第二章 おかえりのある部屋 第四十三話 眠る前の約束
# 第二章
## おかえりのある部屋
### 第四十三話 眠る前の約束
夜は、ゆっくり更けていった。
ソファ。
静かな部屋。
藤堂は玲司の肩へ寄りかかったまま、ぼんやりテレビもつけずに過ごしている。
話していることは、本当に他愛もない。
今日の配達。
職場の愚痴。
コンビニの新商品。
でも。
好きな人とする会話は、それだけで特別だった。
藤堂が、小さく欠伸をする。
玲司は少し笑った。
「眠い?」
「ちょっと」
「今日は帰る?」
藤堂は、少しだけ玲司へ擦り寄る。
「……帰りたくない」
玲司は吹き出した。
「またそれ」
「最近、ここ居心地よすぎるので」
その言い方が、妙に嬉しい。
玲司は小さく息を吐きながら、藤堂の髪を軽く撫でる。
その瞬間。
藤堂が少し目を細めた。
まるで安心した犬みたいだった。
静かな夜。
窓の外では、風がカーテンを少し揺らしている。
玲司は、その音を聞きながらぽつりと言う。
「……泊まる?」
藤堂が、一瞬固まる。
それから。
ゆっくり玲司を見る。
「いいんですか」
玲司は少し照れながら視線を逸らした。
「明日休みだし」
本当は。
もっと一緒にいたかった。
その気持ちの方が大きかった。
藤堂が、小さく笑う。
「やばい、嬉しい」
その声が、妙に柔らかい。
玲司の胸も、じんわり熱くなる。
二人で簡単に片付けをして、部屋の明かりを少し落とす。
夜の空気。
静かな部屋。
藤堂はソファへ戻ると、玲司の隣へ自然に座った。
もう、その距離が当たり前みたいに。
藤堂が、小さく呟く。
「……こういうの、ずっと続いたらいいのに」
玲司は、少しだけ目を瞬かせる。
その言葉には、未来が混ざっていた。
“今日だけ”じゃない。
“これからも”。
玲司は、小さく笑う。
「まだ恋人なったばっかだよ」
藤堂も笑った。
「そうでした」
そのあと。
少し静かになる。
でも。
その沈黙は、もう寂しくない。
藤堂が、そっと玲司の手を握る。
「……玲司さん」
「ん?」
「次の休み、どっか行きません?」
玲司の心臓が、小さく跳ねる。
“次”を自然に約束する。
その感じが、少し嬉しかった。
玲司は小さく笑う。
「いいよ」
藤堂が、本当に嬉しそうに笑った。
その顔を見ながら。
玲司は思う。
こんなふうに、誰かとの未来を楽しみにする日が来るなんて。
前の自分なら、想像もしていなかった。




