第二章 おかえりのある部屋 第五十五話 何もしない休日
# 第二章
## おかえりのある部屋
### 第五十五話 何もしない休日
次の休日。
外は朝から雨だった。
出かけようと思えば出かけられる。
でも。
二人とも、なんとなく部屋から動かなかった。
ソファ。
コンビニで買ったパン。
テーブルの上のコーヒー。
小さく流れる音楽。
それだけ。
でも。
不思議なくらい心地よかった。
藤堂はソファへ寝転がりながら、小さく欠伸をする。
「……だめだ、眠い」
玲司はマグカップを持ちながら笑った。
「昨日遅かったしね」
「玲司さんのせいです」
「なんで」
「電話切らせてくれなかった」
玲司は吹き出した。
「人のせいにするな」
そんなやり取りをしながら、時間だけがゆっくり過ぎていく。
雨の日の部屋は静かだった。
外の音が少し遠い。
その静けさが、妙に落ち着く。
藤堂が、ぼんやり天井を見ながら呟く。
「……こういう休日、好きです」
玲司は少し目を瞬かせる。
「どこも行ってないけど」
「でも、玲司さんいるので」
さらっと言う。
でも。
その言葉が、ちゃんと胸へ沁みる。
玲司はソファへ身体を預けながら、小さく笑った。
「前なら、休日ずっと家いるとか無理だったかも」
藤堂が顔を向ける。
「今は?」
玲司は少し考える。
それから、静かに答えた。
「……今は落ち着く」
その瞬間。
藤堂が、嬉しそうに笑った。
その顔を見るだけで、自分まで嬉しくなる。
藤堂はソファの上で少し移動すると、玲司の膝へ頭を乗せた。
玲司の心臓が小さく跳ねる。
「……重くないですか」
「今さら聞く?」
藤堂が笑う。
玲司は、小さくため息を吐きながら髪を撫でた。
その瞬間。
藤堂が、気持ちよさそうに目を閉じる。
本当に犬みたいだった。
窓の外では、雨が静かに降っている。
でも。
部屋の中は温かい。
好きな人がいて。
何でもない話をして。
眠くなったら寄りかかって。
そんな普通の時間が、どうしようもなく愛しかった。
藤堂が、半分眠った声で呟く。
「……玲司さん」
「ん?」
「ずっとこうしてたいです」
玲司は、ゆっくり藤堂の髪を撫でながら、小さく笑った。
「……俺も」




