第二章 おかえりのある部屋 第四十四話 恋人の休日
# 第二章
## おかえりのある部屋
### 第四十四話 恋人の休日
休日。
玲司は、目覚ましより先に目を覚ました。
静かな朝。
カーテンの隙間から、柔らかい光が入っている。
そして。
すぐ隣。
藤堂が、まだ眠っていた。
少し乱れた髪。
穏やかな寝息。
玲司の方へ身体を向けたまま、安心しきった顔で眠っている。
玲司は、しばらく動けなかった。
好きな人が隣にいる朝。
それが、まだ少し不思議だった。
藤堂が、小さく身じろぎする。
それから、薄く目を開けた。
数秒。
寝ぼけたまま玲司を見つめる。
そして。
「……おはようございます」
掠れた声で、小さく笑った。
玲司の胸が、じんわり熱くなる。
「おはよう」
藤堂は、まだ眠そうなまま玲司へ近づく。
肩へ額を押しつけるみたいに。
玲司は思わず笑った。
「眠そう」
「玲司さんがいるので安心してます」
朝から破壊力が高い。
玲司は視線を逸らしながら、小さく息を吐いた。
「……顔洗ってきなよ」
「やです」
「子ども?」
藤堂が少し笑う。
そのあと。
ぽつりと呟く。
「今日、どこ行きます?」
玲司は天井を見上げながら考える。
昨日、“次の休みどっか行こう”って約束した。
でも。
正直、どこでもよかった。
藤堂といるなら。
玲司は小さく笑う。
「映画でも見る?」
藤堂が少し目を細める。
「最初のデート思い出しますね」
その言葉に、玲司の胸が静かに熱くなる。
最初の映画。
手が触れただけで、心臓がうるさかった。
帰したくなくて。
でも、まだ恋人じゃなくて。
あの頃の空気を思い出す。
玲司は、小さく笑った。
「懐かしいね」
藤堂も笑う。
「まだそんな経ってないのに」
たしかに。
でも。
もうずっと前みたいに感じる。
それくらい、藤堂が生活へ馴染んでいた。
二人でゆっくり準備をする。
洗面台を譲り合って。
コンビニのパンを半分こして。
「それ一口ちょうだい」って言い合って。
そんな普通の時間が、どうしようもなく幸せだった。
玄関。
靴を履く。
藤堂が自然に玲司の手を握る。
もう確認はいらない。
玲司も、その手を握り返した。
ドアを開ける。
休日の空気。
柔らかい朝の光。
藤堂が、小さく笑う。
「……なんか、デートって感じしますね」
玲司は吹き出した。
「今さら?」
「でも、ちゃんと恋人としては初なので」
その言葉に。
玲司の胸が、また静かに熱くなった。




