第二章 おかえりのある部屋 第六十二話 一緒に選ぶもの
# 第二章
## おかえりのある部屋
### 第六十二話 一緒に選ぶもの
休日。
外は少しだけ晴れていた。
久しぶりの青空。
玲司と藤堂は、近所のスーパーを並んで歩いていた。
カゴ。
野菜売り場。
夕方前の少し混んだ店内。
ほんの少し前まで。
二人でスーパーへ来るなんて想像もしていなかった。
藤堂が、豆腐を見ながら真剣な顔をしている。
玲司は思わず笑った。
「何悩んでるの」
藤堂が振り返る。
「どっちの方が美味しいんだろうって」
「そこそんな真剣に考える?」
「玲司さんに食べてもらうので」
玲司の胸が、じんわり熱くなる。
最近。
こういう“小さい未来”が増えた。
一緒にご飯を選ぶ。
飲み物を共有する。
どっちのアイスにするか悩む。
そんな普通の時間が、妙に愛しい。
藤堂が、ぽつりと言う。
「……なんか不思議ですね」
「なにが」
「前まで、再配達でしか会ってなかったのに」
玲司は小さく笑う。
たしかに。
インターホン越し。
数分の会話。
それだけだった。
でも今は。
隣で献立を考えている。
人生って、本当にわからない。
レジへ向かう。
藤堂が自然にカゴを持つ。
玲司は少し眉を寄せた。
「持つよ」
藤堂が笑う。
「今日は俺がやりたいです」
その言い方が、少し嬉しそうで。
玲司は小さく笑った。
「じゃあお願い」
スーパーを出る。
夕方の風。
ビニール袋の擦れる音。
藤堂が、ふいに玲司の手を軽く握る。
自然だった。
もう、人前で手を繋ぐことにも慣れてきた。
藤堂が、小さく呟く。
「……こういうの、好きです」
玲司は少し笑う。
「スーパー?」
「玲司さんとの生活感」
その言葉が、胸へ静かに落ちる。
生活感。
恋愛だけじゃない。
ちゃんと、“日常”になり始めている。
玲司は、繋いだ手を少し握り返した。
「……俺も好き」
藤堂が、嬉しそうに目を細める。
夕方の街。
帰り道。
スーパーの袋。
繋いだ手。
その全部が。
少しずつ、“二人の生活”へ変わっていっていた。




