第二章 おかえりのある部屋 第四十五話 恋人つなぎ
# 第二章
## おかえりのある部屋
### 第四十五話 恋人つなぎ
休日の街は、少しゆっくり流れていた。
駅前には買い物へ向かう人たち。
カフェの前に並ぶ列。
遠くから聞こえる子どもの声。
玲司と藤堂は、並んで歩いていた。
繋いだ手は、もう自然だった。
でも。
今日は少し違う。
藤堂の指が、そっと絡まる。
恋人つなぎ。
玲司の心臓が、小さく跳ねた。
藤堂は前を向いたまま、小さく笑う。
「……嫌でした?」
玲司は視線を逸らした。
「いや」
本当は。
かなり意識している。
でも。
離したいとは思わなかった。
むしろ。
ちゃんと“恋人”になれた気がして、嬉しかった。
藤堂が、少しだけ繋いだ手へ力を込める。
「やばいですね」
玲司は吹き出した。
「またそれ?」
「だって嬉しいので」
その言い方が、あまりにも素直で。
玲司の胸がじんわり熱くなる。
映画館へ向かう途中。
信号待ちで立ち止まる。
休日の人混み。
前は、周りの目を少し気にしていた。
でも今は。
繋いだ手を離したいと思わなかった。
藤堂が、玲司をちらっと見る。
「玲司さん、前より慣れましたよね」
「何が」
「手繋ぐの」
玲司は少し照れながら笑った。
「……そっちが自然すぎるから」
最初は、触れるだけで心臓がうるさかった。
今でもドキドキはする。
でも。
その緊張より、“落ち着く”の方が大きくなっていた。
藤堂が、小さく笑う。
「玲司さんの手、好きです」
玲司は危うくむせそうになった。
「急に言うなあ」
「今思ったので」
そういうところだ。
思ったことを、ちゃんと言葉にする。
だから。
玲司も、少しずつ変わっていく。
映画館へ着く。
チケットを発券する間も、手は繋いだままだった。
藤堂が、小さく呟く。
「……前は、ここまで来るのにめちゃくちゃ緊張してました」
玲司は少し笑う。
「俺も」
「今は?」
玲司は、繋いだ手を少し握り返す。
それから、小さく笑った。
「……今は、落ち着く」
その瞬間。
藤堂が、本当に嬉しそうに笑った。
その笑顔を見るたび。
玲司は、“好き”がちゃんと積み重なっていくのを感じていた。




