第26話 昇格しました
「…………魅惑」
ケイトウが言った。
「然り」
レザーファンが答えた。
「昨日、愛さんが言っていたな」
「然り」
「お前の花言葉だ」
「然り」
「…………どこがだ」
「我を見よ」
「見ている」
「ならばよい」
「何がだ」
「我は魅惑的である」
「自分で言うのか」
「魅力もあるぞ!!」
ひまわりが割って入った。
「お前は黙ってろ」
「なんでだァァァァァ!!」
ケイトウはレザーファンを見た。
濃い緑色の葉が、三角形に広がっている。
「…………艶はあるな」
「然り」
「形も悪くない」
「然り」
「色も濃い」
「然り」
「…………」
「理解したか」
「まだだ」
「何が足りぬ」
「魅惑だ」
「我を見よ」
「だから見ている」
「ならばよい」
「よくない」
「何の話してるんだ!?」
「美しさだ」
「我が魅惑的であるという話だ」
「なんでお前ら急に仲良くなったんだ!?」
「なってない」
「然り」
「なってるじゃないか!!」
ひまわりの声が店内に響いた。
「愛さん」
「はい」
「レザーファンは、全部こうなのか」
「品種や系統によって特徴が異なります」
「品種?」
「はい」
「お前にも名前があるのか」
「無論」
「なんていうんだ」
レザーファンは答えた。
「我が名は――マイルド」
「…………」
「…………」
「マイルド!?」
「然り」
「どこがだ」
「何がだ」
「切られて9つになっても働いてただろ!!」
「然り」
「全然マイルドじゃないぞ!!」
「我は穏やかだ」
「働き方の話だァァァァァ!!」
「…………確かに、本人はマイルドだな」
「然り」
「そこじゃない!!」
ケイトウは、もう一度レザーファンを見た。
「他の色はないのか」
「ある」
「何色だ」
レザーファンが答えた。
「金色に染まりしもの」
「…………こんじき?」
「銀色に染まりしものもいる」
「…………ぎんじき?」
「然り」
「こんじき、ぎんじき……なんだそれ!?」
ひまわりが叫んだ。
「愛さん!!」
「はい」
「こんじきと、ぎんじきって何色だ!?」
「金色はゴールド、銀色はシルバーです」
「ゴールド!? シルバー!?」
「はい」
「本当にいるのか!?」
「はい。加工されたレザーファンには、ゴールドやシルバーなどがあります」
「いるゥゥゥゥゥ!!」
「ほかにも色はあります」
「まだいるのか!?」
「はい」
「店にはいないぞ!?」
ケイトウが言った。
「…………いる」
「どこに!?」
店の奥に、プリザーブドフラワーのアレンジメントが置かれていた。
白い花の後ろから、小さな金色の葉がのぞいている。
「我が同胞だ」
「もういたァァァァァ!!」
小さな金色の葉から、声がした。
「ワレハ――コンジキニソマリシモノ゜★」
乾燥した葉は、隙間なく金色に染められていた。
「喋ったァァァァァ!!」
「今さらか」
「いつ使うんだ!?」
「ゴールドやシルバーなどの加工された花材は、結婚式や金婚式、銀婚式、クリスマスや年末などの装飾に使用されます」
「結婚式!?」
「はい」
「クリスマス!?」
「はい」
「年末!?」
「はい」
ひまわりがレザーファンを見た。
「お前の仲間、年末も働くのか!?」
「無論」
ケイトウが黙った。
「どうした?」
「…………俺たちは、その頃にはいないぞ」
「俺は夏だ!!」
「俺は秋までだ」
「…………」
ひまわりがレザーファンを見た。
「お前は春もいるのか!?」
「然り」
「夏も!?」
「然り」
「秋も!?」
「然り」
「冬も!?」
「然り」
「…………ずっといるじゃないか!!」
「我は必要とされている」
「愛さん!!」
「はい」
「俺は!?」
「ひまわりも年間を通して流通する場合があります」
「俺も!?」
「夏が最盛期です」
「俺もちょっと社畜だったァァァァァ!!」
「ちょっとなのか」
「夏が本番だからな!!」
「俺は秋までだ」
「…………」
「何だ」
「お前は完全に季節雇用だな!!」
「うるさいぞ」
ひまわりは、もう一度レザーファンを見た。
「でも、お前はずっといる」
「然り」
「切られても働く」
「然り」
「花束でも働く」
「然り」
「アレンジでも働く」
「然り」
「年末も働く」
「然り」
「金色になった仲間も働く」
「然り」
「銀色になった仲間も働く」
「然り」
「…………」
「…………」
ひまわりが叫んだ。
「社畜神ンンンンンッ!!!」
「称号が上がったぞ」
「相応しかろう」
「自分で言うのか」
「我を見よ」
「…………」
「魅惑的であろう」
レザーファンに、新たな称号が加わった。




