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「再配達、恋もできますか?」  作者: ともり。
第一章 再配達の夜

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第一章 再配達の夜 第七話 声が聞きたくなる

# 第一章


## 再配達の夜


### 第七話 声が聞きたくなる


【今からって、もう無理?】


送ったあと。


玲司は、自分で自分に少し驚いていた。


何を言っているんだろう。


もう二十二時を過ぎている。

配達員の仕事だって終わっているはずだ。


疲れているかもしれない。


困らせたかもしれない。


玲司はソファへ深く身体を沈める。


雨音だけが、静かな部屋へ広がっていた。


既読。


数秒後。


【行きます】


玲司は、呼吸を止めた。


本当に?


思わず画面を見返す。


その時。


また通知。


【ちょうど近くなので】


その一文を見た瞬間。


胸の奥が、じわっと熱くなる。


玲司は立ち上がった。


別に、部屋へ上げるわけでもない。

荷物を受け取るだけ。


なのに。


心臓が落ち着かない。


数分後。


インターホンが鳴る。


玲司は一度深呼吸してから、玄関を開けた。


雨の匂いが流れ込んでくる。


そこに立っていた藤堂は、少し濡れていた。


黒い髪の先から、水滴が落ちている。


「……こんばんは」


藤堂が小さく笑う。


「こんばんは」


玲司もつられて笑った。


不思議だった。


たった数日なのに。


顔を見るだけで、少し安心する。


藤堂は荷物を差し出す。


「今度は受け取れましたね」


「うん」


玲司は荷物を受け取りながら、藤堂の制服を見る。


肩のあたりが濡れていた。


「……ほんとにびしょ濡れじゃん」


藤堂が少し笑う。


「今日、雨すごかったので」


玲司は少し迷う。


それから。


「タオル使う?」


気づけば、そう言っていた。


藤堂が一瞬だけ目を丸くする。


「いや、大丈夫です」


「風邪ひくよ」


藤堂は困ったみたいに笑った。


その顔が、少し疲れて見える。


玲司は玄関のドアを少し開けたまま、小さく息を吐く。


「……少しだけ入る?」


言った瞬間。


自分の心臓が、大きく跳ねた。


藤堂も、少しだけ固まっていた。


雨音だけが聞こえる。


静かな廊下。


数秒後。


藤堂が、小さく笑う。


「それ、かなり危ない誘い方です」


玲司は一瞬意味がわからず、少し遅れて顔が熱くなる。


「……そういう意味じゃない」


「わかってます」


藤堂が、柔らかく笑った。


その笑い方に、妙に安心する。


結局、藤堂は玄関までだった。


玲司が渡したタオルで髪を軽く拭きながら、小さく息を吐く。


「助かりました」


「どういたしまして」


沈黙。


でも。


嫌じゃない。


むしろ、このまま少しだけ話していたかった。


藤堂が、ふと玲司を見る。


「玲司さん」


「ん?」


「なんか、会うと落ち着きます」


玲司の胸が、静かに締め付けられる。


雨音が、少し強くなる。


玄関灯の下。


藤堂の濡れた髪が、少しだけ光って見えた。


玲司は視線を逸らしながら、小さく笑う。


「……それ、俺も」


その瞬間。


藤堂が、少しだけ嬉しそうに笑った。


その顔を見た時。


玲司は初めて思った。


もっと、この人と話していたい。


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