」
「にぎやかねえ〜゜」
「ちょっとジメっとしてるわねえ〜゜」
「あらあら〜゜」
「んだな〜゜」
生のスターチスたちが、乾いたスターチスを見る。
「おらも乾ぐのか〜」
「おらもか〜」
「んだべか〜」
「まあいいべ〜」
「んだな〜゜」
バラが、乾いたスターチスを見る。
「…………お前、もう乾いているな」
「んだな〜゜」
「同じスターチスだろ」
「んだな〜゜」
「…………そうか」
一週間が経った。
新しく吊るされた花から、少しずつ水分が抜けていく。
青いカスミ草たちが揺れた。
「少し軽くなったかしら〜♪」
「私もかしら〜♪」
「まだみたいね〜♪」
スターチスたちも揺れている。
「だいぶ乾いできたな〜」
「んだな〜」
「もうちょいだな〜」
「おらもだ〜」
乾いたカスミ草たちが見ている。
「あら、もう少しかしらねえ〜゜」
「あらあら〜゜」
「ゆっくり待ちましょうねえ〜゜」
「あら〜゜」
「あらあら〜゜」
乾いたスターチスも揺れた。
「んだな〜゜」
バラたちは吊るされたまま黙っている。
「…………長いな」
「…………」
「…………」
さらに時間が経った。
二週間。
三週間。
店員が、吊るされていた花をすべて外した。
花が作業台に並べられる。
乾いたカスミ草たちが声を上げた。
「あら、下りてきたわねえ〜゜」
「あらあら〜゜」
「久しぶりねえ〜゜」
「あら〜゜」
「あらあら〜゜」
乾いたスターチスも続く。
「んだな〜゜」
青いカスミ草たちも乾いていた。
「きれいに乾いたわ〜♪゜」
「私も〜♪゜」
「今度は何になるのかしら〜♪゜」
バラたちも水分を失っている。
「…………゜」
「…………゜」
「…………゜」
新しく吊るされたスターチスたちも声を上げた。
「んだな〜゜」
「乾いだな〜゜」
「んだ〜゜」
「おら、まだだ〜」
乾いたカスミ草たちが、その一本を見る。
「あら〜゜?」
「あらあら〜゜」
店員が、一本ずつ状態を確認していく。
カスミ草。
スターチス。
青いカスミ草。
バラ。
その手が、一本のスターチスで止まった。
ほかのスターチスとは違い、茎に水分が残っていた。
「あら、まだ乾いてないわねえ〜゜」
「あらあら〜゜」
茎には、白いものが広がっている。
「あら、白いものが付いてるわねえ〜゜」
「あらあら〜゜」
愛さんが告げた。
「カビです」
「んだか〜」
店員が、そのスターチスを作業台の端へ分けた。
店員は、捨てやすい長さにスターチスを切り分けた。
「ちぇーっと行ってくるな〜」
ゴミ箱の蓋が開いた。
切り分けられたスターチスが、ゴミ箱に入れられた。
蓋が閉じた。
青いカスミ草たちが見送った。
「あら、いってらっしゃい〜♪゜」
「あらあら〜♪゜」
「またね〜♪゜」
新しく乾いたスターチスたちも続いた。
「またな〜゜」
「んだな〜゜」
「またな〜゜」
少しして。
ゴミ箱の奥から、声がした。
「またな〜」
バラたちは黙っていた。
「…………゜」
「…………゜」
「…………゜」
店員は、残ったドライフラワーを再び吊るした。
数日後。
店員が、吊るしていたドライフラワーを外した。
花たちは、再び作業台に並べられた。
乾いたカスミ草たちが声を上げる。
「あら、またここねえ〜゜」
「あらあら〜゜」
「今度は何かしら〜゜」
「あら〜゜」
「あらあら〜゜」
スターチスたちも続く。
「んだな〜゜」
「んだ〜゜」
「何すんだべな〜゜」
「また何かすんのか〜゜」
青いカスミ草たちが揺れた。
「私、また何かになるのかしら〜♪゜」
「今度は何かしら〜♪゜」
「楽しみね〜♪゜」
バラたちは黙っている。
「…………゜」
「…………゜」
「…………゜」
カスミ草が切り分けられた。
「あら〜゜」
「あらあら〜゜」
「あらあらあら〜゜」
「あら〜゜」
「あらあら〜゜」
スターチスも短く切られた。
「んだ〜゜」
「こっちもだな〜゜」
「んだんだ〜゜」
「短ぐなったな〜゜」
青いカスミ草も切り分けられる。
「またなのね〜♪゜」
「短くなったわ〜♪゜」
「今度はこっちね〜♪゜」
バラにも花バサミが入った。
「…………また切るのか゜」
「…………゜」
「…………゜」
花が集められた。
いくつかに分けて束ねられる。
ペーパーが巻かれた。
リボンが結ばれた。
小さなドライフラワーの花束が、いくつか出来上がった。
「あらあらあら〜゜」
「あら、きれいねえ〜゜」
「あらあら〜゜」
「あら〜゜」
「あらあら〜゜」
「んだな〜゜」
「んだ〜゜」
「できたな〜゜」
「売場だな〜゜」
「また売場ね〜♪゜」
「行ってくるわ〜♪゜」
「今度は売れるかしら〜♪゜」
「…………゜」
「…………゜」
「…………゜」
愛さんが告げた。
「販売します」
花束が売場に並んだ。
しばらくして。
一つ、売場からなくなった。
また一つ、なくなった。
花束は少しずつ減っていった。
さらに時間が経った。
店員が、売場に残った花束を下げた。
再び作業台に置かれる。
残っていたカスミ草たちが声を上げた。
「あら〜゜?」
「あら、戻ってきたわねえ〜゜」
スターチスたちも揺れた。
「んだな〜゜」
「まただな〜゜」
青いカスミ草が続く。
「またここなのね〜♪゜」
バラは黙っていた。
「…………゜」
店員がリボンを外した。
ペーパーを外す。
束を解く。
「あらあら〜゜」
「あら〜゜」
「んだな〜゜」
「んだ〜゜」
「またなのね〜♪゜」
「…………゜」
残った花に、傷みはなかった。
店員が花バサミを取った。
バラの視界に、ゴミ箱が入った。
残ったカスミ草が、さらに短く切られる。
「あら〜゜」
「あらあら〜゜」
スターチスにも花バサミが入る。
「んだ〜゜」
「まただな〜゜」
青いカスミ草も短くなる。
「まだ使えるわね〜♪゜」
花バサミが、バラの茎に当てられた。
「…………また切るのか゜」
愛さんが告げた。
「使用可能です」
茎が切られた。
短くなった花が集められる。
今度は、小さなドライフラワーのアレンジになった。
「あらあら〜゜」
「あら、今度はこっちねえ〜゜」
「んだな〜゜」
「まただな〜゜」
「今度は売れるかしら〜♪゜」
「…………゜」
新しい値札が付いた。
店員が、ドライフラワーのアレンジを持ち上げた。
「あら、また売場ねえ〜゜」
「あらあら〜゜」
「んだな〜゜」
「行ってくるな〜゜」
「今度こそね〜♪゜」
「…………゜」
愛さんが告げた。
「販売します」
ドライフラワーのアレンジは、再び売場に並べられた。




