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壁殴り聖女は世界地図を描く  作者: 見早
2章 踊り唄う獣 ―ライガ・マナ―
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Interlude 万里とお兄ちゃん エジプト紀行

 まだ私が、“ミュウル”ではなかった頃――




 小言の増えたママが帰ったあと。

 私は、病棟の裏庭にある古いベンチへと向かった。


万里(ばんり)、来たね。今月の『彩紀行(いろどりきこう)』買ってきたよ」

「お兄ちゃん、ありがとう!」


 2人でめくるページには、黄金の砂地と青すぎる空、三角の山――写真なのに、窓から見えるような景色が広がっていた。


「何千年も前の人が、こんなにキレイに石を積み上げたんだねぇ。王様のために」

「うん。行ってみたい?」

「行きたい!」


 お兄ちゃんは寂しげに微笑んで、私のあざだらけの足を見た。

 けれど、「お前には行けないよ」なんて、一度も言わなかった。


「じゃあ、今日のところはここを歩こうか」

「……うん」


 私は指先で、写真の砂漠に足跡をつけた。


 先を歩く、お兄ちゃんの指を追って。

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